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天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす 問題解決の4ステップと15キーワード | オードリー・タン (著) | 2021年書評#13

オードリータンの新著を読みました。

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📒 Impression and Review | 感想

ラディカルな思考の代表的人物であるオードリータンさんの本で、本書の2冊目のものでした。

内容としては結構語られている内容であったりインターネットの海の中に書かれていることも多くとても新しいというようなものではないものの、改めて読むととても素晴らしい考え方であるなと実感します。

特に政治における「透明性」を大切にする姿勢はとても素晴らしくこういった思想は実行力あってのものだなと感じました。その実行力はプログラム技術だけでなく周囲との強調や対話もそうだと思います。

特に政治の世界は思惑が多い社会なように思いますが、その中で実力を発揮できる背景には周囲の理解も大きいのではないでしょうか。

台湾の政治感について友達にも聞いてみたくなるとてもおもしろい本でした。

📒 Summary + Notes | まとめノート

問題解決の方法

オードリータンは台湾のコロナ対策で一躍有名になった台湾のIT大臣ですが、その活躍はコロナ前から多くの場所で見られています。本著は幼少期のいじめや学校に通わないこと、トランスジェンダーなどの色々な背景を持つ彼女がどのように問題解決を行ってきたのかをまとめた本になります。

本著では大きく4つのステップの構成で問題解決方法をまとめています。

1.向き合う

2.受け入れる

3.対処する

4.手放す

問題と向き合う

オードリータンの考え方の背景の一つに「傾聴」という事があります。法鼓山と呼ばれる台湾の仏教団体の教えである「向き合い、受け入れ、対処して、手放す」という言葉を自室に飾っているそうです。

「開門造車、你行你来」(門を開けて車を作っているので自分もできる人はぜひ参加してください)という言葉でオープンガバナンスを表現します。

誰にでもオープンであるために多くの仕事の内容や記録をインターネット上に公開し、議論の場も提供しております。誰がいつでも参加できるように過去のもの話題や発言も含め記録し、透明性を高く持つことで多くの問題を集め各所の意見を集める事ができるようになっています。

意見を集める際には「傾聴」の姿勢でまず聞きエンパシー、相手の意見を自分の経験を持って解決策を考えるようにするそうです。相手の立場にたち同情するように聞くシンパシーという手法ではなくエンパシーにより話を理解しようとし、ゼロサムのように白黒つける対立的な視点ではなく対話的な視点を重視すると言います。

また折衷的な考え方も一つの解としています。Uberのような職業上の許可が無い人が空き時間を活用してタクシー業を行うことについてという議論については言葉の定義にとらわれること無く具体的な事象についての是非を話し合い、方案を作成したと言います。

問題を受け入れる

問題を受け入れるというパートでは「持続可能性」「集合知」「不完全主義」がテーマになっております。持続可能性は今でそSDGsで世に多く広まりその考え方が周知されてきております。SDGsは多くのトピックが含まれており、企業は経営などにSDGsを無理やり取り入れたような方針を発表し場当たり的にコンセンサスを取ることなどありますがときには利益を得た中で持続可能性な課題取り組みなどもできるため多様な解釈、取り組み方があってよいとしています。

集合知に関してはいかにもプログラマー出身の文化だと思います。Wikipediaもそうですが集合知により自己の利益だけにとらわれない取り組みが多くあります。「集思広益」という考えをもとに世の中をよくしていくという考えが大事だと言います。一つ面白いエピソードに台湾のタピオカミルクティーの話があります。タピオカミルクティーはタピオカ、ミルク、お茶の混合物で誰にも著作権を取得することができないために各地で地方にあった素晴らしいタピオカミルクティーができているそうです。これはオードリータンさん自信も自分の考えなどすべてパブリックにし所有すること無く全体の利益のために活用し続ける限り無料にしているということにも繋がります。

不完全主義については、正解は時代や時期によって変わるし完璧な答えなどないという思想からなります。こちらもFacebookマーク・ザッカーバーグの言葉「Done is better than perfect」などのようにエンジニアカルチャーから来ているように思います。

面白いのはどうしても対立が生じてしまったときは寝てすっきりしてから考えるそうです。

問題に対処する

問題に対処する中でとても大切にしていることに「透明性」があるようです。マスク問題に対応するときもどこにどれだけの在庫があるのかなどすべての情報を公開しまた外部からの助けを得られるようにコードも公開していたと言います。自分の考えや仕事を公開しておくことも透明性を実現しています。「飲水思源」(受けた恩は忘れてはならない)と呼ばれる考えが台湾にはあるようで自分が得てきた知識なども多くは著作権が放棄されたものが多くその上に成り立っているため同じように活用できるものがあれば誰にでも活用できるようにしているようです。

そのようにオープンにしていると市民が政治に参加できる状態が生まれやすいと言います。どんな議論が話されていてどういう意見があるのかを公開していたら誰しも意見しやすいですよね。そうすると問題の発見も問題の解決もみんなのちからですすめる事ができます。

意思決定の背景にはどのような議論があったのか、他の人たちは何を問題と感じているのか、その中で自分の立場では何が問題でどうすればよりよくなるのか。本を読む限り、かなり理想的な政治をしているように思います。「素早く・公平に・楽しく Fast, Fair, Fun」をテーマに多くの市民参加を呼びかけ、コロナ禍のデマ対策にはユーモアを用いて人々の元へ正しい知識を届ける取り組みもその功績と言えるでしょう。

とても興味深かった内容の一つが読書術の部分です。読む行為は栄養補給のようなものであり、熟読をよくするようです。一方で高速スキャン読書法といい、マインドマップを描いていくように連想しながら知識を吸収する方法も行うようです。スキャン読書法では殆どデジタル上で済ませ、途中で思考を巡らせ著者の思想理解を邪魔すること無く、できる限り自分の思考を挟まずアンカリング効果無しに多読すると言います。400ページある本であれば見開き2ページを2秒で読むため10分以下で読み終えるそうです。

これは傾聴にも通ずるものでまずはよく聞き、できる限りすべてを聞いたあとで判断し先回りして判断しない姿勢にも繋がります。判断を急ぐのではなく客観的事実を集めることでより迅速な対応ができるというのは台湾のコロナ対策が証明しているのではないでしょうか。

問題を手放す

競争原理主義的な側面が多いですが競争から脱却することはオードリータンの人生で大切なことでした。不登校児童であった一方で多くの幸運に出会う人生を歩んだオードリータン。中学校の校長から「明日から学校に来なくてよいよ」と言われ開放感を味わい、様々な文化を持つ人々とのプロジェクトに参画することでより多くの視野を得るチャンスが得られます。

学校教育だけで成功か失敗かを判断しない大切さや、山の中で生活することから学んだ人間らしさ、競争することよりも自分と向き合う事が重要であると言います。

現代ではスマートフォンで社会とどこでも繋がれる一方で社会から離れる時間も大切にしているようで特に睡眠の時間は8時間必要としているそうです。人それぞれ自分との向き合い方や程度は異なるので自分への向き合い方を見つけるのもとても大切なことでしょう。

承認や理解を求めずに「思考を伝える役割」に徹していると述べており、「喜びも苦しみ」も人生の大事な要素として苦しみは基本機能を崩さないためのシグナルとして大切にしているそうです。

手放すというテーマの中で死と向き合うという話もあります。実にプログラマーらしい表現ですが「自分がログイン(誕生)してからログアウト(死ぬ)なでに少しでもこの世が良くなっていれば良い」といっています。

自分の生きた証は自分が居たときと居なかった時の世の中の差分であるという考え方をよく大学時代に聞いておりその中で世の中が良い方向に転がっているものであってほしいという考えはとてもつよく同感するものでした。

また社会とのつながりを感じることが生き甲斐になる人達も多く居ます。そういう意味では仕事をしていくことや地域社会に貢献するということはとても良い生き甲斐なのではないでしょうか。

AIやテクノロジーによってどうなるのか

最後のQ&Aセクションにあった面白い回答を紹介したいと思います。

「ITやAI技術の進歩によって、人間が仕事をしない時代が到来するのでしょうか?…」という問いに対して「仕事をしない時代が来るのではなく、仕事を選べる時代が来る」「報酬が無くてもやりたいと思えるような仕事や誰かと一緒に創造する意義のある仕事をする」と答えています。

これはよくあるゼロサム的な議論が背景にあると思いますがテクノロジーによって仕事が奪われるというような議論はよくあるものです。

この問はよく聞きますがある程度回答はでていると思っていて、今まで多くのテクノロジーが発達することで必要でない仕事は無くなっていますが、新しい仕事が生まれより重要とされる(または経済合理性のある仕事)ものへシフトしているように思います。

そういった意味では変化に寛容になり新しい物事をしていきつつ全体として良くなる世の中を楽しんでいくマインドが大切なように感じました。

 

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3JgIPVX The Routledge Handbook of Feminist Philosophy of Science (Routledge Handbooks in Philosophy) (English Edition) Kindle版 英語版 Sharon Crasnow (編集), Kristen Intemann (編集)
  2. https://amzn.to/3qmv9zU モンテ・クリスト伯 7冊美装ケースセット (岩波文庫) アレクサンドル デュマ、 山内 義雄
  3. 映画 メッセージ
  4. https://amzn.to/3He5P5T 論理哲学論考
  5. https://amzn.to/3myk11C 哲学探究
  6. https://amzn.to/3qmDlAa 孤独
  7. https://pugs.blogs.com/pugs/ オードリータンブログ