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DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール | ビル・パーキンス (著) | 2021年書評#14

ビル・パーキンス著のDie with Zeroを読みました。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

人生は死ぬまでの思い出づくり

投資界隈では結構流行っているように思う本のDie with Zero。人生を豊かにするためには死ぬ時に資産がゼロになるように生きる事が最も理想的であり、人生の必要なタイミングに必要なお金を使ってきたという結果であると言うことを教えてくれる本である。

人生は死ぬまでの思い出づくりという視点をベースに年齢とともに資産の価値は変動しているという視点や、遺産相続や寄付は死んでからよりも生きているうちからするほうが良いといったような事を含めゼロで死ぬ大切さをいくつかのルールにまとめてくれています。

1.「今しかできないこと」に投資する

2.一刻も早く経験に金を使う

3.ゼロで死ぬ

4.人生最後の日を意識する

5.子どもには死ぬ「前」に与える

6.年齢にあわせて「金、健康、時間」を最適化する

7.やりたいことの「賞味期限」を意識する

8.45〜60歳に資産を取り崩し始める

9.大胆にリスクを取る

学生時代に世界一周が流行っていた時にリアルタイムで見ていたブログを思い出す本でした。

世界半周で学んだこと

世界一周しても価値観なんか変わらない | URAMAYU

若い時のお金の価値

著者のビルバーキンスはトレードフロアの雑用係としてニューヨークの高物価生活下で節約生活をしていました。ある日会社で1000ドル貯めた事を話すと「はした金ためやがって」と言われます。Your Money or Your Lifeという本で書かれていたのは金は「ライフエネルギー」という考え方でした。「時は金なり」と似たような印象であるが、ライフエネルギーの概念で行くと、働いた対価で得た賃金は自分のライフエネルギー(有限の人生の時間)を引き換えに受けているものでありました。

年収7万ドル稼ぐ人よりも年収4万ドル稼ぐ人のほうが1時間あたりに得られる価値は大きい可能性があることもYour Money or Your Lifeから学んだそうです。高収入を得るために家賃の高いところに住む、仕事の拘束時間が長いなど価値の高いであろう若い時の時間を切り売りして高所得を得ることに囚われていると実は損しているなんてこともあるかもしれません。

アリとキリギリスでは節制してコツコツと働くアリが美徳として語られることもある一方で、アリのようにいつ遊んでいるか分からない人生を過ごすことよりも、経験の価値を信じ楽しくも短く生きたキリギリスからも学ぶことが多いという視点もあります。

経験の価値を重んじ、死ぬ時はゼロ(資産ゼロ)でいることが個人の人生において最大限効率的な生き方ということでしょう。

借金してでもすべきこと

20代前半のルームメイトであったジェイソンルッフォはある日3ヶ月休んで借金してヨーロッパ旅行に行きました。高金利の金貸しから借金する友人をみて著者は頭が悪くなったのかと言ったそうですが、彼はヨーロッパ旅行を決行します。

1990年代前半にインターネットが発達していなかった頃の旅行は大冒険そのものでルッフォはその旅行で見て感じた事をいつまで立っても良い思い出として話していたそうです。

人生の最後に残るのは思い出、です。

本編の話とは少し離れますが、今の時代思い出をより鮮やかに残せるようになってきました。iPhoneでは高品質な写真も動画も撮影できるようになってきたとなると、今後は各素材をより綺麗にまとめられるというニーズも増えていくのでは無いでしょうか。

さて、本の話に戻りますが、「人生で大事なのは思い出」と言われても実際どうしたら良いのか。

重要なのは「どの年齢で、どれくらい金を稼ぎ、どれくらい楽しい経験に金を費やすか」です。アリとキリギリスはお互い両極端。アリはもっと楽しい経験をすべきでキリギリスはもっと計画的になるべきでした。

そこで著者が考えたのは経験のポイントという概念です。さらにその経験(=思い出)には「思い出の配当」という概念があります。つまり経験のポイントは一度の加点だけではなく、その後の経験にも連鎖的に配当として加点され価値が増していくということです。

Facebookで数年前の写真が急に表示されるが、それは経験した時の思い出を後で振り返った時に懐かしく楽しい思いができるという、まさに記憶の配当を与えられていることになります。

老後の備えももちろん大切ではあるが老後に価値が最も高まるものは「思い出」なのです。

一方で習慣的に自動運転モードでお金を浪費することに目を向けたほうが良いと著者は言います。例えばスタバのドリンクを習慣的に買っている人に対しては「その習慣がなければ何ができたのか」を考えたほうが良いと言います。仕事人間も同じで「金を稼ぎたい」という自動運転モードで習慣的に仕事ばかりしている人に対しても同じです。引退するためにもう十分なお金があってもなお仕事ばかりしたい人はその歳月が戻ってこないことを理解して自分の思い出を作る時間を作ってもよいかもしれません。

老後のお金の行方とは

この本で面白い内容の一つにアメリカ人の純資産は70歳まで右肩あがりに上がり続け、老後の資産は使うことなく死ぬ人がかなり多い一方で、人々は70歳になってもまだ未来のために金を貯めようとしている人が殆どだと言います。

つまり現役時代に老後のための貯金すると言っている人たちは、いざ退職したらその金を十分に使っておらず、お金を貯め続けたまま死んでいます。

こうなると「減り続ける残高を見て高額な終末医療が必要になったら安心できない」という意見ももちろんある一方で、それはエイリアンが襲来するぐらいの確率の話で最後の数日を生き延びるための医療費と人生な貴重な時間を犠牲にした時の重みはどちらが重いであろうか?というのがこの本の問になります。

また、ゼロで死ぬためのリスクに長寿シスクがありますが、これに対しては一つの解として「長寿年金」(払いきると死ぬまで毎月定額の年金として支払われるような保険商品)をあげている。大事なことは少し立ち止まり年をとってから必要な資金を定期的に見直し、「富の最大化から人生の最大化」を意識することにあると思います。その中で死を意識することは不可欠で著者はFinal countdownというアプリを活用しているようです。

適切な遺産相続とは

実際ゼロで死ぬのは難しいのですが、ゼロで死ねなかったときは遺産相続すれば良いのではと思います?ただ死後の相続に対して「うれしさ半減、価値は激減」と表現しています。

相続人が年をとってしまってから資産を受け取るということは相続人の人生の中でお金の価値が低くなってしまっているタイミングでの相続になり得ます。例えば30歳で受け取れば色々な選択肢がある一方で60歳や80歳で相続してもお金が必要でない状況になっていますよね。

一つの目安として金の価値を最大限にできるのは26〜35歳としています。つまり親が財産を分け与えるのは子供が26〜35歳のときが良いのです。

例えば子供が居る相続人が30歳で仕事よりも子供と居る時間を優先した場合思い出が増えることに加えて、親と過ごす時間が多い子供はその後の人生も充実したものになる事が多いという傾向があり、子供と過ごした時間にさらにレバレッジがかかります。

金は稼いでいても、子供と一緒に過ごす時間が無いのであれば経験も共有できない子供の時間さえも奪ってしまっている。そう考えると、仕事ばかりに時間を使うことと大切な人と過ごす時間のバランスを見直すことはとても重要ですね。

年齢にあわせて「金、健康、時間」を最適化する

著者は若い時にこれから収入は右肩上がりであるのに金を使わないのは愚かだ、と上司に言われました。ヤバい経済学で有名なスティーブン・レヴィットは同じことをシャインクマンに言われたと言います。

ここで考えたほうがよい前提は、2つです。

  • あなたの身体は間違えなく衰えていく
  • 金の価値は加齢とともに低下する

そこで大事なのは「経験から価値を引き出しやすい年代に、貯金をおさえて金を多めに使う」です。

そこでまた追加される要素は、先送りすることによってできる事が変わることです。例えば10年後に宇宙旅行が割と現実的な金額で行けるようになるかもしれないとなると、今のアメリカ旅行よりも10年後の宇宙旅行のほうが価値が高い人も少なくはないでしょう。

さらにそこで考えたほうがよいのは健康の価値です。健康を維持することによって10年後の宇宙旅行ができる人もいれば不摂生を続けたことにより病気へそのお金を使わなければいけなくなります。健康はお金で買ってもよいものかもしれません。

最適化するためにはある一定間隔で見直す事が必要になりますが、その際に「タイムバスケット」と呼ばれる手法を活用し、年齢ごとに何をやりたいか考えて書き出しておくのはとても良いと言います。死ぬまでにやりたいことリストと聞こえは似ていますが、大切な要素はどの年代の時に何をやっておきたいかを理解することです。やりたいことの期限やタイミングは意識しておくと具体化できるでしょう。

ゼロで死ぬために

資産の切り崩し時はゼロで死ぬための大切な要素です。著者がおすすめする計算方法は

死ぬまでに必要な金=(一年間の生活費)×(人生の残りの年数)× 0.7

一年間の生活費を考える場合は、田舎に移住して過ごす場合と都会で賃貸などでは多く変わるので自分のやりたいライフスタイルによって具体的に計算してみると良いでしょう。

この本で資産をへらす最適なポイントは45〜60歳としています。

また大事な指摘として老後になれば蓄えは増える一方で生活コストも下がってきます。もしかすると、私達が思っているほど老後にお金はかからないかもしれませんね。

リスクを取るタイミングも著者は話しており、年を取れば取るほどリスクによるリターンは減ってきます。若いうちに大きなリスクに挑戦する価値はとても高いのです。

1.リスクを取るのであれば早いほうが良い、2.行動を取らなかった時のリスクを過小評価しないほうが良い、という点は意識しておくと良いでしょう。3.リスクの大きさと不安は区別して考えるべきとも教えてくれます。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3sYSSt5 映画ウォール街
  2. https://amzn.to/3eB0TvI Your money or your life (原著)
  3. https://amzn.to/3zdRwvA お金か人生か(和訳)
  4. ダウントン・アビー 「人生でしなければならない一番大切な仕事は、思い出づくりです。最後に残るのは結局それだけなのですから」
  5. https://amzn.to/32BZt1F ヤバい経済学
  6. https://amzn.to/3HCKe7F Eat to Live 食生活による健康維持方法を学びたい人におすすめな本