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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る | オードリー・タン (著) | 2022年書評#15

オードリー本を読みました。

 

この本を読んで

本書を読んだのはコロナ禍のワクチン接種もまだほど遠い頃でした。日本はマスク政策を発表したかと思えば容赦無い中貫企業があり、与党が絡む組織ではとのような比較的ぐだぐだしていた一方で、台湾はオープンソースでマスク購入を管理したり公益性の高い活動をとてもうまく、スピーディーにしていた印象でした。

その背景でよく語られる人物が本書の著者オードリータンということを知り本屋に積まれた本を読んでみることにしました。

マルクス主義柄谷行人から学ぶ彼の思想は公益性を大事にしながらも科学技術の発展も追い求め、より世界を良くしていくことを目指すものであり、最近日本で見られる脱成長とは同根ながらも正反対のアプローチに思います。

公益性の考え方、プログラマーとしての実装能力、オープンソースの力、傾聴の精神、など思想だけでなく圧倒的な能力も備え持つオードリーのような人物が政治に参加している台湾はものすごく良い文化を持つ国であるなと実感しました。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

オードリータン

台湾のIT大臣のオードリータンが一躍脚光を浴びたのは台湾の新型コロナ対策の取り組みが大きなトリガーだったのではないでしょうか。

日本の政府も使い始めた「誰一人取り残さない社会」。これはオードリータンの提言したものであり、かつ実行していることです。すごいのは言葉が一人歩きしているメッセージ先行ではなく実行にうつしていること。それは彼のバックグラウンドがあってこそだったのではないでしょうか。

デジタルを活用してより良い人間社会を作る

台湾はデジタルの重要性を理解しつつ、それをどう活用していこうかという着目点でデジタル技術の推進を図りました。例えば5Gの導入について大きな投資をして地方から設備を整えていくことで都会との差を埋めようという試みをします。これは山間部や離島の地域においてリモート教育などができず格差が拡がっていたため「不公平を是正していく」取り組みです。

AIについて、人間の仕事を奪うものではなく人間生活をよりよくするものだと言います。AIは中間作業を代替してくれますが、シンギュラリティが起こるまではやはり人間が最終判断をする必要があります。人類は自分たちがよりよい判断をするためにAIを活用し、それは人類がどういう方向に進みたいかを考える事と等しいと言います。ディープラーニングはAI技術を発展されるブレイクスルーとなりましたが、多くのブラックボックスを含みます、AI自身もなぜそれが良いのか分からない、でもそれが良い、そういったAIの性質を理解しながら活用していく事も考えなければいけません。

一つ原子力発電の例があります。次の世代に大きなリスクを残して原子力によるエネルギーを教授する、というのはあまりにも馬鹿げているかもしれない一方で、将来原子力がより低リスクで使える可能性があります。科学技術の発展によりより良い方向に物事は進むかもしれません。

科学を理解したからといって、それで「物事のすべてを理解した」という傲慢さを持ってはいけないと言います。

さて、台湾のコロナ対応ではデジタルの活用が行われました。この時オードリータンは高齢者が使いにくいようなものでは無く誰にでも使いやすいものを目指します。高齢者が不憫に感じるのはシステムの問題なのですね。

台湾では青銀共創(青年(青)と年配者(銀)が共同でクリエイトしイノベーションを行うこと)という試みが盛んに行われ、相互に学ぶ。誰も置き去りにしないためにはインクルージョンが大事であり様々な人と意見交換を行う必要性があります。

公益性を目指す

オードリータンの父親は新聞社に勤務し、小さい頃からソクラテス式問答法を応用して対話を行っていたようです。「誰からも概念を植え付けられるな」という概念で「探究心を抑えつけない」ように育てられました。

オードリーが12歳の時、台湾大学の学生と友達になりインターネットを知ります。「プロジェクトグーテンブルク」という著作権切れの名著を電子化し繁体字でも読めるようにプログラムを書きます。このオープンソースでの活動はまさに公益性を学ぶ機会でした。

14歳のときには持病の影響もあり学校生活を辞め静かな田舎で生活をします。そこではAIやAIの自然言語処理に関する最先端技術を学び多くの研究者と触れ合う機会が持てました。そこから学校へ戻る際に研究がおろそかになることもあり中退を願い出ると、中学校の校長はよき理解者であるため学校に来なくていいから卒業をさせるという配慮をします。

15歳でにして台湾で起業、18歳にはアメリカのシリコンバレーで起業します。オープンソースでの活動や、検索アシストソフトウェアの開発などを通じ多くの著名人や政府と仕事をしました。33歳になるとビジネスから引退し顧問として様々な会社のアドバイスをします。アップルiPhoneのSiriの音声開発もしたようです。

日本文化にも大きな影響を受けており、柄谷行人の唱える「交換モデルX」という概念は大きな影響を与えたと言います。これに影響を受けてRadicalxChange財団を設立し、パートナーはラディカルマーケットの著者グレンワイルでした。グレンは経済学は「既存の資源をどう分配するか」ではなく「人々が協力してより多くの価値を生み出すためにはどうすればいいか」を考えることだと言います。

デジタル空間は「未来のあらゆる可能性を考えるための実験場所」ではないかと言います。

デジタル民主主義

2014年に起こったひまわり学生運動はオードリーが政治と深く関わりを持つようになるきっかけとなります。学生は議会を占拠し、g0vという活動団体を通じてオードリーはこの活動のライブ中継をし学生たちの要求を世に広めました。デモとは破壊行為をすることではなく、様々な意見があることを示すことです。

この学生運動を通じて、台湾のインフラに中国製のテクノロジーを入れることをしないという判断がされ現在でも維持されています。

その後占拠で投票した候補者が1票差で当選するなど政治参加の重要性を感じる体験を通じ、デジタル担当政務委員につくことになりました。

vTaiwanやJoinなどの国民が意見できるプラットフォームを作成し、実際に意見から政策へと取り込まれた事もありました。このように傾聴の精神はオードリーが重要とする価値観であり、またデジタルにより実現できる民主主義でもありました。

インクルージョンが十分にできているか」「説明責任が十分になされている状態にあるか」ということはデジタル民主主義で大事な要素です。誰か一人の言うことに従う状況や特定の企業が影響力を強めることは危険であり、民主主義を前進させていくためにどのようにデジタルを役立てるかを考えています。

デジタル技術を活用した様々な事例が書かれているのですが、日本の政治から見るともはや未来すぎることばかりです。ハッカソンやIT企業の誘致などデジタルを政治に浸透させているのはオードリーの功績でしょうか。

重複性の高い項目はAIにまかせて、多くをデジタル化していくことで人類はよりイノベーティブになるとオードリーは信じています。

日本にもある優れたシステム

本書の中で紹介されているものでオードリーが日本のシステムから学んだものがあります。RESASです(地域経済分析システム:リーサス)。エビデンスに基づいた政策をしているということを重要視するオードリーは、このシステムを参考に台湾版のTESASよりもすぐれたRESASから学びTESASが劣る部分を補完していく予定と言います。

resas.go.jp

ohtanao.hatenablog.com

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