為末大さんと今井むつみさんの二人により「できるようになる」ということについて探索していく対談形式の書籍になります。今井むつみさんは以前読んだ言語の本質でも語られているようにオノマトペの話が有名かもしれません。言語というものに対して新しい気付きを与えてくれます。
📒 Summary + Notes | まとめノート
言葉について
為末大さんはご存知の通り陸上選手をしており当時からアドバイスや考え方の表現により改善効果や成長が異なることを問います。「大きく動け」と言われて理解できる人もいれば、認識が変わらない人もいます。
例えば「歩く」と言っても人が歩く姿を想像する人もいれば、動物が歩く姿を想像する人もいます。「歩く」と「走る」という違いについても「ジャンプ運動が入ると走る」と考えられる人もいれば、そうでない人もいます。
今井さんが言うに、ことばは世界をカテゴライズする手段です。赤と紫と言ってもどこかにはっきりとした境界線があるわけではないものの、どこかに境界線を引いて区別するために赤や紫と表現します。
ことばでアドバイスや会話をする場合、その人の共通言語(発達段階)や理解度、習熟度などを認識した中でもっとも有効なことばをかける必要があります。
言語能力が高いとは何か
為末さんがよく言われることに「言語化が得意」と言われる事があるようです。
動きに関する言語化とは、ある動きをいちばん特徴づけている部分を抜き出し、それを本人の主観と、客観的な動きを組み合わせて、比喩で伝えるという作業
僕の場合、言語化能力が高まったのは、ことばで自分を誘導しようと自分自身でしてきたことが影響している
今井さんの定義する言語能力とは「推察する力」「推論する力」「語彙力」の組み合わせです。子どもが腹を立てたときに「むかつく」しか知らないとそれしか表現できず、また研究によるとさらには手が出やすくなると言います。
コミュニケーションが成立するためには共通認識があることが前提であり、言葉はとても多様性があります。ことばを理解するには何かを言われたり問われたときに、この表現をしているということはどういう意味で問われているのかを認識する「メンタルモデル」がとても重要です。いわゆる行間を理解するという能力です。一つの訓練方法に読書があげられています。
読書というのは、この推論によって、書かれていることを自分なりに心の中で再構築する作業であるともいえます。
教育や指導の現場では言葉がとても大切になります。コーチの役割とはおもに4つに考えられます。
- 教える:知識の提供
- そのまま伝える:フィードバック
- 揺さぶる
- 気づかせる
為末さんは現役時代後半はコーチを付けずに競技に望みました。それは自分で何をしようとしているのか理解しており、失敗したときに予想と何が違うのかある程度クリアにみていることができたため、その過程を自分ですることが楽しかったとあります。
言語能力が熟練していくためには、いろいろな環境で試し体験を溜め込んでいくことで、感覚をつかめるようになります。(肌感覚)今井さんの考えによると、この感覚(調整力)を身につけるには、ことばを使いながら身につけるのが最も自然な方法です。
さらに成長の家庭は直線ではなく、進んだり戻ったりという過程の繰り返しです。本書にかかれているのは小学生の柔道大会が無くなった要因に、小さい頃は技術よりも力の強さの重要度が高いために力の大きな選手が技術の工夫なしに勝ててしまい競技人生後半で伸びない現象を危惧したためでした。
早くわからせる方法と将来伸びるやり方は矛盾する
最近ではコスパ、タイパと呼ばれていますが、効率化ばかりを気にする懸念点がこの言葉にあります。読書なんて長々と本を読むのではなくまとめを読むという行為はよく行われており「ファスト化」などと呼ばれています。もちろん効率化する物事も必要であるものの一方マイナス側面も理解することは重要です。
あまり変化のない単純な動きの繰り返しに対して、意識をそらさないようにし続ける力を鍛えておくことが大切です。
感想
できるようになるということについて二人のプロが行う対談をまとめた本になります。フォーカスは「ことば」にあり、表現による身体的な競技での成長の違いについて変わる実感値を持った為末さんとことばのプロによる今井さんの受け答えが興味深いものでした。
できるようになるためには「ことば」はとても重要な役割をし、子どもなどでは読み聞かせや読書を通じて多くの表現を学び、壁にぶつかった時の対処方法の引き出しが増やせる事ができます。またそうすることにより、ある意味自然と「諦めが悪くなる」ようになり工夫する能力や読み取り能力も育てられるように見えました。
できるようになるために、失敗・アウトプットの必要性もまさに読んでいる通り重要です。個人的にはファスト化や効率化は喜ぶべきものである気はしますが、刺激的なインプットがなければ意識を集中できない、という体質化は問題に感じます。
最近のスマホもLINEをしたいと思って手に取ったのに、ポップアップで色々な情報が出てきて追っているうちに何をしようと思ってスマホを手に取ったのか忘れるなど、刺激に反応して意識が動くという事が当たり前になってきました。
意識的に退屈なものに集中し続けるような意識付けがより重要になってきていると思います。毎年100冊本を読もうと思ったきっかけも集中する時間が少なくなってきているなと思った事が始まりでした。何かできるようになるというために本を読むという行為がとても役に立つという事が分かり読書好きとしては勇気をもらえる部分が多くあり嬉しくなりました。
📚 Relating Books | 関連本・Web
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- https://amzn.to/3RBBEgn 犬は「びよ」と鳴いていた 日本語は擬音語・擬態語が面白い (光文社未来ライブラリー) 文庫 – 2023/5/10 山口仲美 (著)
- https://amzn.to/3EQf3cX 算数文章題が解けない子どもたち──ことば・思考の力と学力不振 単行本 – 2022/6/14 今井 むつみ (著), 楠見 孝 (著), 杉村 伸一郎 (著), 中石 ゆうこ (著), 永田 良太 (著)
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- https://amzn.to/4cTdCat 記憶は嘘をつく 単行本 – 1997/7/1 ジョン コートル (著), John Kotre (原名), 石山 鈴子 (翻訳)
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