恥ずかしながらあまり違いを理解していなかったお寺・神社について紹介されている本を読んでみました。
読んでみると起源や崇拝対象の違いなど面白いものが多く、一日の過ごし方やどんな人がその職業へとつくのかなど面白い部分も多くありました。
本書に登場するお寺・神社のリスト
📒 Summary + Notes | まとめノート
神社とお寺の比較
神社とお寺の違いで決定的なものは前者は日本固有のもので、後者は外来宗教のものであることです。日本は山や草木、巨石など万物に神が宿るという考えがありました。精霊崇拝や祖霊信仰などが神道の基礎であり、平安、鎌倉、江戸と時代の変化と共に神社の形態も幅広くなります。一方でお寺は仏教が由来であり南都六宗から平安期になると天台宗と真言宗が開かれ平安仏教となり、念仏を唱えれば成仏でき極楽浄土に行けると説いた浄土系など派生していきます。
神社 | お寺 | |
---|---|---|
入り口 | 鳥居 | 山門 |
崇拝対象 | 鏡、山など | 仏像 |
建築構成 | 鳥居、参道、本殿など | 山門、僧坊、食堂など |
聖職者 | 神職 | 僧侶 |
守護役 | 狛犬 | 仁王像 |
建築様式 | 神明造 | 和様・新和様 |
お参りのしかた | 二礼二拍手一礼 | 合掌し頭を下げる |
神社は豊作祈願や収穫祭などの記念祭や新嘗祭が今でも行われており、仏教は6世紀に蘇我氏が仏像を祀ったものが寺院の起源となり聖徳太子が世の中幅広くに広めました。神道は古事記や日本書紀などが最重症書物でそれぞれの土地や氏族の守り神とされます。9世紀に国家による保護から腐敗した奈良仏教を刷新したのが最澄と空海であり、修行から生き方を見つめ直すものとなりました。
平安時代には菅原道真が太宰府に流されると都で天災が相次いだために彼の霊を祀る社を建て、これが北野天満宮でした。人々は極楽浄土を目指し、念仏を主軸とした浄土教が流布し熊野三山は多くの人々が訪れる熊野詣の目的地となります。
それぞれのルーツ
神話の起源は古事記、日本書紀などにあり、古い伝承などであるために事実かどうかは定かでないものや説明がつかない不思議な世界観も多くありました。天皇家の正当性を証明する要素も多く含むそうです。アマテラスやイザナギ・イザナミの物語、ヤマタノオロチやオオクニヌシなどが有名なエピソードにあります。
仏教はブッダがルーツになります。ゴータマシッダールタは裕福な過程で育ち3人の妻と多くの子宝に恵まれる一方で29歳にて出家。人間はみな老い、病にかかり、死にゆくものなどの苦しみを知ります。アーラー仙人からは煩悩を捨て、ものに執着せず生きることを学び、ウッダカ仙人からは無念無想の境地を目指すことを教わります。6年に及ぶ苦行でも悟りは開けず極端に走ることの愚かさに気づき中道の大切さを知ります。35歳で悟りを開いたブッダの教えは、当時台頭していたバラモン教をも飲み込む勢いで広まります。三法印、諸行無常、涅槃寂静、師匠対、八正道などのキーワードがあります。
ブッダの入滅100年後の集会で理念の違いから分裂が起き、上座部仏教と大乗仏教に大きく大別されあらゆる人を救済しようとした大乗仏教で有名なのは般若心経です。般若経が600巻に及ぶ膨大なもののエッセンスを262文字にまとめたものが般若心経であり有名なフレーズは「色即是空空即是色」でしょうか。
アートとの繋がり
宗教には多くの美術要素が組み込まれ、現代では杉本博司さんなど宗教美術を多く扱われています。ニューヨークに渡り写真家などを経て古美術に出会い、古美術商となります。
神話に登場するキャラクターを形どった神像や塔、容器など祀られものはアート要素を生み出しました。また寺社の美術収集は後世に伝えるべき文化を残すという意味も強くふすまや屏風などに記録された物語なども描かれていきました。仏像も仏の教えが派生していく中で、異なる形の仏像が作られ教えの広まりを残していきます。
感想
生活していると地域にあるお寺・神社、また旅行先にあるものも含め日本人に馴染みのあるテーマでありましたが、いまいち違いやルーツについてよくわからないまま気が向いたら赴き、手を合わせて願い事をするというようなことをしていました。
こうして違いや成り立ちについて読み物を読んでみるとその土地や時代についての文化をまとめられている美術館や博物館的要素が多く含まれる場所であるのだなと感じます。
ときには政治や権力と結びつき、ときにはそこから切り離されたり禁止されたりと時代の変化や思惑に左右されながらも今も形を残しているというのは改めてすごいなと思います。
日本書紀や古事記なんて名前は聞いたことあるものの中身はあまり知らず、小さい頃に聞いたことがあるような日本昔話もよく考えれば神話的な要素があったような気もします。
何かに縋ったり、祀ったりなんて非科学的ななんて思うこともある一方で何かを祀ることによりその土地へ行くきっかけになったり人々が集う理由であったり、祭りというエンターテイメントを起こしたり、また文化を伝承していくなど大きな役割もしていたのでしょう。
歩いて移動して、紙や伝聞で物事が伝えられ、カメラもスマホも無い時代においてもこのような物事があったのは驚きですが、それがためにより神格化された側面もあるように感じます。
リストしたお寺・神社にはまだまだ行ったことが無い場所があるので、これからの楽しみに残しておき訪れてその土地々々の歴史や文化について知れたらと思うと楽しみです。