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グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業 | ハーマン・サイモン (著), 渡部 典子 訳 (その他), 上田 隆穂 (翻訳) | 2023年書評#18

日本にも縁があるハーマンサイモン氏著の隠れたチャンピオン企業を読みました。

ハーマンサイモン氏はコンサルティング会社のサイモンクチャー&パートナーズの会長を努めており、世界各地に拠点を持つビジネスをしております。

その中でもプライシングについて専門性を持ち価格の掟などの著書は多くの人々に読まれています。

本書はグローバルに活躍するあまり知られていない優良企業(チャンピオン企業)についての調査についてまとめられており、どんな会社がありどのような特徴を持っているかがまとめられておりました。

概要については2012年当時の寄稿で書かれており、こちらのより詳細に紹介しれいるものが本書となります。

www.rieti.go.jp

RIETI - Hidden Champions of the 21st Century

www.rieti.go.jp

コラム・寄稿「21世紀の隠れたチャンピオン」

📒 Summary + Notes | まとめノート

隠れたチャンピオン企業とは

1983年にセオドア・レビット教授によるハーバード・ビジネス・レビューの記事で広められた「グローバル化」という言葉から、その頃に企業がグローバルに活躍し始めます。

ドイツ出身のハーマンサイモン氏はそのなかでドイツの会社がグローバルに活躍しているのは中小企業が多いことに注目しました。「あまり知られていない」隠れた優良企業たちです。他の国でもどうような企業があるのか調べると、日本や韓国、アメリカなどでも同様に隠れたチャンピオン企業が見つかります。

有名な企業がフォーチュン500などあげられるなかで、2009年に日本企業は71社もありましたが、そのなかで輸出高は43%と、フォーチュン500の中に37社しか載らないドイツと比較して低くありました。そこでドイツが中小企業に強いことから、日本の中小企業の参考になるように隠れたチャンピオン企業の特徴をまとめることになります。

隠れたチャンピオン企業の特徴は3項目(2012年当時基準)

  • 世界市場で3位以内に入るか、大陸内で1位である。
  • 売上高が40億ドル以下である
  • 世間からの注目度が低い

本書が書かれた当時に輸出の強い国はどこであるのか?と聞かれた時に殆どの人は中国、アメリカ、日本、ドイツという回答をしていたのですが、国民1人あたりの輸出額はドイツが圧倒的に高く、韓国、フランス、イタリア、イギリス、スペインなどが続きます。

隠れたチャンピオン企業の調査と続けると、どこの分野にそのような企業があるのか、いつ創業されているのか、どこに満足度があり選ばれているのか、など分かってきました。

成長と市場でのリーダーシップ

市場リーダーとは何であるかという問いに対して、「売上高が最大である」「販売量が最大である」という回答が多く、また技術面や品質面、市場における認知度などをあげられます。多くのチャンピオン企業は自社が業界標準を規定したとの認識もありました。

隠れたチャンピオン企業は、目標を掲げ、売上高は過去10年でおおよそ2倍以上となり成長率が高いものでした。

市場の定義と集中戦略

隠れたチャンピオン企業の市場は比較的小規模な市場に見られます。ウィンターハルターガストロノームは狭い市場を深く追求し、その拡大に合わせて他の市場にも広がりを見つけていくという、集中して深くという戦略を利用していました。

スーパーニッチ産業に隠れたチャンピオン企業が居ることが多くシェア70%以上を持つなどのケースもあり、市場でのリスクは増すが、競合のリスクが低い場合が多い結果でした。

グローバル化

隠れたチャンピオン企業はニッチ産業が多い一方で、そのためにグローバル化をしている場合が多いです。そのために、海外に子会社を持つ場合が増えてきました。

また、当時の世の中は特にグローバル化に伴い1人あたりの輸出高が飛躍的に増えておりました。ニッチで居ながらも市場を拡大できた理由にはグローバル化の世の中の流れがあったためですね。

グローバル化により、魅力的な市場をターゲットにすることもできたため、中国やインド、ラテンアメリカなどもニッチ産業でありながらも市場拡大をすることができました。

顧客、製品、サービス

隠れたチャンピオン企業が重要視していることは顧客との長期的な関係が最も高く、顧客が要求することは製品の品質が最も高く求められていることに挙げられました。隠れたチャンピオンは売上高に占める顧客上位5社の割合は高くなく、依存度が低い状態にもあります。

値段に関しては、価格競争をしないことが多く、一般的には市場の平均よりも高い値段設定にされています。

イノベーション

研究開発費への割当は高く、対売上高比率では2倍ほどに及びます。特許数も比較的多く、売上高に占める新製品の割合も多いです。隠れたチャンピオン企業では市場のニーズ取得と技術を同等に大切にしており、ニーズの収集も行っている傾向があります。

イノベーションにおいて必要なのは予算よりもリーダーであるために、連続性を持って継続的に改善する仕組みつくりをしており、更にそのプロセスに顧客とのコミュニケーションを行っていました。

競争

前述したように隠れたチャンピオン企業は寡占市場であることが多いために、強い競争が無い分野で商売をしています。6社より少ない競合が居る市場に居ることが多く、20社以上の競合が居るケースはかなり少ないです。

主に成果とイノベーションでの競争はありますが、価格での競争をすることは稀になります。自らが標準の設定をすることで競争を優位にすすめることが多くあります。

資金調達、組織、事業環境

隠れたチャンピオン企業は急成長にも関わらず、財務状況は健全であり、十分な収益性があります。伝統的な銀行融資の必要性は少なく、株式上場していない企業も多いです。

組織は分権化することが多く、顧客グループに基づいた組織ユニットで構成されます。またコア技術の部分に関してアウトソーシングすることは少なく、一方でコア技術以外の部分に関しては積極的にアウトソーシングしています。

従業員

グローバル化に伴い、隠れたチャンピオン企業でも外国市場での従業員が増えております。企業によっては外国人従業員比率が70%以上などのケースもありました。

従業員は能力が高いケースが多く、大卒者比率も高く、複雑さに対処できる人材を雇用しています。

面白かった点には、隠れたチャンピオン企業は人数分以上に仕事がある状態を確保しているために、非生産的な活動を最小化し、きわめて効果的に生産性を高める要因となっているようです。

また、隠れたチャンピオン企業の本拠地は地方にあることが多くその割合は約2/3に及びます。

リーダー

隠れたチャンピオン企業は同族経営のケースが多く、減ってはいる一方で2/3の割合となります。CEOは非常に長い期間任務することが多く、若い年齢で就任することも多々あります。

経営陣の国際化はグローバル化への取り組み開始時は行われていないことが殆どで、多国籍化が起こった後で経営陣の国際化が起きます。

経営の継承は大きな課題であり、後継者探しが隠れたチャンピオン企業の弱い部分でもあります。

隠れたチャンピオンからの教訓

  1. リーダーシップと目標
  2. 好業績をあげる従業員
  3. バリューチェーンの深さ
  4. 分権化
  5. 集中戦略
  6. グローバル化
  7. イノベーション
  8. 顧客との緊密な関係

日本の隠れたチャンピオンの例

それでは、具体的にどんな企業が紹介されているのか?といいますと下記のような企業が隠れたチャンピオン企業として挙げられていました。

2012年の株価から現在の株価を見てみると、殆どが2倍以上になっていることから見ると、結構理にかなっている指標であり、さらに時代の変化に応じて成長を続ける企業であるというように見えます。

もちろん10年先の未来予測はできないですし、市場規模の変化に応じてどうしても規模が縮小される企業があるとは思いますが、ちょっとびっくりするレベルで成長している企業も含まれており株式投資の側面でも非常に魅力的な見方に見えます。

印象的な言葉

船を建造したいなら、木材を探し、任務を与え、仕事を配分するために男たちを集めるのではなく、彼らに広く果てしない海への憧れを教えよ - サン・テグジュペリ

感想

本書を読むまで知らなかったのですが、ハーマンサイモン氏の他の本も読んでみたくなる興味深い内容でした。分析眼が素晴らしく、グローバル化に伴う輸出の増加、そこから国民1人あたりの輸出額調査し、ドイツにて中小企業が多いことを知り、隠れたチャンピオン企業という視点が感動しました。

そこからの分析結果からあげられる特徴を持つ企業が今現在でも活躍し、多くは成長をしていることを見ると、10年前の分析なのに企業文化や戦略としての大切な部分はあまり変化していないのだろうと感じました。

それにしても、日本の隠れたチャンピオン企業群が挙げられており、当時の株価と今の株価を比較したところ、浜松ホトニクスなどは5倍程度になっており衝撃的です。悲しいのが大学時代に浜松ホトニクスと付き合いがあり、いい商品を持つ会社だと知っていたのにもその時点で株購入していなかったことでした笑

隠れたチャンピオン企業という考え方は、株式投資の観点で活用したい見方になり勉強になりました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3IxFfHt 隠れたコンピタンス経営―売上至上主義への警鐘 (トッパンのビジネス経営書シリーズ) 単行本 – 1998/3/1 ハーマン サイモン (著), 広村 俊悟 (監修), Hermann Simon (原名), 鈴木 昌子 (翻訳)
  2. https://amzn.to/3Icwa6C 価格の掟 単行本 – 2016/10/13 ハーマン・サイモン (著), 上田 隆穂 (翻訳), 渡部 典子 (翻訳)
  3. https://cs2.toray.co.jp/news/tbr/newsrrs01.nsf/0/5164A9081F576837492583530030E03A/$FILE/sen_145_01.pdf どうして日本はドイツに後れをとったのかもう1つの輸出大国ドイツの強さを探る
  4. https://ja.wikipedia.org/wiki/断続平衡説 断続平衡説
  5. https://amzn.to/3EnMpwr 新訳 事業の定義―戦略計画策定の出発点: センリャクケイカクサクテイノシュッパツテン 碩学叢書 (碩学舎) Kindle版 デレク・F エーベル (著), 石井 淳蔵 (翻訳)
  6. https://amzn.to/3KjKMDZ コア・コンピタンス経営: 未来への競争戦略 文庫 – 2001/1/1 ゲイリー ハメル (著), C.K.プラハラード (著), 一條 和生 (翻訳)
  7. https://amzn.to/3IB0JEp トライアド・パワー―21世紀の国際企業戦略 (講談社文庫) 文庫 – 1989/8/1 大前 研一 (著)
  8. https://amzn.to/41a4o34 マーケティング発想法 単行本 – 1971/1/1 セオドア・レビット (著), 土岐 坤 (翻訳)
  9. https://amzn.to/411MvUl 競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか 単行本 – 1985/12/1 M.E.ポーター (著), 土岐 坤 (翻訳)
  10. https://amzn.to/3IfoNeI 国の競争優位〈上〉 単行本 – 1992/3/1 マイケル・E. ポーター (著), Michael E. Porter (原名), 土岐 坤 (翻訳), 小野寺 武夫 (翻訳), 中辻 万治 (翻訳), 戸成 富美子 (翻訳)
  11. https://amzn.to/3EjI9Os リーダーはなぜリードできないのか (1977年) - – 古書, 1977/12/1 ウォレン・G.ベニス (著), 千尾 将 (翻訳)