中央銀行という機関はかなり古くから存在する機関です。
経済活動について勉強していく中でたまたま見つけた中央銀行に関する本を読んでみました。
中央銀行は外部に対して秘密を漏らさず、自分の姿を見せるべきではない、という考えがあったようで、秘密主義めいた部分があります。
しかし、著者ブラインダーによるとこの秘密主義について近年大きく変わりつつあると言います。この本で書かれているのは、透明性、多数決、市場との関係性であり、この3点について以下に変化があったのか説明されています。
中央銀行の透明性とは
本書が書かれたのは2008年のことなので現状とは少しズレがあるかもしれませんが、中央銀行の透明性というのは元来低いものであったようです。
中央銀行の決定が「簡単に判別でき」、中央銀行の政策が「用意に理解でき」、中央銀行の発表に「虚偽が存在しない」時に中央銀行は透明性があると本書では定義し議論していきます。
透明性を高める理由には、政治的見地、経済的にも好ましいと言われています。
それでは、何を透明にするべきかです。FOMCの任務は「雇用を最大化し、物価を安定させ、長期金利を低めに抑える」事です。これらの任務は目標として捉えてもよく、この目標のためにどのような政策が行われたかということを分析するべきと言います。
政策が透明になれば、その政策がどのように決定されたのか過程を公表することも求められてきます。
近年広まった中央銀行が透明になり、目標を公表し、政策やその狙い、過程を公開していくことはだんだんと当たり前になってきているようです。
日本の中央銀行にあたる日本銀行も様々な政策を公表しています。
一人による決定から多数による決定へ
中央銀行の意思決定は総裁により行われていました。近年、例えば英国、スウェーデン、スイス、ブラジルにおいて委員会による意思決定をするというように多数による決定へと変化が生じています。
「多様性に富む」グループのほうが個人や同質的なグループよりも複雑な問題を解くことができるとル・ホングとスコット・ページは論文で発表しています。
個人よりも委員会方式が良いとする3つの理由は以下と言います。
1.委員会によるブレーキ機能
2.多様な知識によるよりより決定可能性
3.複雑な仕事を処理する点において個人よりの意思決定を上回る
一方、個人の意思決定が有利と言える点もあり、変動幅が大きく(早い動き)、極端な政策ができる、という点です。
とても興味深い話として、世界にある様々な中央銀行の中では民主度の極めて低い中央銀行の一つにニュージーランドが挙げられるのですが、ニュージーランドの中央銀行は最も透明性の高い銀行とされています。
つまり、決定は独裁的ですがとても透明性の高い情報開示をしているという点です。
反対に、スイスの中央銀行は民主度はそれなりに高いのですが透明性が極めて低いです。
方向性としては委員会による決定へと向かっているようです。
リードするのは中央銀行か市場か
本書の中で書かれている詳細は難しく理解が追いつかなかったのですが、結論としては、リードするのは中央銀行がベターのようです。
市場は時に正しい判断を行い、時に誤った判断をする群衆であり、市場は常に中央銀行が考慮に入れるべき対象ではあるが、ときには操作の対象ともすべき点に留意すべきと述べています。中央銀行が市場を追随すべき存在では無いと。
解説にて植田和男さんはこの点について最も興味深く言及しています。
ブラインダーによる中央銀行リードの金融政策は理想ではあるものの、実態としては難しい部分もあるようで、中央銀行リードによるあるべき形はできていない事が多いようです。
さいごに・どんな人におすすめか
中央銀行の金融政策が直面する3つの課題ということで、独裁制の希薄化、市場とのバランスについて大まかに知ることができました。
特に市場とのバランスに関しては根本的な解決策は未だ見えておらず、市場という欲望にまみれた強力な生き物に対してどうリードしていくのかはこれからウォッチしていってみたいと思います。
経済学を勉強していたり市場に詳しい人にとってどのように感じるかはわかりませんでしたが、中央銀行という機関がどういった構造で性格を持ってきたのか。今まで激しく変化の遅い機関であった世界中の中央銀行がどのように変わってきているのかというのを感じ取れる本でした。