経済ニュースを見ているとROEという言葉をよく聞きます。先日はトヨタがROEを20%目指すという発表がありました。ここ数年キーワードとなっているROEを中心に経済指標の説明が書かれている小宮さんの本を読みました。
本書ではROEなどの用語を中心に、賃貸貸借表から「安全性」、損益計算書から「収益性」、キャッシュフロー計算書から「将来性」について分析できるようみていきます。
📒 Summary + Notes | まとめノート
基本
財務諸表3表から何が分かるのかというと、貸借対照表からは決算時点で会社の財産や負債・純資産の状況、損益計算書では会社の収益性、キャッシュフロー計算書では会計期間内にどれだけキャッシュが出入りしたのかがわかります。
経営者の視点で行くと、営業利益がとても重要でありますが、投資家の視点でいくと配当などの原資となる当期純利益が大事になります。(損益計算書)
貸借対照表では安全性を見るにあたり、「自己資本比率」が一つポイントであり製造業などであれば20%以上、商社などであれば15%以上、など業界によって目安と考える水準があります。次に見るのは「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」ですなわち1年以上、以内に現金化できる資産がどれほどあるのかが把握できます。
ROEについて
ROEは自己資本利益率のことを表しており、株主のお金でどれだけ効率よく利益を得ているのかという事を示す指標です。
似たようなワードにROAというものがあります。こちらは純資産利益率のことであり持っている資産からどれだけ効率よく利益を得ているのかを見る指標になります。
ROA=利益÷資産
ROEがブームとなった背景には伊藤レポートでの8%という指標を目指すことで株価にも良い影響があるという話があります。また元々日本の企業はROEを高める意識が薄く、いわゆる株主のことを軽視した姿勢が背景にもありました。
ROEを上げようということで手段は主に2つあります。
短期的にROEをあげる方法として多くの企業が実施しているのは分母である自己資本を低下させる自社株買いです。また当期純利益をあげる方法としてコストカットがあります。
これらは短期的には上がるものの、行き過ぎた自己資本の低下は安全性を下げる事に繋がりますし、コストカットも従業員のモチベーションを失う要素になります。ROEとROAの関係を考えてみますと以下の式となります。
この方程式から考えるとROAを高くする、財務レバレッジを高めるという事がみられます。財務レバレッジを高めるようなROEの上げ方は会社の安全性を毀損することにもなるのでROAを上昇させるようなROEの上げ方があるべき形です。
財務諸表での着目点
小宮さんがコンサルタントをする中で企業分析をする際の着目点をみていきましょう。
流れとしては①安全性②収益性③将来性という順番にみていきます。
具体的には
安全性
収益性
- 売上高成長率
- 資産回転率
- 売上原価率
- 棚卸し資産回転月数
- 販管費率
- 売上営業利益率
将来性
感想
ROEブームもありROEを高めようという話をよく聞いていたので面白い内容でした。ROEを高める事と財務状況を毀損するという事が重なってしまうケースもるために、健全にROEを高めていくという考えはとても勉強になりました。
一方で、今まで株主に向いていなかった経営であったがために最近の自社株買いラッシュに繋がっておりそういった企業に対して好感されるという考えも感じることができます。
会社経営において色々な指標があり、それぞれの企業のスタンスに応じて投資を積極的にしていくのが、売上高を中心に見るのか、無借金経営をするのか、などスタイルがあります。どれも一長一短であり、最適解というものが無いという事が感じることができます。無借金経営が良いとされる一方でレバレッジが聞いていないのでは?ということはそうであると思いますし、Amazonのようにキャッシュフローを重視するスタイルもあります。
投資にも流行り廃りや為替や金利の状況で変化する事があるのでとても面白いものだなと思います。今まで株主への対話が軽視されているという全般傾向があったためにROEが一つキーワードになっているというのも日本株市場の趣深い所だなと思いますし、そう考えると米国市場のほうが投資家に注目される理由も必然的だなと感じました。
