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クリエイティブ・スイッチ:企画力を解き放つ天才の習慣 | アレン ガネット (著) | 2022年書評#23

 

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

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ひらめきとは本当にあるのか

本書はクリエイティビティについてどのようなアプローチがあるのか、ヒットにはなにか法則があるのか、ひらめきは突如落ちてくるのかについてまとめた本になります。

話はビートルズのイエスタデイから始まります。イエスタデイはひらめきから生まれたというエピソードが目立っていますが、実は夢で聴いたフレーズはサビの部分だけでその他のメロディーはとてつもなく長い時間をかけて作成されました。ひらめきから生まれたというキャッチャーなストーリーは実はそうでなかったわけです。

この本の著者はアレンガレット。トラックメイブンというマーケター向けソフトウェア会社を企業し、ヒットに法則があるのかをデータから導こうとしています。

Allen Gannett

本書は英語タイトルはThe creative curve(創造曲線)といいアレンはこの創造曲線のスイートスポットをどう見つけるか。見つけるために必要な4つの法則「大量消費の法則」「模倣の法則」「クリエイティブコミュニティの法則」「反復の法則」が大切と言います。

偉人たちについて

本書では偉人たちがもとから神童であったのか特殊な人であったのかというストーリーから始まります。

モーツアルトは地道な作曲活動を実施しピアノを引きながら曲を作っていたようです。14年間毎日ひたすらに猛練習をした中での作曲活動でした。

フランケンシュタインを書いたメアリーとパーシーは植物学者が死んだように見えても動き続ける微小動物を発見したというものを読み人間が生き返る話を書き始め、それが友達に好評であったために小説にしました。

ジョナサンハーデスという画家は未経験から一流の画家になります。彼のアプローチは画家になれるまで毎日絵を描き、さらにそのプロセスにおいて技術を磨くことに情熱を持っていたジョナサンは「アトリエムーブメント」というはやりの訓練手法をみつけ、サウスダコタにあるアトリエで勉強することにしました。

これは1万時間の法則という誰でも1万時間訓練すれば一流になれるという法則に対して目的意識をもった訓練で無いとその効果は薄れる、ということを教えてくれます。練習が脳を刺激し、脳は学習を通じて脳細胞を維持するために、多くの偉人は幼少期にむしろ特別な才能を持っていないことも少なくないようです。

創造曲線について

さて、創造を発揮するためには何が必要でしょうか。

ザイアンスの単純接触効果と呼ばれるものは接触回数を増やすことにより人が好きと錯覚していくことを研究結果として残しました。

一方で、絵画や音楽を数回見て好きと思う学生たちはそれを8回、32回と見る・聞くことによりだんだんと好きでなくなったという逆の効果も研究から見つけられます。

創造性を刺激するためには新しさとなじみのバランスが必要になります。

創造曲線のスイートスポットは左から2つめにあるような、好意度・なじみ深さのバランスが良い部分になります。右に行くと陳腐化してしまっているもの、左は隠れブームと呼ばれるなじみ深さが足りない状況です。

How to successfully create — my notes on the Creative Curve by Allen  Gannett | by Hsin-Yu Yang | UX Collective

このスイートスポットにあるものを作り出すために必要なものが最初に紹介した4つの法則です。

創造曲線の4つの法則

第一法則:大量消費

話はレンタルビデオ屋で働くテッドの話になります。テッドはレンタルビデオで働く映画好き。勤務時間の間に見れる映画を全部見ようと店舗にある映画を見つくします。そうするとテッドの映画評は客の間で評判になりテッドのコメントを聞き映画を選ぶ客が増えテッドがおすすめを見繕うなど人気になります。これはテッドが大量消費をし文化理解を身に着けたためです。

アレンは同じようにクリエイターへインタビューを行うと、多くのクリエイターは一日に3、4時間、置きている時間の20%を消費活動に費やしているそうです。

コナーフランタはフランスデジタル界の巨匠ですが、元はYoutubeを好きで見ていた少年でした。Youtubeを見る側だった少年は大量のインプットがあったためどのような動画が伸びるのか間隔を掴み、自らが動画を作る側に回ると多くの人気を得ました。

ひらめくための土台は大量消費から生まれるのです

第二法則:模倣

リーマンコンフィデンシャルの著者ソーキンはフランクリンメソッドを活用しました。フランクリンメソッドとは今まで成功したものを分析し同じ公式やパターンを真似するというものです。

ソーキんはリーマンコンフィデンシャル執筆にあたり、書店に行き売れている本を5〜10冊ほど購入し好きな部分と好きでない部分をリストしました。好きな本には数多くの切れ目や、場面の転換、息を飲むような物語があり、読みやすくリズム感のある本を書くように心がけます。

模倣を通じて効果の実証された枠組みの中で、新しいアイデアを加え自分のものにしました。

このヒットのパターンをブレークするということよりもこの制約の中で実行していくということがより創造性を生み出すことも多くのクリエイターからのインタビューでわかりました。クリエイターはこの制約を楽しみ創造をしています。

第三法則:クリエイティブコミュニティ

成功の背景にはコミュニテイを築いていることが挙げられます。このコミュニテイには4つの役割があり「一流の教師」「相補的なパートナー」「創作の女神」「卓越したプロモーター」がいることが大事であるといいます。

一流の教師がいることの重要性は①成約を教えること②フィードバックを通じて目的意識をもった練習を手助けすることです。これはなにか勉強する際に一人でするよりも学校やコミュニテイに入り目的意識を持った良いモチベーションで学習する大切さを思い出させます。

サンフランシスコのサウスオブマーケットはかつて荒廃した地区でありましたが、多くのクリエイターが住み、新興企業が多く生み出されました。どことなくかつての原宿のようなイメージですね。

相補的なパートナーも同じように、良いフィードバックや気付きをくれ、モチベーションを維持してくれるために大事です。

創作の女神はなにかヒントをくれる存在です。ケイシーネイスタットは今ではYoutubeで最も有名なクリエイターですが、彼の周りには多くの一流クリエイターたちが存在し、ケイシーへ創造のヒントを与えています。

プロモーターはあなたの仕事を認めてくれ、認知へと動いてくれる存在です。

第四法則:反復

本書ではベンアンドジェリーズのアイスの開発について書かれています。①コンセプト化②絞り込み③選定④フィードバックの反復的なプロセスを通じてヒット作を生み出しています。

これはハリウッドでも見られることと同様で、データを活用しヒット作の方程式を見出そうとしていると言います。

大統領選挙などでも同様に、データを活用した反復的な改善は多くのクリエイターが行っている。

この本を読んで

ひらめきという言葉はある種感動的でドラマチックである一方、自分に創造性が無いためにひらめかないというある種のネガティブマインドを作り上げてしまうようにも思います。

デザイン思考などでもありますが人は誰しもクリエイティブというマインドセットはとても大切で、特にそういった気付きはクリエイター側のほうが気がついている人が多いのではないでしょうか。

その中でヒットの法則を調べつつ、創造性の方程式化を試みたアレンはとても優秀ですよね。マーケティング会社をする上で一番の広告となり、信頼性も得られる本を執筆するのは中々難しいことのように思います。

大量消費、模倣、クリエイティブコミュニティ、反復を意識的にやることによって無意識にクリエイティブでいられる人たちに肩を並べられるというのは勇気が出る内容にも思います。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/39pYZ1q インビジブル・インフルエンス 決断させる力 Kindle版 ジョーナ・バーガー (著), 吉井智津 (著)
  2. https://amzn.to/3FNMKrZ ヒットの設計図――ポケモンGOからトランプ現象まで 単行本(ソフトカバー) – 2018/10/4 デレク トンプソン (著), 柴 那典 (その他), 高橋 由紀子 (翻訳)
  3. https://vimeo.com/29510470 Jonathan Hardesty’s 9 Year Journey From Novice To Master Painter
  4. https://amzn.to/3LhMpyJ 天才! 成功する人々の法則 ハードカバー – 2009/5/13 マルコム・グラッドウェル (著), 勝間 和代 (翻訳)
  5. https://amzn.to/3whCuVO Zoonomia - The Laws of Organic Life (Vol. 1&2) (English Edition) Kindle版 英語版 Erasmus Darwin (著)
  6. https://amzn.to/3NitepI フロー体験入門―楽しみと創造の心理学 単行本(ソフトカバー) – 2010/5/10 M.チクセントミハイ (著), 大森 弘 (翻訳)
  7. https://amzn.to/3wfk3kh リーマン・ショック・コンフィデンシャル 全2巻 完結セット 単行本 – 2010/10/29 アンドリュー・ロス・ソーキン (著)