先日の福音派もそうでしたが、PIVOTの動画から本を読んだりなどYoutubeきっかけの読書が増えていることに気が付きます。テレビなどと比べて尺の制限が少ない、新聞などの書評と比べるとより情報量が多いなどYoutubeが本を手に取る宣伝ツールとして最適化してきているのかもしれません。
永遠の話題であろう健康関連の本です。老化負債として健康を投資というアナロジーとして健康で長く居られる方法をみていく本になります。最近の流れとして老化を一種の病気と捉えて、老化を解決していく方法を臓器のメカニズムに基づいて考える見方になります。
📒 Summary + Notes | まとめノート
老化負債
伊藤先生のアイデアの起源は、スタンフォード大学のShenらによる論文「Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging」になります。ここでの主な発見は
1つ目の44歳での節目では
2つ目の60歳の節目では
の変化がみられました。欧米での研究なので日本人とは着眼点が異なる点は留意が必要です。スタンフォード大学の研究では第一の節目での変化の方が第二の節目での変化より大きいことが示されており、つまりは第一の節目の時に頑張ればより健康的な状態に着地でき、その後比較的良好な状態を保つことが可能性があります。
最初に衰えがあるのは、腸と腎臓であるために、便秘気味になる、脂っこいものが食べられなく成る、お酒に弱くなるなどというのはその基調と捉えられます。他にも、眠る力、やる気の起こし方、筋肉などの変化です。
第二の節目にみられがちなものとしては、視力低下、聴力低下、頻尿やつまずきなどの筋力低下、顔のたるみなどの皮膚への影響、人の話を効かなくなるなどの脳への影響です。
これらの健康状態に気がつくために役立つツールにウェアラブルデバイスや健康関連のアプリなどがあります。
負債病の正体
老化負債の事例やつながる行為をみていきます。
- 血糖負債 血糖値スパイクは一度あがった血糖値を下げようとするためにインスリンがたくさん分泌されるために肥満につながります。
- 血圧負債 血圧は朝方にあがり夜にかけて低下していきます。血圧の変動の大きさが負債につながるために、良い睡眠によって解消していくことが必要です
- 睡眠負債 日本人は短睡眠として知られています。睡眠の質も言及されますが特には量をまず確保することが重要になります。熟睡のために真っ暗にすることなど睡眠導入に快適な環境づくりをすることで睡眠中のホルモン分泌を整えます。
蓄積される負債の指標となるものも挙げられています。
- 脂質異常症 悪玉コレステロールが血管に蓄積することで動脈硬化は起こります。コレステロールは排除されることなく蓄積していくために予測しやすいものでもあります。コレステロール値が高い人は薬などで解消することが良いでしょう
- 高尿酸値症、痛風 遺伝要因が大きい病気ですが、特にはビールを飲む人はアルコール摂取量を意識。毎日飲む人は痛風の危険度が2倍ほどになります。生活習慣だけで尿酸の数値改善は難しいため薬でのコントロールも重要です
- 脂肪肝、代謝不全関連脂肪性肝炎 肝臓に脂肪がたまるいわゆるメタボなどによる病気です。こちらも飲酒が原因となりやすく、肥満に気をつける生活習慣が大事です
- 認知症、アルツハイマー病 認知症の真因はいまだ不明ではありますが、アミロイドベータ、タウといった物質が近年原因と考えられてきています。アルツハイマー病患者に使われる薬剤はそれを消去する目的のものです。
老化負債の生まれ方
生き物の中で人間は特異に長生きな動物です。おおむね体の大きな動物ほど長生きする傾向にあり、ゾウは30年、ネズミは2年ほど。活きるためのエネルギーは体の重さではなく表面積に比例し、体の表面から逃げていく熱量が大きくなるために必要なエネルギーが少なくてすみます。
エネルギー代謝効率が良いと心臓が20億回打てが命が尽きる目安の中でゆっくり心臓を心拍させられると長生きできるように、脈が遅い人の方が長生きの傾向が認められているようです。
エネルギー効率を司るのがミトコンドリアであり、栄養素の糖分と脂肪分を原料に、酸素の力でエネルギー源であるATPを作ります。老化するということはミトコンドリアの機能が衰えていくことです。ミトコンドリアが老化するということは活性酸素がたくさん発生し遺伝子に傷が入り、さらに悪循環で遺伝子がうまく使われなくなることになります。人間は他の動物に比べて遺伝子の損傷修復の能力が優れています。
遺伝子の損傷程度はエピゲノム年齢として測ることができます。おおよそ年齢と比例しますが、エピゲノム年齢の方がより性格に老化を表し、同じ年齢でも老けて見える人、若く見える人はエピゲノム年齢の違いからです。この遺伝子への損傷が負債として考えることができます。
負債解消のために
若さを保つために重要な生活習慣に挙げられるものが3つ。
- 食事
- 運動
- マインドフルネス
これらを意識することで老化負債を返済できる事例も確認されています。若返りのために行われた実際の活動は
- 食事 カロリー制限、腹八分目の食事です。カロリー制限によりサーチュインといわれる酵素により脱アセチル化を促すためにミトコンドリアが元気になります。カロリー制限の目安としては1500kcal程度です。食事で効果的なものは a. スルフォラファン:ブロッコリーやキャベツなどに含まれる b. クルクミン:ウコンなどにふくまれる c. カテキン: d. 腸内細菌の産生する酪酸:ヨーグルト、乳酸飲料、チーズ、キムチ、発酵豆乳など e. キウイフルーツ: f. 地中海食:赤ワイン、不飽和脂肪酸(魚、シーフード)、全粒粉パン・パスタ、オリーブオイル、ナッツ、ハーブやスパイス g. 和食:発酵食品、魚介類、わかめ、海藻類
- 運動 筋肉トレーニングをすると筋肥大が起こり、多くの筋肉の成長に関わる遺伝子でエピゲノム変化が確認されました。
- マインドフルネス 眼の前のことに集中すること。
これらに共通するのはストレスをうまくコントロールすることです。ルーティンと呼ばれるリズムが良い生活があると想定外のことが減り老化負債の原因となるコルチゾールの分泌を抑制します。
一方で、ほどよいワクワク感も重要です。刺激が少ないと今度はうつ病の発症につながるなどみられます。
スペインは老化負債が少ない国とされており、習慣としてあるシエスタ文化や地中海料理、家族との会話、日照時間と散歩の習慣、言語的にハッピーなものなどが要因とみられています。
良いリズムで生活を送るとホルモンのリズムも整えられます。睡眠で言うと90分が一つのサイクルです。食事では空腹の時間を12時間できれば14時間もつことを勧めています。
実践として紹介されているものは次のものです。
- ちょっときつい運動をする
- 仕事はたってする。座り続けすぎない
- 腹八分目、プチ断食
- タンパク質をしっかり取る
- おいしいものを探して未知の体験をする
- 興味がある新しいこと、習い事などをする
感想
健康に関わる本は定期的に読んでおきたいテーマなのですがこの本もとてもおもしろかったです。思えば健康診断などもあまり意識的になったことがなく、会社の定期検診のものを受けたりするのですがこれって意味あるのかなと思うぐらい簡易的な項目しかなかったりします。会社や周りの友人では意味合いのうすさなどからレントゲン検査やバリウム検査はあまり受ける人が少なくなってきています。ということで健康診断は数年に一回でも良いので胃カメラや人間ドックなどに切り替えようかなとも考えていました。
今回の本では生活習慣で治らないようなものに関しては薬処方を早くしてみたほうが良いとのことがあり、薬に頼るもの頼らないものを考えるきっかけにもなります。生活習慣での改善もできることが多く良い習慣を保つこと、具体的に何を意識すればよいのかアイデアもくれています。
中々思い通りにならないものが健康ですし長生きできるものでも無いと思いながら生活はしていますができる努力は無理の無い範囲でして若い時もっとこうしておけば、みたいのは無いようにできればなと感じます。
スペインの長生き文化にも興味が持てたのでスペインの生活など勉強してまた旅行してみたいと思いました。
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