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Invent & Wander―ジェフ・ベゾス Collected Writings | ウォルタ−・アイザックソン (著), 関 美和 (翻訳), ジェフ・ベゾス | 2022年書評#10

アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの伝記本と呼べるInvest & Wanderを読みました。最近では宇宙旅行が話題となったジェフ・ベゾスですが何を思ってアマゾンを創業し、その中で何を大切にしサービス開発、成長を遂げていったのか、過去ベゾスが送っていた株主への手紙やインタビュー分を元にたどっていきます。

アップルはスティーブ・ジョブズの判断がすべてであった一方で、ベゾスは失敗を許容しときにはチームの判断にコミットするという組織づくりをしているところは興味深く、一方でGoogleなどのような優秀な人材を引き止めるために行われる過度な福利厚生などは控え理念に共感できる人を中心に、その中でも優秀であるという質は落とさない人材により多くの素晴らしいサービスを生み出してきました。

アマゾンと楽天は比べる対象として違い過ぎて比較しにくいですが、年々明らかに使いやすくなるアマゾンのサービスは1ユーザーとして感動するほどよくできています。Amazon Primeやそのたストレージサービスも素晴らしく、AWSは圧倒的なシェアをほこります。

環境対策に対する取り組みや様々な社会課題に対する取り組み、この本を読んでより一層アマゾンの事が好きになりました。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

Corrected writings

Amazonの創業者ジェフ・ベゾスの文章を集めた本書で、特に毎年株主に当てていた手紙が多くを占めます。日本では株主に手紙を送る会社はあまり聞いた事が無いですし、またこの内容が個人間で送られる手紙のような温かみがある内容で、Amazonの顧客第一主義や、その時々にどんな事が起きて何を大切にし顧客に喜んでもらえた取り組みなどをとても楽しく読めるように書かれています。

きっとアマゾンが好きな人は副題にあるCorrected writingsとあるようにどこかで見たことある文章ではあるかと思いますが、ひとまとめになっておりAmazonが10人で始まったときの物語から今までの息遣いが聞こえてくるようなものになっています。

序文は数々の自伝をまとめてきたウォルター・アイザックソン

Amazonを見る中で大事な5つのポイント

ウォルター・アイザックソンの序文で最重要5つのポイントが話されています。

  1. 長期に目を向ける
  2. しつこく情熱的に顧客に集中する
  3. パワポとスライドのプレゼンを避ける
  4. 大きな判断に集中する
  5. 適材を採用する

これらは株主への手紙の中で繰り返し登場する話題なのですが、会社として株主の利益の最大化を考える一方で、コントロールできない要素である株価に対して注視するのでは無く、長期的な視点を持って顧客第一に良い会社にしていく意思を説明しています。

人材採用に関してGoogleにあるような福利厚生を充実させて興味を持ってもらうというよりも、Amazonのビジョンに共感してもらえるように過度な福利厚生をしない、というような一面もあります。ただし、優秀な人材が嫌にならないように意思決定のスピード(意思決定に時間をかけて良いもの、かけなくて良いものの選択)を大切にし、現場の意見を尊重し「反対だがコミットする」のように働き手が活躍できる環境を作り出しています。

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ベゾスの生い立ち〜起業まで

ベゾスの母親は高校生のときに妊娠が発覚します。当時の価値観は現在と大きく違い、妊娠が伝染するように思う人も居たようで学校を退学するように言われたところベゾスの祖父にあたる父親が校長を説得し卒業まで学校に通う事ができたそうです。

さらに4歳の時に母親は離婚しミゲルベゾスと再婚。キューバから難民としてアメリカに移り住み自活力と冒険心のある人間でした。ベゾスはスタートレックが好きでオタク。物理が好きで大学の専攻も理論物理学でした。ある日難しい物理学の問題を解こうとしていたところわからなかったために友人に聞くと少し考えた後に「コサインだ」と解答を導いた友人をみて、理論物理学でトップ50人には慣れないと思いコンピューターサイエンスを勉強することになります。

ベゾスはヘッジファンドに入りデヴィッドショーと働きます。彼は後のAmazonの採用哲学に影響を与えたように優秀な人でありましたが、ある日インターネットが年率2300%で成長していると知るとオンライン小売店のアイデアを実現するべく起業を考えます。

ヘッジファンドのジョーにこの話をすると、セントラルパークを長い時間かけて散歩しながら話「すごく良いアイデアだと思う。でも君のようにいい仕事に就いていない人なら、もっといいと思う」と引き止められ2日間かけて悩んだそうです。

この時ベゾスの判断フレームワークにある、80歳になってその判断を振り返ったときにどう思うか想像し、「きっと後悔しないだろう」ということで茨の道に進む事を決断します。

妻にも起業する事を伝え、「失敗するかもしれない」と親に伝えたが親はベゾスを信用して出資します。

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起業のための手続きにコンタクトした弁護士は離婚弁護士マイクロソフトを辞めた優秀な人が来るのではとシアトルで起業します。

アマゾンの開店すぐに注文は殺到し、初月から国内50州、45か国から注文が入りオフィスの地べたで作業をしていたベゾスが「膝当てを買わないと」というと同僚が「作業台を買ったほうが良い」と言われ購入したというのはどこか愛らしいストーリーです。

長期がすべて

1997年に上場したアマゾンは上場年から株主へと手紙を送ります。そこで長期的な株主価値を上げていくことに価値があり、そのためには顧客の信頼を勝ち得ていくことを強調します。

どこよりも多くの品揃えを持ち、24時間365日買い物ができる。注文すればすぐに届く。インターネットでの買い物が普及してきたことなんてここ最近の話なので当時からそこに重点を起きよりよいものにしていこうと視野を持っていたベゾスの先見の明は関心させられます。

2000年のドットコムバブルが弾けた後にアマゾンの株価は80%下がります。このときの手紙の冒頭は「いたた…(Ouch)」と始められています。この時会社の確かな成長を伝え、ベンジャミン・グレアムの言葉を借り「株式市場は短期的には投票機だが、長期的には計量器である」と記し、99年のドットコムバブルでは明らかな投票的な株式市場であったことを説明しています。さらに説明していることに、ムーアの法則で機器の性能がよくなるため、5年後にはリアルタイムで個人にあわせたウェブ生徒のパーソナリゼーションが向上すると行っています。今では当たり前になったレコメンデーション機能について2000年に言及していたのは恐ろしいですね。

顧客第一主義

2002年の手紙には実店舗との比較が書かれています。ベストセラー100冊を大型書店で揃えると1561ドルかかる一方でアマゾンでは1195ドル、23%も安くすみ、100冊の中で72冊はアマゾンのほうが安い値段であり消費者にとって嬉しいプラットフォームになっています。

株主への手紙に書かれている顧客第一主義のための様々な事が今の当たり前である一方で当時では確信的なものばかりなのですが、レビュー機能(悪い評判も含む)、購入者への質問機能、インスタントオーファーアップデート機能(昔買ったものである事をお知らせする機能)、アマゾンプライムキンドルバイス電子書籍サードパーティ商品の追加、と数々の機能を追加しています。梱包への改善も顧客体験として改善するためにストレスフリーパッケージを研究していました。

思い返してみると、自身もアマゾンを2012年頃から頻繁に使い始めましたが明らかに改善されており、出荷も早くなり、梱包もまだおやっというときはあるものの昔ほど無駄は無いように思います。本は注文したらキンドルアプリにダウンロードされ、中古本は値段の安い販売者を教えてくれて状態までも分かる。返品や返金対応も素晴らしい。国内のサービスで年々便利になってるなと思うのはユニクロやメルカリでしょうか。

アマゾンを使ってキンドルにベストセラー本を出した一般人や、FBAを活用して中古本ビジネスを成功した夫婦の話など、アマゾンにより仕事が生み出されている人たちがいるというのもサービスプラットフォームとしてすばらしく思います。

失敗を許容する実験思考

アマゾンは失敗をすることを恐れない文化があります。というのも株主への手紙でベゾス自身がしっかり振り返りファイアフォンは失敗であったと振り返り、でもアマゾン・エコーの音声開発チームへ移行して素晴らしいアレクサの機能を作り上げたと伝え、失敗しなければ発明がなかった事を強調します。

これはベゾス自身が失敗の先に発明があることや、大企業でこそできることでありアマゾンがそれをしなければ行けないという事を理解しているからですよね。

この文化は意思決定の方法からも分かるものがあります。アマゾンの意思決定はスピードが命ということを大前提にもとに戻す事ができることに対してはすぐに判断し間違っていたら引き返せば良いと言います。たいていの物事は70%程度しか情報が無い中で判断しなければならなく、90%の情報が出揃うまで待っていたらスピードが遅かったと考えます。また意思決定の際にチームが自分と反対意見であり物事を進めたいというと「反対してもコミットする」と自分の意見を述べながら、でもサポートすると伝えるそうです。正解は誰にも分からない中判断しなければ行けない事が殆どで、自分を説得しきるまで待っていたら遅い上にチームも疲弊する。遅い意思決定には優秀なメンバーは嫌気が指す。

日本の文化は思うに真逆でどんなリスクの大きくない物事でも石橋を叩いた挙げく、安心しきれる材料がすべて出るまでOKは出さず、失敗したら原因を突き止め吊し上げ。どちらの世界で働くほうが物事が推し進められて良い世の中になるかは明白でしょう。

環境問題への取り組み

一つこの本を読むまで知らなかったことはアマゾンが行う環境への取り組みです。自社でサステナビリティ研究所を設けオンラインショッピングと店舗販売でどちらがエコであるかを評価したところ、オンラインショッピングのほうがエコであり、買い物サイズが減れば減るほどそれは顕著になるという結果だったそうです。

またAWSは炭素排出量ゼロのために再生可能エネルギーを利用しパッケージも削減できる商品は削減を試みています。

電気自動車メーカーリビアンと契約し電気配送車を活用して配達を行うために2022年までに1万台、2030年までに全車電気自動車へ移行しようとしています。

コロナ危機でのスタッフへの配慮や、仕事に関わる・関わらない関係なくキャリア育成のためにスキル研修を受ける事ができ、スキル研修を受け転職してトラックドライバーになった元アマゾン社員もいるそうです。

本社にはシェルターを設けホームレスへのケアなど多くの社会貢献活動を実施しており、かつそれもパフォーマンス的なものではなく世の中を良くするべく練られて行われているという事に驚きましました。

ストーリー

幼いころベゾスは祖父母とドライブしているときに祖母がタバコをずっと吸っており、当時タバコを吸うと寿命が縮まると学んだベゾスが祖母に対して「寿命が9年縮んだね」と伝えると祖母が大泣きします。そこで祖父は怒鳴るのではなく休憩地点でベゾスを連れ出し「賢いよりも優しいほうが難しいんだ。いつかおまえにもわかるときがくる」と言われます。その時ベゾスは、優しさは選択。うっかりすると賢いという才能に溺れて選択を誤ってしまうと気が付いたそうです。

ベゾスが小さい頃祖母は農場で作業している中で指を車と門の間にはさみ皮膚がただれ、自分に腹がたった祖父は薄皮でつながっていたただれた皮膚を引きちぎって捨ててしまいます。結果お尻の肌を移植したところ、指は元通りになった一方で尻の毛が指から生えてくるため毎朝長い時間電動ひげそりで顔の後に指も手入れしてました。母親は指が1本亡くなっても自分が何もできない人間になるよりまし、と小さい頃からなんでもベゾスにやらせます。こんな家族たちからベゾスが失敗を受け入れて前に進む事の大切さを学んでいたのでしょう。

宇宙を目指す理由

本書の最後はブルー・オリジン、宇宙事業について書かれています。最近読んだ人新世の資本論でも語られていたように、地球から資源はどんどん減っており、ベゾスはいつか地球外から資源を採掘しなければいけない時代が来ると思っているといいます。

グローバルなエネルギー使用量は毎年3%増えており、これは25年毎に倍になる計算です。そのエネルギー使用を賄うためにはまず、エネルギー効率を上げる必要があります。灯油ランプが白熱灯、LEDとなり照明のエネルギー効率は格段に上がりました。人の移動もコンピューターの処理能力も格段に上がっています。そうするとどうなるか?人はもっとエネルギーを利用します。

エネルギーの利用が無限に伸びていくといつか配給制にしなければならなくなります。それは歴史上初めて私達の孫世代は私達の世代よりもよりよい人生を送ることができなくなることを意味します。そのためには宇宙に出て資源を得る、生活をするという選択肢を持つ必要が出てくるとベゾスは言います。

そうすると今度は宇宙へ移動する手段が必要であり、使い捨てロケットではコストが高くつき、スペースシャトルのように再利用のために時間とコストをかけるようなプロセスもなくさなければいけないためにロケット開発へと取り組みました。

脱成長的な考えではなく問題に対して技術成長させていくという考えですね。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/34vX4WG 宇宙の覇者 ベゾスvsマスク 単行本 – 2018/12/18 クリスチャン・ダベンポート (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳)
  2. https://officechai.com/startups/amazon-first-office/ アマゾン最初のオフィス写真
  3. https://www.cbinsights.com/research/bezos-amazon-shareholder-letters/#1997 24 Lessons From Jeff Bezos’ Annual Letters To Shareholders 株主への手紙まとめリンク
  4. https://keiriplus.jp/tips/freecashflow-zaimu/ フリーキャッシュフローとは 計算方法と分析の具体例
  5. https://sustainability.aboutamazon.com/environment/sustainable-operations/carbon-footprint
  6. https://www.dhbr.net/articles/-/5229 意思決定を分権化すべきか否か、それを見極める4つの判断基準
  7. https://s2.q4cdn.com/299287126/files/doc_financials/annual/2004_shareholderLetter.pdf 財務の話
  8. https://www.businessinsider.com/jeff-bezos-says-always-day-1-amazon-philosophy-2019-12
  9. https://diamond.jp/articles/-/288503 ベゾスが驚愕「人生を変えた、異常に賢い友人の一言」
  10. https://wired.jp/2021/07/23/jeff-bezos-goes-to-space-day-three-reentry/ ジェフ・ベゾスが成功させた宇宙旅行には、単なる“冒険”には終わらない「壮大な目標」がある
  11. https://www.blueorigin.com/about-blue ブルー・オリジンHP
  12. https://sustainability.aboutamazon.com/about/the-climate-pledge
  13. https://forbesjapan.com/articles/detail/26480 ジェフ・ベゾス、離婚で4兆円の株式分与 妻は世界3位の女性富豪に