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ビル・ゲイツ本を読んで 紙ストローや脱レジ袋の効果など | 2023年雑記#1

最近仕事でもすっかりLCA(ライフサイクルアセスメント:主にはCO2排出量が主眼点)に関わる資料を読んでおり、最近の読書でも環境に関わる本を読むことが多くなりました。

ビル・ゲイツの地球の未来のため僕が決断したことはとてもバランスの良い本であり、あらためて環境に対して考えるきっかけになりました。

本書では気候変動に関して、つまりはCO2含む温室効果ガスの発生・大気中への流出に関して書かれております。(プラスチックの海洋汚染などは別議論)

ohtanao.hatenablog.com

紙ストローは環境問題に対して有効か?

日々の生活で目に移る変化としては紙ストローの導入がありました。実際の効果はどんなところだろうと調べてみると興味深い結果がありました。

テトラパック社での評価事例

紙容器に携わるテトラパック社が行ったLCA調査の結果によると、気候変動へのポジティブな結果のようでした。材料、製造などでのCO2排出はプラスチックストローより少なく、効果はありそうです。(ただしLCAはその他の項目から総合的に判断するため、全体としての優劣は名言しにくい部分があります)

gurilabo.igrid.co.jp

こちらの調査は、LCA評価第三者機関として最も有名なThinkstepが行ったものであり、詳細のレポートは以下のリンクにありました。

https://www.tetrapak.com/content/dam/tetrapak/publicweb/gb/en/sustainability/documents/LCA-paper-plastic-straws.pdf

Thinkstepは利用したことがあるのですがかなり中立に検証結果を出すため、こちらの結果が紙容器メーカーの意向を加味した結果では無いように感じます。

脱レジ袋は効果があるのか?

次によくある議論としてレジ袋廃止は効果があったのか?という話です。こちらはプラスチック循環利用協会が出しているデータがあります。

https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf6.pdf

結論としては数十回利用すれば効果があり、それはマイバッグの素材などに依る。という結論でした。ただし、洗濯などすれば効果は薄れたり、買い換えると差し引かれます。個人レベルとして注意するのは3点ほどに感じます。

  • マイバッグを使うのであれば30〜50回利用(2回/1日利用であれば一ヶ月以上)
  • 頻繁な買い替えは控える(買い換えるのであれば洗濯して利用)
  • 無い時はレジ袋をもらいできれば複数回利用、またはゴミ袋活用

環境問題(気候変動が主)に対してできることや最近のこと

再利用の動向

上記したプラスチック循環利用協会の資料によるとレジ袋の利用後の過程が書かれていました。マテリアルリサイクルが実態としてそこまで多いのか少し疑問ではありますが、主には焼却施設へと向かうことが殆どになります。

焼却時にはどのようになるのか調べてみると、大きく分けて「電力源にする焼却施設」「電力源にしない焼却施設」があります。電力発電施設を併設した焼却施設ですと最近建設完了に近づいている目黒区の清掃工場があります。

www.zaikei.co.jp

あまり精査はできていないのですが、ごみを電力源に利用することで電力利用の化石燃料が減るとは思いますので、このような設備が充実してくれることは有り難く思います。

グリーンプレミア

ビル・ゲイツが「僕が地球の未来のため決断したこと」でも書かれているのですが、グリーンプレミア(≒環境に優しい代替材料のコスト増加分)という考えがあります。

とても便利な指標だなと感じるのは、コスト増加分を可視化できるために費用を払う理由が明確になることです。日々の買い物や(政府や行政の)投資判断においてグリーンプレミアを考慮して気候変動に優しい選択をするのも良いでしょう。

大事なのは大気に排出しないこと

ビル・ゲイツの本を読んで改めて認識した点は温室効果ガスを大気へ放出しないことの重要性です。プラスチック製品はその中に多くの炭素を含み、電力やガソリン利用のときのようにCO2を待機中へ排出するというよりは、中に閉じ込めた状態にあります。(それでも製造時に半分ほどは大気中へ放出)

一方で、セメントや鉄製品はその中に炭素を多く含まないので製造時にCO2を多く排出するために材料製造・加工・利用時に多くのCO2排出が起こってしまいます。

植物もプラスチックと似た側面があり、大気中のCO2を植物内に留め大気のCO2を減らします。燃やしたりすれば大気にCO2を放出することになるのですが、焼却施設のような限られた空間内での発生であればCO2固定化技術を用いて回収することも可能です。

ohtanao.hatenablog.com

プラスチック製造に関しては、CO2を発生しない電力源を用いた工場で植物由来の材料を用い、どうしても排出してしまうCO2に関しては回収技術を用いれば排出がマイナスになることもできます。利用期間の短いレジ袋や容器などには植物由来のプラスチック製品、保管目的のあるものに関しては石油由来のものなどうまい配分もありそうです。

ただし、利用期間の短い製品に関してはコスト増はかなりのインパクトですし消費者もそのコスト増加分を喜ばないと考えるとグリーンプレミアの考え方で政府などが補助して活用を促すなどの必要性がありそうです。

環境問題取り組みへの難しさ

中々難しい問題はこうした環境政策へ流れた資金がうまく活用されないケースです。資本主義の世界なので、Web3などを見ていてもそうですが夢を語ってお金が集まるフェーズの物事には悲しいながらよくないビジネスが多く見られます。

www.asahi.com

仮に不正目的でない人たちへの投資をしても、ビル・ゲイツが著書内で語るように成功するイノベーションはごくわずかです。非常に賭け要素が強い資金活用になってしまう側面は抜けきれませんし、コストが高いためにビジネスとしても補助や投資金が無いと成り立ちが難しいように思います。

www.technologyreview.jp

環境影響の多角性(CO2排出だけでなくその他影響因子の考慮)、原因・効果の名言難しさ、現行からの高コスト化、資金の不正利用、イノベーションの確率、ビジネスとしての成り立ちにくさ、など改めて環境問題の根深さを感じます。

その他参考:

blog.goo.ne.jp

fortune.com

ohtanao.hatenablog.com

ohtanao.hatenablog.com

ohtanao.hatenablog.com