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キーエンス解剖 最強企業のメカニズム | 西岡 杏 (著) | 2023年書評#44

圧倒的な粗利80%を基準とする高付加価値企業のキーエンス時価総額3位に位置し、給与ランキングでも目立つことが多いキーエンスについて営業や企画、また成り立ちからまとめられているキーエンス解剖を読みました。

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

理系の方であれば分析・解析系の装置や製造ラインでの品質管理システムなどでキーエンス製品を使ったことがある人が殆どではないでしょうか。ラボレベルの話で言うと分析・解析機器は職人的使い方をすることが多い中でキーエンスの製品は使い方も簡単であり結果の分析もわかりやすく誰にでも使いやすく扱いやすい製品ばかりでした。

また、企業に入ってからは営業のアクションが早く、即納文化があるためにキーエンスを選ぶ理由が多くあり、わかりやすく役に立つものばかりでキーエンスが売れる理由も感じられました。

なぜこのような違いを生み出せるのかを見れる面白い本でした。

①営業:「ロープレ」「性弱説」「外報」「ハッピーコール」

②企画:「付加価値の付け方」「企画基準」

③人事:「一人ひとりが社長」「フラット文化」

④成り立ち:「飛び込み無し」「接待なし」

営業

キーエンスファブレス企業ということもあり営業の凄さが語られることが多いように思います。キーエンスの営業習慣として「他にお困りの方はいませんか?」とつながりのある人の周辺で困っている人が居る人が居ないかを挨拶程度に聞き困りごとがあればコンタクトするそうです。

困った時にすぐにコンタクトがあるというのがキーエンスでありこの速さが何よりも違いを生み出しているように思いました。代理店を挟む他企業と違い自社製品を知った営業が直に困りごとを聞いてくれて解決方法を提示、見積もりもすぐで契約当日に機器発送をする。

営業内で情報はセールスフォースで管理し、どこの製品から移り変えたのか、成功するアプローチや各コミュニケーションの状態も社内でシェアしものすごく高い透明性が社内であると言います。

商談は「ロープレ」と言われる商談の練習を毎日上司とこなし、どういった説明が良いのか常にフィードバックを受けやりとりの最適化をします。アポは一日5件入れないと外出できず、外報は1分単位で記録。そしてその記録が正しくあるかETCや駐車場のレシートなどで確認し、さらには内部監査でその情報を抜き打ち検査するそうです。

お客さんとの商談は上司が「ハッピーコール」と呼ばれる電話フォローで商談の様子を確認し良くないところがあれば修正するようにしています。

営業は工場や担当者レベルともやりとりするために、ニーズの調査もできニーズが20、30件など貯まるとそれが企画へと繋がります。また他部署へのアシスト的情報提供に対しては報酬制度もあるために、金銭的報酬があるために助け合うモチベーションも生まれます。

企画

キーエンスの商品開発で大事なのは付加価値を上げることにあります。原価コントロールももちろん大切なのですが利益率を高めるのは付加価値を上げるしかない、というのがキーエンスの視点です。ただし原価を下げる努力をしていないわけではなく、製品に使う取引先選定はものすごく量をこなして最適な製品を探し出すこともしています。

商品企画にはアイデアを常時30個ストックし、着手するものは3つ。その際に企画書を作るときは粗利8割、ニーズカードにあるヒアリング件数は20〜30個以上無いと企画に適さないと判断します。発売後10ヶ月で開発費を回収できる売上目処が無いとダメであり、これに適さないために特注品の製造は無し。

即納できるように在庫管理は徹底し、さらに提携企業や取引先に対しては支払いを早く現金で、回収は遅くなどとのように双方にWin-winになる関係を築くようにすると言います。

人事

キーエンスは業績連動の給与体系なので、売上が伸びると個人への跳ね返る給与も高くなるため一人ひとりが社長のような意識づけができます。OpenWorksで見る限りハードワークは健在ですが社員の評価は高く、毎年発表される時間チャージ(労働時間総計に対する売上)も社員へ報告されます。会議でも年齢関係なくさん付けであるため意見も自由にできる風土があります。

理詰め文化はあり、意思決定の際に必要な情報がしっかり揃っていないことには否定的であるために、具体性を持った話が多いと言います。

成り立ち

リード電気という名前であった当時から「飛び込み営業なし」「接待なし」という求人募集をしており、お客様とは対等に接することが重視されていました。しかし、対等になるためには各人がエキスパートである必要があるということで、スキルアップを求められます。

創業者の滝崎氏は自分のことをカリスマではないと言い、2度企業で失敗してからキーエンスは3度めの企業でありました。トヨタへの提案で大きなビジネスを獲得し会社が成長します。

今後

日本で大成功を収めたキーエンスが狙うのは海外事業です。現在でも50%程度の売上比率を持ちますがそれを70%にするのが目標と言います。海外でも即納できる整備を行い、日本での成功事例を活用。デモ文化が無いアメリカなどでもデモを行い、工場のオートメーション化などのニーズもあることを掴み中国では大きく成長してきています。

もう一つの狙いはデータ活用・分析です。一太郎で有名なジャストシステムを業務提携し大株主となります。ローソンなどにデータ分析システムを導入し始めてソフトウェア事業で新たな活路を見出そうとしています。これも、分析機器開発とどうようで誰でもわかりやすく使えるようにしようというアプローチが背景にあります。

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感想

圧倒的な製品を圧倒的な営業で支えるキーエンスという会社の物凄さがわかる本でとても面白いものでした。圧倒的な製品背景にあるニーズ調査や企画のプロセスも強固であり、なぜこんなに良い製品ばかり生まれるのかという理由も伝わってきました。お客さんのの言うニーズよりもニーズの裏にあるニーズをしっかり見極めようとする姿勢がすごいなと思いました。

使い方が難しいものを誰でも使えるようにわかりやすくできるという技術能力や調達能力、取引先との信頼関係構築など、当たり前のようなことをしっかりやっている文化がとても好感でした。

日本のとても悪い文化として、自動車業界でよくある印象ですがとにかく原価削減で利益を作ろうという視点で付加価値をあげようというアプローチが見られにくいように思います。どうしてもサプライヤー選定時に価格基準が優先度高くなってしまい、そうするとどこも利益率が低くなります。

また、高利益率を維持できる、とにかく早くて気の利く営業体勢がものすごく、営業結果が給与に反映されるという好循環システムがあります。こういう会社がどんどん増えてほしいと思いました。

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