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英国人写真家の見た明治日本 | ハーバート・G・ポンティング (著), 長岡 祥三 (翻訳) | 2023年書評#4

明治時代の鎖国解除から戦争に映るまでの大きな変化の時期に日本を訪れる外国人たちによる日本の記録に関わる本は読んでてとても面白く感じます。

今回読んだのは、英国人写真家のポンティングが日本を何回も訪れて当時貴重・高価・大きいカメラを日本津々浦々持ち運び撮りためた日本の写真とその記録についての本です。

「この世の楽園」との意味合いを込められたタイトルは著者が日本の風景に感動して大きなカメラを持ち運び、当時今とは恐ろしく比べ物にならないくらい過酷な移動も含めて全国を旅して、あまりにも今の様子と変わらない感動を味わっていました。

📒 Summary + Notes | まとめノート

京都の話

京都の寺や工芸品、保津川などについて事細かに書かれている本書を読んでいると、ポンティングがいかに詳しく日本のことを理解しており、さらには慣習や美観までも感じているのにはとても驚きです。

庭の美しさやセミの鳴き声について、暗闇の清水寺を歩いている時に日本人が感じている霊の気配などについても詳細に表現されています。これがまた驚くほど今の日本人の価値観と近いものがあり日本人の感覚がこれほどまで変化せずに伝わっていることに感動します。

ポンティングが最初に京都に訪れた時に、気を利かせた人力車の運転手は骨董品が並ぶ活気のある通りを見せてやろうと普段では通らない込み入った道を見せる配慮であったり、都ホテルの館長が様々な紹介で京都や日本について楽しませる「おもてなし」心もどこか今の日本人と通じるものがあります。

最もきれいな瞬間を目で見たい・写真に収めたいとして暗闇の清水寺を探索する話や、竹林で人を止めて写真を取っていると警官に見つかり罰金を払う話なども中々面白いです。

七宝師の並河の話や日本の工芸品をスペインの職人に見せて30分も拡大鏡を持って見入っていたみたいな話は、今のように物が簡単に輸出・輸入できない時代ならではの話で、美しいものに感動する心が世界共通であったのだと感じることができるエピソードでした。

保津川下りの話も、お気に入りの先頭の匠仕事に感動して、世界で一番匠に船を操ると書いており、その人でない船に乗ったら水浸しになった話はクスっとできる。

富士山の話

ポンティングは富士山含む日本の山に深く感動しており、浅間山阿蘇山の話も面白かったですが、富士山の話は抜群でした。

今も変わらないのは精進湖本栖湖から見る富士山がポンティングは美しいと感じていたようで、たしかにこの2つの湖から見る富士山は格別にきれいです。精進湖には西洋人が開拓した宿が当時からあり、僻地ながらもその美しさを開拓していた人が居たようです。

富士山登山の話も事細かに書かれています。今と同じで一年のうちに3ヶ月しか入山できなく、そのまた昔には女人禁制であったりしたようです。今のように5合目からではなく1合目からの登山ですがなんと1日で登りきれていたようです。

思いカメラを運ぶために人を何人も雇い、初めての登山では山頂で所望の景色が見られるため粘るために大量の食料を荷物に持っていきます。真っ暗になる中やっとの思いで頂上の小屋へ到着し、天気が良ければ朝日を見たいからと伝え寝ると次の日から大雨で数日寝っぱなしになります。やっと少し落ち着いて来た日があり日の入りを見ていたら雲海が上がってきて霧に飲み込まれ遭難しかけながらも、荷物運びに来ていた強人に助けられます。

また違うときには下山の時に山中湖がきれいに、近くに見えたことから道が無い山中湖へ向かう方向に行くぞと良い、同行していた荷物運びなど反対する中進むと遭難しかけます。夜になり雨が強まり雷がなる中なんとかもう歩けない状態になるまでに道までに出ると馬車を運良くみつけ近くの宿まで移動。宿の人に50年見ていてそんな人ひとりも見たこと無いと、この判断に呆れられたそうでした。

ポンティングについて

その他にも日本人女性の美しさについての章も面白く、女性に魅了される感覚はこの時代の人たちにとっても同じだったのだと発見でした。宮島や遠くからの富士の景色などの話もとてつもなく面白くもっとポンティングの情報について無いのかと調べていたらYoutubeでPontingの紹介されていました。

www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=rgNepft-jHY

ビゴーの作品と同様で、ポンティングの本書の原著「In Lotus-Land Japan」もデジタル・アーカイブされておりすべてこちらで見ることができます。この写真たちがまた恐ろしく美しく、ポンティングが絶妙に構図を決めて撮影する様子も映し出されていることに感動します。ポンティングが現代にいてデジタルで写真が残せることやドローンで自由に高さの制限もなくせることを知ったらどれほど喜ぶでしょうか。

archive.org

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感想

1910年にロンドンで記された著書は時代を超えても、多くのことが変わらないということを教えてくれました。もちろん生活様式や、不憫さは大きく変化しましたが、富士山を見て感動する心や、京都の職人芸に感嘆すること、女性の奥ゆかしさのある魅力に癒やされることなど今も変わらないことが多いように思います。

ポンティングが詳細に日記を書き付けていたことやその観察眼が素晴らしすぎますし、最高の景色を見たいとそのために全力で時間もお金も使う様子は感動でした。

今これだけリッチに記録できる世の中でも物事を忘れていくので、今年は日記またはカレンダーにしっかりと記録していくことや、きれいな作品を撮ることをよりよくしていきたいと感じました。また記録した写真や動画をまとめていき作品を見せるようなこと、旅行記などもつけていきたいと思いました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3vBibRK 明治日本の女たち (大人の本棚) 単行本 – 2003/9/1 アリス・メイベル ベーコン (著), Alice Mabel Bacon (原著), 矢口 祐人 (翻訳), 砂田 恵理加 (翻訳)
  2. http://www.aobane.com/books/232 チェンバレン / メイソン 『マレーの日本旅行者ハンドブック』