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世界の本当の仕組み:エネルギー、食料、材料、 グローバル化 、リスク、環境、そして未来 | バーツラフ・シュミル (著), 柴田 裕之 (翻訳) | 2024年書評126

ビル・ゲイツのブックレビューで良く出てくるバールラフシュミルの新刊ということで読んでみました。Gates Noteを見返すと10年も前から付き合いがあるようです。ビル・ゲイツの著書が中国で使われているセメントの話をしていたのですが、本書でもセメントの話があり大きく影響を与えているようです。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

複雑化する世界

現在は多様な技術発展に伴い膨大な知識が必要になってきました。西暦1500年にはフィレンツェにあらゆる分野に精通したルネッサンスマンが集まり語る事ができました。18世紀なかばにはフランスにて百科全書という網羅的に知識を求めあげる事ができました。現在では多様に複雑化した世界で人々は絶えずブラックボックスとやりとりし比較的単純なアウトプットを受け取っていますがブラックボックスの内部で怒っていることは理解する必要ありません。

この本では理解不足の改善を図り、主要な現実を説明することが試まれました。エネルギー、食料、素材、グローバル化、リスク、環境、未来に各章を区切りそれぞれの項目で何を見て現状を理解すべきかを見ていきます。

エネルギーを理解する

1600年代に人類は石炭を用いてエネルギー活用を行い始めます。初期のことは効率が悪く石炭にしか蒸気機関は設置できませんでしたが、次第に活用の範囲を広げていきます。これは1900年代まで変わらず石炭火力の上記機関で多くのものを動かすことを行います。初期は2%しか変換効率が無かったですが2000年には約50%ほどに達します。1800年の1人あたりの有効エネルギー供給量は0.05ギガジュールから2020年には約34ギガジュールまで増えました。

1950年代から原油が最も重要な化石燃料として働き始めます。原油は現在でも重要な役割をしており、例えば太陽光や風力などの再生可能エネルギーに頼ろうとしても断続的な発電になってしまうために、化石燃料を用いた発電がいまだ重要とされます。夜の衛星写真を見るとどれだけ電力が使用されているのかわかるでしょう。

引用:https://www.nightearth.com/?@37.574704,131.602425,5.195129181407849z&data=$bWZsMg==&lang=ja

地球の地殻には化石燃料は未だ十分にあり、2020年の生産水準が維持されれば、石炭の埋蔵量は120年ほど、原油天然ガスは50年ほどもつとされます。今多く問題とされる地球温暖化は2050年までに二酸化炭素の排出量をネットゼロにすることで地球の気温上昇を1.5℃までに抑え込もうという考えです。カーボンニュートラルの目標は0か5のつく数字がつくターゲット年がかかげられノルウェーが2030年、フィンランド2035年と続き他の国々が続きます。

ドイツでは現在まで再生可能エネルギーの比率を11%→40%まで引き上げる事に成功しています。デンマークは2019年に風力発電が45%を占めるまでになりましたが、一方でこの成功の背景には近隣国から断続的な発電を補う電力輸入が可能なためです。太陽光発電はドイツでは一日のうち12%程度しか稼働せず、風の強い北部から南部へ風力発電の電力を送電する高圧線の敷設が間に合っていない状態でもあります。2050年にネットゼロという野心的な目標にはEUでさえも原子力の発電が必要となってしまう事実もあります。

発電では比較的ネットゼロが容易な産業ですが、発電以外はさらに深刻であり緩やかにしか変化できません。ドイツの一次エネルギー供給に占める化石燃料の割合は20年間で84%→78%にしか減少できていません。2040年には依然として70%近い数字が予想されています。

発電に膨大なコストをかけて再生可能エネルギーを導入してこなかった国の代表例に本書では日本が挙げられています。2000年には日本の一次エネルギーの83%が化石燃料でした。福島第一原発事故の影響もあり2019年には88%にまで上昇しています。

食料生産を理解する

食料は人々が生きていく上で欠かせない存在です。狩猟生活時には1家族が生きていくうえで100平方キロメートル以上の土地が必要なこともありました。古代エジプトでは1ヘクタールあたり1.3人、ローマ帝国では2.5人に増えましたが産業革命以前でも1ヘクタール2人程度のままでした。

それが現在ではFAOの推定では世界の総人口に占める栄養不足の人の割合は2019年時点で8.9%の割合まで減少しています。(1950年代は65%)これは一重に食料生産の増加のおかげです。この増加を支えたのが窒素とリンなどの肥料や機械化でした。

1800年代のニューヨーク周辺では2頭の牛を用いた畑を耕す作業で行われ、1ヘクタールわずか1トンの生産量であり、その10%は翌年の作物のために保管する必要がありました。小麦1キロを生産するのに約10分の人間の労働が必要であった計算です。1世紀後にはそれが約2分までと効率化が進み、今では約2秒にまでなりました。

肥料として窒素は現代において1ヘクタールあたり100キログラム、場合によっては200キログラム投入されています。窒素は光合成を推し進める葉緑素や人間の細胞DNA、RNA核酸にも含まれておりタンパク質のアミノ酸にも含まれており欠かせない成分です。窒素は大気中に多く含まれており有名なハーバー・ボッシュ法により精製可能になりました。効率化による収量増大には、ビニールハウスによる温度管理、化石燃料や電気を使った温度調整などもあります。

本書で新しく知ったのは漁業を支えるディーゼル油の影響です。魚は海洋に出て釣られる天然魚の場合船を用いる必要があるため1キロ収穫するためにディーゼル燃料700ミリリットル必要になります。では養殖の方が良いのではと思いますが、魚は肉食であるものも多く、天然魚を獲って作ったタンパク質抱負な魚粉や魚油を餌として与えています。養殖で有利になるのは植物ベースの餌を食べて育つ草食魚のみです。

良く聞く有機農業をしたら良いのではといいますがそのためには都市から農地へ人々が向かい時間と手間をかけて農業に向き合う必要が出てきます。つまりは化石燃料を手放すためには農地にとても近い場所で生活しなければいけません。化学肥料を使いたくなければ窒素を入手するために溜め肥えを再び利用しなければならずそれでも十分な窒素量には至りません。

ではどうすればよいのか?おおむね座って過ごす富裕国の人々の必要な熱量は2000キロカロリー程度であると言われており接種は3200〜4000キロカロリーと大幅に多く接種しています。またFAOによれば廃棄される量は野菜果物では半分ほど、魚全体では3分の1、穀物の30%ほど、肉などでは5分の1ほど失われいると言います。これは食料供給量の3分の1にあたります。

素材の世界を理解する

本書では現代文明に不可欠な基盤となる4つの素材、セメント、鉄鋼、プラスチック、アンモニアを見ていきます。これらはそれぞれ2019年時点において45億トン、18億トン、3億7000万トン、1億5000万トン消費されました。

この中でも重要なものはまずアンモニアです。アンモニアがなければ世界人口80億人の少なくとも40%を養うことができなくなります。

もともとはドイツで軍事目的に人口精製が行われその後農業に活用する事が進みます。1960年代に始まった緑の革命では小麦と米の新しい優れた品種に適切な量の窒素を施すことで収穫量が爆発的に増えました。

次に挙げられるのはプラスチック。初期の頃はセルロイド、その後ベークライト、PVC、ナイロンなどが使用されていきました。1925年にはわずか2万トンでしたが、1950年には200万トン、2000年には1億5000万トンとその便利さから活用の幅が広がっていきました。

セメントや鉄鋼は言わずもがな建築物に多く使われており、世界の大きなビルはこれらの発展により実現可能になっています。再生可能エネルギー風力発電ではリサイクルが難しいプラスチックを用いて鉄鋼とセメントの土台をもとに作られており化石燃料の権化と言っても良い設備です。これら4つの素材はいくらテクノロジーが発展してAIが活躍する世の中になろうが不可欠なものになります。

グローバル化を理解する

「国境を越えたモノとサービスの貿易や、テクノロジーや、投資と人と情報の流れがもたらした、世界の経済と文化と人々の、深まる相互依存」が伴うことがグローバル化です。中国はグローバル化の波に乗って大きく成長し世界の工場となりました。これには一党独裁の中央集権、均質性が高い民族、識字能力があり大きな人口でありながら、さらに巨大な市場も兼ね備えていた要因があります。

一方アメリカでは業務の国外移転によって高賃金の職が失われたり、労働力の裁定取引のせいで報酬がさらに下がるという貧困化が進みました。

著者はグローバル化をこうまとめます。

グローバル化は、物理的に突き詰めて言えば、たんに質量の移動(原材料、食品、最終製品、人の移動)や、情報の伝達(警告、案内、ニュース、データ、アイデアの伝達)や、大陸内と大陸間の投資であり、これからもそうであり続けるだろう。

グローバル化はもともとシルクロードと呼ばれるように大陸を横断するように行われていました。そこから風力を使い帆船が使われ移動範囲が増え、さらには蒸気機関と通信が活用、さらにはディーゼル機関と飛行と無線通信により拡大し迅速になります。

1970年代におおよそ2億人程度であった観光旅行者は2018年には14億人まで増え、中国人観光客はアメリカ人の二倍も観光でお金を使うほどになりました。

グローバル化により便利になった大陸間の輸送の結果、世界で使われているものがある一つの国の拠点でほぼすべてを賄われているなんてことも増えていた中でパンデミックがあり、供給不安が起こりました。トランプ大統領が掲げる依然からアメリカ企業では64%もの製造業者が生産拠点を国内に戻す可能性を回答しています。

リスクを理解する

技術の発展とともに私たちはとてつもなく多くの情報を収集している現代、不安を煽るような情報を後を絶たない状態です。テロ攻撃、農薬残さ、地球温暖化、ハリケーン、洪水、イナゴの大量発生、エボラ、コロナまで幅広くあります。

例えば食生活と寿命について、今まで数多くの研究が行われており、説得力のない結論のものも多く含まれます。世界の平均寿命を見てみると日本とスペインが比較的長く生きています。日本人はいまでこそ西洋化の影響で肉料理が増えましたがアメリカと比べると糖類は年間で16キログラム少なく摂取しており、脂肪も8キログラム少ない摂取量です。

同様に寿命の長いスペインは肉文化であり、枝肉の供給量は1人あたり約100キログラムと日本のおよそ二倍になります。より細かな比較が本書にありますが、結論は食文化がこれだけ違っても世界の中で寿命が同じように長い国であるということが重要な点です。心配していること、日々悩ませていることを見ても結果はあまり変わらないなんて事は他にもたくさんあります。

自動車の運転は、おおむね自発的であり、非常に頻繁に繰り返されます。社会は毎年全世界で120万人を超える死者がでることを許容しています。一方で、大都市やその近所の工場で事故が繰り返し起こったり、橋や建物などの構造物が崩れたりして死者が出たら、許容されないでしょう。

死因を見てみると、富裕国では約300万人に1人が心疾患、7000万人に1人が不慮の転倒、ただし、これらの発生確率は非常に低いのでこれに頭を悩ませるかどうかは疑問でもあります。有名な話で飛行機事故による死亡確率は自動車運転中(同乗中)の死亡確率の方が一桁多く発生します。

悲しいかなリスクに対する一般大衆の反応は、実際の結果の比較評価よりも、馴染のないものや未知のもの、理解が乏しいものに対する恐れに大きく左右される。それらを防ぐためにコストのかかる措置を取らざるをえないようにするのがテロリストの狙いでもあるのに。

環境を理解する

本書では自然のかけがいのない必要な物質、「酸素を豊富に含んだ大気とその循環」「水のサイクル」「全てに欠かせない養分」から見ていきます。

酸素をみると成人1人が1日に吸い込む酸素は平均でほぼ1キログラムであり、世界人口に当てはめると約27億トン。大気中には1200兆トンの酸素があるためあまりに十分な量が存在します。地球の陸上植物は合計5000億トン程度の炭素が含まれておりそのすべてが一度に燃えてしまったとしても危険のないレベルです。

一方で水は非常に深刻になる可能性を秘めています。水は飲料用から生活に使うもの、そして農業に使用するなど生活に深く関わります。水は世界中で不均一に分布しており、必要でないところで贅沢に使われ必要なところには届きにくいという欠点があります。

栄養で言うと先程出てきた農薬として活躍するリンの不足も言われていますがこれは十分な量が採掘されています。

今後地球温暖化は止められそうにない出来事になっているのですが地球温暖化の中でこれらはどうなるのでしょうか。本書を読む限り酸素は心配無く、水は今の分布が変わるものの対応すれば被害は少なくすむ、食料のための栄養も概ね問題は無く食料問題の本質は今の廃棄率30〜40%という数値から配分をうまく行うことでの改善しろも多く残されています。

地球温暖化が分かってからそんなに短くないのにもかかわらず人々はSUVでガンガンに化石燃料を燃やしながら移動し、建設は高層ビル化し、三重ガラスの窓も義務化されずに化石燃料依存の生活からいっこうに抜け出そうとしていません。

十分効果的な形で行動を起こし始めるのなら、今やグローバルな規模でそうせざるをえず、かなりの経済的・社会的代償を払わなければならない。私たちはいずれ、先見の明を持って意図的にそうするだろうか?それとも、状況が悪化してそうせざるをえなくなったときに、ようやく腰を上げるのだろうか?はたまた、有意義な行動をとりそこなうだろうか?

未来を理解する

過去、どの時代も多くの予想が行われてきました。原子力は全てに活用でき、飛行機も原子力で動くと言われていたり、コンコルドにより移動時間が短くなると予見されたり、ピークオイル説から、地球温暖化で世界は崩壊するなど様々です。

変化は突然起きてきたのかというとそうではなくゆっくり起きてきました。また新しいものを生み出すにおいてもそれは今まで存在した技術を組み合わせてできたものも多くあります。

感想

ファクトフルネスで読んだ事に通じる過去や現在の事実を正しく理解して大事な物事を考えてみようというような類の本でとても面白い内容でした。

例えば二酸化炭素排出についても発電に依るものはそこまで大きくなく、比較的簡単に置き換えられる部分であるものの他の部分はどうするのかという話はそこまで注目されていません。そんな経済的に努力すれば変化させられる電力の部分でさえ日本はかなり遅れている上に地理的特性を活かさず取り組み多く失敗しています。

引用:https://ourworldindata.org/ghg-emissions-by-sector

CO2の排出の歴史を見てみると、戦後かなり少なかった排出量は指数関数的に増えており中国やインドは富裕国が部屋した分の何倍も排出するようになっています。

ourworldindata.org

これから成長したい、世界の工場となり排出するバランスになってしまった地域などがもう発展しきった富裕国が勝手に危ないと言い出して成長ストップしてと言われてもなと思う事もありますよね。

食料廃棄率についても調べると40%ほど捨てられており、途上国では貯蔵の問題である一方で富裕国では品質基準の高さや安全制度の理由で早く捨てないと行けないこと、大量陳列の弊害になっています。

www.nippon-foundation.or.jp 

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本書の中で語られている事はビル・ゲイツとの動画で語られている事も多くYoutube上にある動画で彼の講演など見ると重なっている部分も多いでしょう。ただ、本書で言う歴史を理解して何が根本の問題であるのかを知りその推移を調べる課程などを追えるのは本の醍醐味であるように感じます。

原著と邦訳でのレビューの差などを見ると日本人大丈夫かと思う事もあるのですが、気になることがあったら統計データを調べてそこから語られている物事の是非を考えるという習慣も付けていきたいです。文量は多く確かに冗長なところもあるのは確かですがこれぐらいの文量であれば問題なく読む体力を付けていきたいですし、英文でも問題無く読める体力を得たいなと思います。

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  2. https://amzn.to/4fvAw7y エネルギーの人類史 上 単行本(ソフトカバー) – 2019/3/25 バーツラフ・シュミル (著), 塩原通緒 (翻訳)
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