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セイラー教授の行動経済学入門 | リチャード・セイラー (著), 篠原勝 (翻訳) | 2024年書評47

2017年にノーベル賞を受賞したセイラー教授の本の2冊目になります。

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行動経済学と言われる分野は経済学に心理的な面を考慮し比較的新しい考え方だと思うのですがその権威的な人の一人です。

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ノーベル経済学賞もカーネマンら含め行動経済学の分野で受賞することもありこの20年ほどで大きく飛躍した分野でもあります。

本書は前回読んだ本よりも実践的な株式投資、オークション、競馬などの多くの人が関わった事がある内容が多く、ちょっと難解な表現が多いですが興味が持ちやすい内容も多いのではないでしょうか。

原著のタイトルである「The winner’s curse」という勝者の呪いというオークション理論で言われる現象です。オークション参加者が競売で獲得したい商品があるときに市場価格よりも上回る金額を払わなければならず、競売には勝ったものの、実質高価な値段で手に入れたために購入できたのに損失を被るケースのことです。

人々は不合理な行動を多く取ります。これらの行動の理由を「バイアス」「プロスペクト理論」「双曲割引」など体系立てて説明しようと試みました。よく考えたら損しているけれども目先の利益につられて購入してしまう金融商品などは代表的ですね。

ただ、先の長い未来になればなるほど不確実性が上がる側面もあるため一概に合理的な判断が良くなるかといえばそうでない事もありますよね。

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本書は合理的な判断ができないということを事象を見つけ、実験し、それがなぜそうなるのかということを分野ごとに見ていきます。

📒 Summary + Notes | まとめノート

産業間賃金格差

同じ職種なのに給与に差があるということは往々にして見られます。そこには優秀な人材を獲得したいから給与を高くする方針であったり、産業として労働組合の設定値に近しく設定しているなど理由はあると思います。

そこに合理的な理由があるのか?と見たのが本書の第4章です。色々考えてみてまとまった結論は無いというような結論ではあるのと、不当に安いと思う給与を提示された後に仕事のモチベーションが下がるというのは自然である(最終提案ゲーム、公共財ゲーム)ということやいくつかモデルが提案されています。

ライフサイクル理論

本書で知った理論にライフサイクル理論があります。

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ざっくりと言うと消費と所得の関係で、将来の収入は予測できないもののそれを予測して消費を最適化するという考えです。

人は消費をうまくすることが苦手なのですが、消費を考えることでいつにどのくらいの貯蓄があれば良いのか、借り入れはいつしたらいつまでに終わるのか、を考えることができれば自制のある消費ができると思います。

これもはっきりとした正解例の提示は無いのですが、ノーベル経済学賞をした理論でもあり、今では一般的になりつつありますがファイナンシャル・プランニングのような感じかと思います。

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株価予測

個人的に興味があった部分が株式市場の話です。一つはアノマリーを様々見てみた部分です。

1月効果:1月のリターンは比較的高い。特に小型株。

終末効果:前日の終値から当日の終値を考えたとき月曜がリターンが良い

月変わり効果:月末がにリターンが良くなる

一日内効果:取引間際に大きな価格変動がある

市場平均株価の平均値回帰:

個別銘柄の平均値回帰:

現代では割と語られ尽くしていたり、システムトレーダー勢の方が検証を含めた合理性のある洞察を持っているように感じられますが、規則性をしっかり考えてみるというのはアイデアとして持っておきたいです。

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感想

全体的に難解な表現が多く、実験例も思ってたより複雑で主張への論拠が個別実験の例のみであったりと再現性の問題は往々にして生まれそうな話題が多くありましたが、考え方として物事の理由を考えてみるという訓練はもっと日常的にしたいなと感じられました。

本出版当時と比較して経済学と統計分野の融合度合いは格段に上がってると思いますし、個人で統計を活用した株式市場への挑戦をしている人も多くおり、アイデアという点では面白い内容でしたが、検証という点ではもう少し量や角度も含め現代の方が面白いものが多いと思います。