ライフイズビューティフル

訪問記/書評/勉強日記(TOEIC930/IELTS6.0/HSK5級/Python)

2018書評 #6 舞台 西加奈子

以前気になって調べた西加奈子さん。

関西弁がとても軽快で爽やかな西加奈子さん。大学時代に関西圏で過ごしたため何か踏み込んでくるようなコミュニケーションがとても憎めない大阪らしさが印象的な方。

とても本が読みたい衝動に駆られたので読んでみた。

どの本を読んでいいか分からなかったのでとりあえず本屋に行ってみて、旅行好きということもあり、舞台を選択。どうやらニューヨークの舞台の話であるらしい。

それ以上に細かい事前情報無く読み始めた。200ページにも満たない小説なので数時間で読み切れる。小説を読むのは久しぶりなので少しもったいぶって読むようにした。

小説を読むときは比較的一文字一文字を味わうように読みたいと思い、新書などを読むのとは違ったスタイルにしている。なんか妙にこの表現気にして描いているなとか、この描写になんの意味があるんだろうか、など気にしながら読んで著者や登場人物の気持ちに自分の気持をシンクロさせながら読むようにしている。特に読み切るときには何となく雑に終わらせたくないと思うのだが、電車の中などで読んでいると気になりすぎて最後電車の中で読み切ってしまい、いつも過ぎていく 最寄り駅の改札を通る時にはふわふわとした気持ちになることがある。

読み切ってしまったなと思う残念な気持ちと、いつもの風景が少し違って見える感覚は高揚感がある。

この小説舞台は、葉大と呼ばれる青年がニューヨークを旅する物語である。とても嫌いであった父の遺産で旅行に来たら、憧れのセントラルパークで楽しみにしていた小説小紋扇子という作家の「舞台」を読書しようとした瞬間にかばんを盗まれ走り去られる。

一生懸命追えば間に合うものの、人間を演じて行きている葉大は色々な考えが巡ってしまいその場でぽかんとしてしまった。そこから葉大のサバイバル生活が始まるのだが、初日にすりにあったという事実を隠すために、警察にも行かず、領事館にもすぐ行かずポケットに残っている12ドルのみで数日間生活する。

その精神状態にて見られる日々にある種の演じる自分から抜けられるという喜びを覚えるとともに、眼の前に広がる憧れのニューヨークの街並みをじっくりと見ていく。父や母との思い出や、小さい頃の友人など、すべての人がその人を演じているという観点を持ち話が展開されていく。

いきいきと描かれているニューヨークという街は、まだ行ったこと無いのだがとても想像しやすい程綺麗に書かれていた。2019年に行けたらとても嬉しいのだろうが、いつかきっと行くであろうと思っている街の一つなので、自分で旅行に行った際にはこの舞台を思い出すのだろう。ウエイターが持ってくる珈琲にはNoと言わずに入れてもらい、1ドルに満たないピザを食べ、セントラルパークで本を読み、グラウンド・ゼロを見て来るのだろう。

カバンを取られる事は願っていないが、そんなことが起きてもきっと良い経験と思い過ごせるのだろうか。ニューヨークに行く前にはぜひ葉大が好きである人間失格を読んでおきたい。

久しぶりに小説を読んでいて、この200ページにも満たない物語を書き上げるのにどれだけの時間や労力をかけて作り上げたのだろうかと気になる。是枝監督の映画作成についての本を読んだ時映画作りについてどんなこと考えながら作っているのかを語られていたので、そういった本について読み漁ってみたいなと思う。 

考えてみると、学生時代に論文などで長い文章を書いたがそれ以外でしっかりとした文章を気持ちこめて書いたという経験が無い。一般の人がみんな論文を書いているかとそうでもないので、作家さんのように長い文章を書く機会なんて普通の人にとっては無いのだろうと思うと、小説家や編集者さんはとても一般的ではない行為を行っているのだなと感じる。その作り上げたものが多くの人に読まれ、メディアなどで取り上げられるときっと嬉しいものがあるだろう。

次はサラバ!を読もうかなあと思いました。