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地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる | ビル ゲイツ (著), 山田 文 (翻訳) | 2023年書評#9

📒 Summary + Notes | まとめノート

ブレークスルーエナジーという環境問題を解決するための取り組みを支援するファンドを運営するビル・ゲイツ。現在多くの企業に投資を行い、さらにメディアも運営開始しました。

breakthroughenergy.activehosted.com

GatesNotesでは昔から環境問題に関わる話を取り上げ、読書したおすすめ本を紹介しております。

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前々から温暖化問題に関する発言が多く、ついには地球のためにできることを本にまとめて環境問題の理解促進に努めた本がこの本になります。

温室効果ガスは510億トン排出されており(CO2は350億トン)ビル・ゲイツはこれを0にしなければならないといいます。

誰がそんなに排出しているのかというと中国とアメリカが殆どで、それに続いて経済発展のインド、その他はGDPの高い先進国というような図式になっています。

ビル・ゲイツは勤勉で貧困問題、公衆衛生の解決に長年取り組んでいましたが、環境問題の申告さに気づいてから環境問題にも熱心になります。

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その中で彼がたどり着いた確認は3つ

  1. 気候大災害を防ぐには、ゼロを達成しなければならない。
  2. 太陽光や風力といったすでにある手段を、もっと早く効果的に展開する必要がある。
  3. 目標達成を可能にするブレークスルーを生み出し展開しなければ。

 

 

上海の発展の様子:

なぜゼロなのか

地球温暖化問題で中々難しいのは、真実が見えにくいところです。CO2の温室効果は確認されているものの、それそのものが地球温暖化に結びついていないという意見もあります。ICPPでほぼコンセンサスにはなってきているので、さらなる解明には今後期待したいです。

ビル・ゲイツが様々な文献や著名人の発言から、CO2排出が地球温暖化に寄与していると考えています。ゼロにする必要がなぜあるかというのは、わかりやすくこのまま排出量が増え続ければ温暖化のスピードが早くゼロに近づければそのスピードは落ちます。

原理として、CO2は太陽光は通すものの熱は宇宙圏に放射するのを防ぐために太陽光は地球を温めて地球は熱を外に放出できないために大気は温められ結果温度が上がります。

分からないことはそれにより地球がどんな反応をするかです。雨が減り土砂降りになるというのは一つの可能性ですし、温度が2度上がることで地球環境にどのような変化が起こるのかはわかりません。問題はこの問題に対応するために、変化を緩やかにすること、可能であれば変化を起きないようにすることです。そのためには大気に排出されるCO2の量をゼロにすることが求められます。

CO2が排出される経済活動は山程あります。穀物の肥料を作る際、化石燃料を使う際、セメントを利用する際、私達の経済発展の背景にはいかにCO2を排出するかが密接に結びついています。

バーツラフシュミルの本では人類がいかにエネルギー源を利用してきたかまとめられています。エネルギー源は元々草木を燃やしていた所から石炭→石油→天然ガスと移行してきました。これは基本的に新しいエネルギー源のほうが経済合理性が高かったからであり、地球環境のことは考えられていません。また、エネルギー源の移行には60年間など長い期間がかかります。コンピューターの世界で言われるムーアの法則とは全く異なる世界観です。

さらに政府の規制は時代遅れでありであり、気候変動に対するコンセンサスも難しい。そうなるとどうしてもスピード感は遅くなり、正しい方向へも進みにくいという現状でした。

ビル・ゲイツがうまくまとめている気候について論じるときの5つの問いがあります。

  1. 510億トンのうちどれだけなのか
  2. セメントはどうするつもりか:ものをつくる31%、電気27%、など
  3. どれだけの電力なのか
  4. どれだけの空間が必要か:1平方メートルあたりの発電容量
  5. 費用はいくらかかるのか

環境問題の解決策を考える上で、どの程度のCO2を減らすのか、それは中所得国が払えるようなシステムであるのかなどより具体的にイメージできるために5つの問を念頭に入れておくとよいでしょう。

5つの課題(電気を使う、ものをつくる、ものを育てる、移動する、冷やしたり温める)

ビル・ゲイツは5つの課題に切り分けて課題を示していきます。

電気を使うのはわかりやすい所で、電力発電がまず根底にあります。電力を発電する時に最も一般的なのは化石燃料ですが、これは最も発電効率が良く、単位面積あたりの発電量も多いです。太陽光などは代替手段の発電法ですが、最も発電効率が悪く単位面積あたりの発電量もかなり悪いものになります。

近年福島の問題もあり原発の懸念もあります。ただしビル・ゲイツ原子力発電所に関わる死者数は他の発電と比較してもワット数あたりの死者数は低いと見積もっています。その他、核融合、地熱洋上風力などの技術もありそれらへの投資の重要性を見ています。

発電と同様に大切なのは蓄電です。日本のように台風が頻繁に来る地域では自然エネルギーの発電であればそれをすべて止めて都市が機能する電力を維持するために2、3日分の蓄電が必要となりますが、残念ながら現時点でそのような蓄電技術はありません。異なる地域での発電をしてそれを送電すれば良いとの考えもありますが、送電が伸びればロスも増えてしまいます。

次にものをつくる際のCO2です。セメントは現在多くの都市に仕様されており、シアトルでは湖にセメントを浮かべて橋を作るなどしています。

製造におけるCO2排出をゼロにするためには次のステップが必要です。

  1. 可能なかぎりすべての工程を電化する
  2. 脱炭素化された電力網からその電気を獲得する
  3. 残った排出量には炭素回収を用いる
  4. 資材をもっと効率的にりようする

ものを育てる排出は人口増加が影響します。人口は増え続けているために食料がより必要となりそのため肥料のCO2排出量は増えてしまいます。計算するとアメリカ人の排出量をまかなうだけの木を植えようとすると、地球の土地の半分もの面積が必要となってしまいます。

移動に関わる排出量対策は、移動の頻度をへらすこと、排出量の少ない移動手段にすること、燃料を効率的に使うこと。電気自動車への移行はとても有効ではありますが、船や飛行機、その他人やものの移動を電力に完全移行することは難しく、代替燃料もコストが非常に高くつきます。

温めたり冷やしたりすることに対しては電気を使うよりもヒートポンプの活用などが有効です。現在商業ビルでも低電力で運用が可能であるビルができるなど徐々にシフトしてきています。

誰が何をするのか

排出量を抑えるために、対応していくために個人での活動も大切ですが、ビル・ゲイツは政府の支援がとても重要であるといいます。そもそもクリーンエネルギーへの投資はかなり難しく多額の資金がかかるため投資対効果が見込みにくい側面があります。

そういった際には政府による支援で希望が低いイノベーションにも投資をする必要性が生じます。

感想

以前、人新世の資本論を読んだ際にも様々な角度から環境問題の重大性を学びました。そちらでは脱成長やコミュニズムというマインド面での対応が挙げられていましたが、ビル・ゲイツ的アプローチは経済発展をしながらどう食い止めていくかという方法です。

全体として環境問題の重要性からはじまり、何が原因であるのか、具体的にどの程度の対応が必要で現実的な解決策があるのか、技術があるのかがバランスよくまとめられていました。

ビル・ゲイツがセメントに対して重要視しているのは以前から目にすることがありましたが、何故そう考えるのかについても書かれており非常にフェアな内容であったと思います。

数々のクリーンイノベーション技術にも投資をしており自身が得た富をこのような活動へ利用し広めていく姿は世界トップレベルの資本家として尊敬したいです。

環境問題系の話題は流行っては廃れてという繰り返しの歴史でした。今回ほど危機が叫ばれた時代は過去になかったと思います。今後この分野がどう発展していき、人類の生活に変化をもたらせていくのか注目したいです。個人レベルでもできる取り組みをしていきたいと思います。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3XJKoSn Weather For Dummies (English Edition) Kindle版 英語版 John D. Cox (著)
  2. https://www.hayakawabooks.com/n/n178c58440d49 いま動かなければ、手遅れになる。20年ぶりの著書『地球の未来のため僕が決断したこと』でビル・ゲイツが明かす真実 34 Hayakawa Books & Magazines(β) Hayakawa Books & Magazines(β)
  3. https://amzn.to/3ZP12BU Infinite Jest (English Edition) Kindle版 英語版 David Foster Wallace (著)
  4. https://amzn.to/3ZNHyO5 エネルギーの人類史 上 Kindle版 バーツラフ・シュミル (著), 塩原 通緒 (翻訳)
  5. https://amzn.to/3XJOM3N エネルギー400年史:薪から石炭、石油、原子力再生可能エネルギーまで Kindle版 リチャード・ローズ (著), 秋山 勝 (翻訳) 形式: Kindle
  6. https://amzn.to/3IWmgbe 持続可能なエネルギー―「数値」で見るその可能性 単行本 – 2010/10/28 デービッド J.C.マッケイ (著), 村岡克紀 (翻訳)