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百年の品格 クラシックホテルの歩き方 | 山口 由美 (著) | 2025年書評22

コロナが落ち着き旅行需要が戻ってきた中で最近は外資系のホテルが日本に進出してきているニュースをよく見かけます。昔は安く宿泊することだけを考えていたりしましたが歴史のあるホテルやその地域で結婚式に使われるようなホテルに興味を持ち、なかなか高くて頻繁には泊まれないもののカフェ利用だけなどでも足を運ぶようになりました。

クラシックホテルと呼ばれるホテルがあることを知り、どのホテルも素敵な装いです。

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本書はその中でも不二家ホテルで育った著者の山口さんがクラシックホテルの見どころをまとめたものになり、富士屋ホテル日光金谷ホテル、万平ホテル、奈良ホテルについて解説してくれています。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

百年ホテル

百年以上の年月を重ねたホテルを百年ホテルと著者が名づけられています。だいたい百年となると1900年以前からとなり、世代で言うと3代目ぐらいの世代になるのでしょうか。戦争の前から旅行文化がありホテルに宿泊していたというのもすごい歴史になります。

著者の祖父は三重県桑名市に生まれ大学の英語研究会で英語劇に熱中した後に日本郵船の外国航路のパーサーとなった後に創業者の次女の婿として富士屋ホテルに入りました。華やかな舞台を支えるのは実のところ地道な毎日の積み重ねという一途さで守り続けてきました。

ホテルでドレスコードがゆるくなり始める様子を感じて悲しげであった母親、花御殿のルームキー、ホテルに飾られた女性の絵画のモデルは母親であったこと、など懐かしい思い出が綴られています。

見る楽しみ

富士屋ホテルは山口正造が設計者として記されており、建築道楽が高じて設計に口を出しすぎた結果建築家でもないのに設計者と記録されています。ラストエンペラーで知られる溥儀の予約が入った際に大改修で新設された花御殿のテラスからは富士屋ホテルの本館が見渡せます。本館の回転扉の下はジョン・レノンが記念撮影を行った場所でもあり良い写真スポットです。

金谷ホテルの別館は富士屋ホテルの花御殿の設計者は兄弟であるために瓜二つの様子です。万平ホテルにはジョン・レノンが長期滞在して自転車や徒歩で近所を駆け巡り時間を過ごしたホテルでもあります。

クラシックホテルの大きな見どころは広いロビー空間です。その広い空間には手紙を書けるようなデスクがあることもあり、クラシックホテルの便箋に綴られたアインシュタインの「日本における私の印象」などの記録が残されています。

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味わう楽しみ

クラシックホテルの真っ白なテーブルクロスで食べる食事は見どころの一つです。著者のおすすめはディナーであり、著者は昼間の装いから一度シャワーを浴びて着替えてディナーを楽しむというような文化で育ったと言います。

泊まらなくても近くに宿泊するのであればディナーだけでも楽しむ事も醍醐味でしょう。それぞれのホテルには名物料理もあり、また共通するような料理であるカレーやスイーツなども楽しみになります。

泊まる楽しみ

ホテルであるのでもちろんチェックインして部屋に泊まる事が一番の楽しみです。富士屋ホテルではクラシックなキーを使用しており、昔はふすまで区切られただけのプライベート空間が鍵をかけられる部屋で区切られたのはホテル空間での特権でした。

昔の移動は船であったためにトランクも大きかった事もあり、今の時代では不釣り合いな広い部屋とクローゼットが用意されています。天井が高い空間や日本建築、窓からの景色などゆっくりと時間を過ごせるでしょう。夜のホテルの人がみな寝静まった時間帯は宿泊客しか楽しめない空間です。

アインシュタイン

アインシュタインノーベル賞を受賞した1922年にちょうど日本に向かっている船上で受賞の知らせを聞いたと言います。改造社という出版社の招きによる日本での講演旅行であり、岡本一平が日本滞在で同行しました。当時は相対性理論をアイタイセイと読み、勝手に恋愛になぞらえていたと言います。

金谷ホテルの15号館はアインシュタインが宿泊した場所であり、東京では帝国ホテルのライト館に泊まりました。

www.kanayahotel.co.jp

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感想

クラシックホテル生まれの著者でならではの視点が多く書かれている面白い本でした。旅行の楽しみでホテル以外の時間を中心にしていたためホテルは安くとしがちでしたがホテルの中での楽しみというのも味わい深いものに感じます。

長く続いているホテルの特別な時間は日々の積み重ねでできているというのはとても共感できる文章でした。

思うと住んでいる地域にも立派なホテルがありきっと高いのだろうなと思っていたのですが、カフェランチなどの楽しみかたもあるのだろうし、泊まらなくても良い過ごし方もあります。

長くホテル業をしていると有名な海外の人たちの宿泊先として選ばれていた歴史などあるため、思いを馳せたりするのも良いものだなと感じます。何気ないところに楽しみを見つけられると人生の彩りも増えていくのかなと思いました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3EAUxwL 日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー329) Kindleイザベラ・バード (著), 高梨 健吉 (翻訳)