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シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 (NewsPicksパブリッシング) | 安宅和人 (著) | 2022年書評#1

2021年読んだ本でまだまだ書評が書けていない本が沢山あるのですが2022年の書評として書いていこうと思います。

今回はシンニホンについてです。

📒 Impression and Review | 感想

テクノロジー全盛期の大きなうねりの中、Bigテック企業はアメリカの会社ばかりで、大きな発展も中国企業ばかりというような時代に生きています。

日本は一度大きく発展した一方で、スクラップビルド文化のなさや限られた日本人のみの人口リソース、言語的壁によるデータ収集可能性の低さ、一度豊かさを教授した中でのハングリー精神の低さなど、発展が鈍化する要因は沢山あり、この大局的なトレンドは変わらないものなのだろうなと感じました。

本自体は「シンニホン」と題されており、どちらかというと希望を持って問題点と解決策の提示といったものではある一方で、ここに示された解決策を実行するためにはとてつもない構造変化が必要であるように思い、愕然とする思いもあります。

ただし、そんな中でもデータやAI技術の活用を通じて発展する伸びしろはまだまだ多く、想像できていないものも多々あると思います。

個人レベルとしては楽観的なスタンスで、変化に寛容であり、若者が活躍できる環境を応援する。英語や中国語などを利用する機会を増やし、デジタルテクノロジーに明るく過ごしつつ、エコな暮らしを考える、といったところでしょうか。

書いてある内容や豊富な事例の紹介、文献の紹介はとてもおもしろく、著者の知識の幅が広いことも読んでて飽きない良い本であったと思います。

📒 Summary + Notes | まとめノート

歴史的な革新期

本著は大枠はテクノロジーが世の中にどう影響を与えていくのか?とい話題になります。

ここ最近でAI技術の大きな実力証明となった出来事があります。2016年に囲碁のチャンピオン

イ・セドル氏に対してDeepMind社が開発のAlphaGoが圧倒的な勝利を収めます。

AIが全く歯が立たない状況からわずか9年の開発で人間が勝てないようなものへと指数関数的な強さの伸びを見せました。

AlphaGoは①16万局、約3000万の局面を3週間かけて学習、②自己対局せさ、1手のみランダムに打ち、さらに別のアルゴリズムに打たせることで3000万局面を生み出し③その局面の勝敗結果を1週間で学習する、というような泥臭い学習をひたすらにこなしたと言います。

人間が同じ事をやるためにはたとえ1日1局打ったとしても30年かけて1万1000局しか打てない事を考えると人間何世代分もの進化を数週間で行ってしまえることになります。

さて、著者はAI=計算機×アルゴリズム×データといいます。

AlphaGoの場合ですと、計算機はコンピューター、アルゴリズムは評価方法、データは試行回数というようなイメージでしょうか。

このAIの定義はとてもわかり易く思いますね。データが沢山あったとしても良い計算機やアルゴリズムが無いとAIはよくならないですし、データが少なくても同様です。

AIによる意思判断と人による意思判断を比べるときも、人が長年経験しながら蓄積する知識をAIは疲れを知らず複製可能であるためにデータ量も計算機の性能も桁違いですから、AIのほうが適切な判断ができるようになると考えるのが普通にも感じます。

長年人類が叡智を積み重ね、書物や言葉で世代を超えて重ねてきた知識を圧倒的に短縮した時間で可能にできる時代にあると思うとすごい世の中になっているのだなと思います。

日本はどうしていくべきなのか?

さて、シンニホンという本題であるのでこの本には日本の勝ち筋についても考察されています。

日本は企業価値ランキングやGDPでは衰退の一途で賃金推移も先進国の中ではかなり低く、ジリ貧状態が続いています。また、科学技術に関しても日本人村だけですべてを完結させている大学教育などで優秀な人が集まるアメリカや魅力的な賃金で才能を集める中国などからどんどん遅れを取っている状態です。

日本が活用できない資源として大きく①若者(教育)のちから②女性のちから③65歳以上のちから、と著者は言います。少し相反するように聞こえますが、解釈すると若者の教育チャンスは増やし賃金も上げるようにし、女性や高齢者が子育てや身体の動くうちは働ける柔軟な労働環境があるとよりリソースを使えるのではということのように思います。

リソースについてはわかりましたが、それではAI活用についての勝ち筋はどうなのでしょうか。AI活用のためには①データ収集能力②データ処理能力③情報系のサイエンティストとエンジニア、と言います。残念ながら日本ではこの3つの要素全てにおいて世界トップになりえておらず、エンジニアは足りない、科学技術は取り残されていく、データ処理に必要な電気代は高い、など裸で戦場に繰り出し続ける状態とも言えます。

もう勝ち目無さそうに一見聞こえますが、どうやら本当に勝ち目はなさそうです。

その中でもどうしていくのか、というと若い力の活用や妄想力、キャッチアップスピードの速さなどを活用していくのが良いなどいくつかの案が書かれています。

どのような個人が必要か?

さて、第3章、第4章ではどのような人間が必要でどのようにはぐぐむのかについて書かれています。とても平たく乱暴に言ってしまうと、若者教育をしっかりして、その中でも画一的な同じことをよりよくできるようにから、何か得意な事を抜群にできるように。さらにその中でも科学技術に関する人材を多く獲得し、デジタル活用・研究できるような人たちが増えれば良いよね、という感じでしょうか。

日本が抜群に優れているのはつまらないような事をコツコツ正確に遂行していくというような点にあると個人的には思っています。少し言い方を変えると、頭を使わずに言われたことをやるようなマインドセットでこなすことは素晴らしくできます。電車の遅延無しの美学などはそんなところから来ているようにも思います。

一方で必要になってくる人は、夢を言語化して語れる人であったり、的確にデザインされた言語化能力であったり、それを遂行できる科学技術能力であったり、というところです。

アメリカは優秀な人間が集まりたいと思える環境作りがうまく、中国はハングリー精神や資金能力、膨大な人口アセットなど活用しながら、英語環境や国内の人口という豊富なデータ埋蔵量もあります。

第5章からは、若者にお金をかけるためにどういった資金繰りができるか、というような事が沢山の事例を持って書かれています。

大学教育への費用であったり法人税の話してあったりと若い世代の教育、会社創設が資金的にも環境的にも簡易になるためにどうすればよいかがまとめられているのですが、一方で読んでて重くのしかかるのはやらなければいけないことの多さと、個人でできることの少なさです。

これからの未来について

さて、話は未来についてに移ります。

残すに値する未来と題された章では、未来の不確実性に対するマインドセットやそこにどう対応していくべきなのか、また、資源としての森林や水産資源の話があります。

面白いと思ったのはCO2排出量と適切人口の話で、森林(CO2を吸収するもの)と人間活動(C)2を排出するもの)で適切なバランスは約50億人程度がこの星のキャパなのでは無いかということでした。そう考えると人間は増えすぎているのかもしれませんね。

最後に描かれている構想に「風の谷」というものがあります。自然の美しい環境で大きな人工物が無いような街を表現しており、豊かに生きるようなイメージに思います。