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最も賢い億万長者上・下 | シモンズの投資手法 | 2021年書評#1/2

2020年は投資を始めた年でした。

昔から投資に興味はあったものの新卒の会社で401Kをしていたぐらいで、その他は年金保険程度しか運用はしていませんでした。

なんとなく貯金額は増えるものの、インフレにより現金の価値は未来に向けて希釈されていってしまいます。

コロナで在宅ワークが増えたこともあり投資の勉強を始められた年でした。

投資を始めてみると色々と勉強することが増え、

振り返るとアベノミクスでの投資チャンスを損失していたことや、

S&P500はいかなる景気後退も乗り越えてきたことなど、

今までなぜ投資をしてこなかったのかという後悔が生まれ本格的に資金を投入しました。

ジムシモンズ

ジムシモンズはルネサンステクノロジーズという、最も成功しているクオンツファンドの代表です。

投資で一番の敵は人間の感情です。強欲、恐怖などすべての人間心理を織り込んだ市場では感情的な取引が失敗をもたらすと言われています。

シモンズは元々著名な数学者でしたが、ある日投資の魅力に取り憑かれます。

大豆に投資したシモンズのお金は数日で数千ドルの利益を出したことがきっかけでした。

当時、シモンズは国防分析研究所(IDA)にてソ連の暗号解読に努めており十分に安定した人生を歩んでいました。裁量労働であったこともあり、空き時間に同僚と株式市場での勝つ方法が無いのか研究を始めたシモンズは、「シグナル」を見つけることで高い勝率を出せるのではと考えます。

その後、IDAの突然の解雇や大学教授での仕事を経て、シモンズは数学の世界を捨てゼロから投資の世界へ足を踏み入れます。

数学の力で市場に勝つ

ジムシモンズ率いる投資チームの構成で最も特徴的なのはウォール街の人間は仲間に入れないことです。

ルネサスの大本にあるヘッジファンド「リムロイ」においてもIDAの同僚とスタートしています。

当時数学者でしか構成されていないヘッジファンドは前例が無く、予定していた資金は集めることができなかったものの、知り合いから資金を集めファンドを開始します。

初期からシモンズの目標は「人間が介入しない取引システム」の構築でした。

何かしらの「シグナル」を求め法則を探す旅が始まります。

しかし、初期の投資は理想から程遠いものでした。人間が介入し売り買いの判断をしており、損切りをできない同僚のバウムと対立することもしばしば。

投資手法確率のための泥臭いデータ収集、データクレンジング、さらにはトレンドフォローでの他頻度売買が良いのか、それとも手数料を避ける低頻度売買が良いのか、システム構築のために数々の天才数学者を集めてはそれぞれからの手法を試し良い方法を探していきます。

バーレカンプはカジノから着想を得て、高頻度売買することによって一回の取引の重要性を下げることで、より安定した利益を出せるのではと考えます。また、前日の取引の結果から次の日の取引は予想しやすいと24時間効果、週末効果などを活用し始めました。

当時のメダリオンルネサンステクノロジーズ前のファンド)では短期トレードが90%、長期トレードが10%と、その取引の多くは当日中に手仕舞いすることが多かったという。

ライバルの台頭と戦場の移り変わり

本書の中では、日本の本間宗久ローソク足やギャン理論で有名なギャンの手法、またDEショーと呼ばれるライバルのヘッジファンドが紹介されています。

投資手法は時代や投資対象によって様々で、多少オカルトな側面も含まれるギャン理論などの熱狂的な支持者の居るグループなどもありとても興味深いです。

当時、メダリオンはというと利益を出していたものの投資金額はそれほど大きくなくファンドの中では小さいものでした。

かつウォール街で資金調達をしようとしても、コンピューターを活用した取引に興味を持つ投資家は中々見つかりません。

その中でもシモンズが粘り強く支持者を探し規模を拡大していくことに成功します。

運用資金が増えていくと、投資対象としていたコモディティや通貨の市場規模が狭いため利益が出にくくなってくるというデメリットも生じてきました。

少し意外なことに、メダリオンが株式市場へ本格参入するのはこの時で、より市場規模の大きさから利益を最大化できるという理由でした。

メダリオンの成功と社会的影響

株式市場へと投資を拡大していくメダリオンは順調に、どのファンドよりも大きく成長していきます。成長は加速度的で、異質なまでに高いファンド手数料でも資金が十分集まる魅力を持っていました。

初期のメンバーはほとんど会社を去っていましたがシモンズが率いるチームは随時数学者を採用しより強固で複雑なシステムを作っていきます。

またルネサンステクノロジーズのマーサーは政治にも深く関わっていき、トランプ当選を後押ししています。

政治と金はの関わりについてアメリカは顕著なのですが、ルネサンステクノロジーズのメンバーと共和党が関わっているというのは驚きでした。

投資の難題

人間は感情や直感から逃れられない、というのは人間が介入しないトレードを信じ続けたシモンズでも感情の介入からは逃れられませんでした。

従来の投資法が通用しない時代、現代はインサイダーの取締や、情報のフラット化などによりファンドの優位性がどんどんと薄まってきています。誰もが同じような情報を触れられる中で、有名なファンドバークシャーはS&P500のパフォーマンスを下回る結果を出してしまっていることから、どんなプロにおいても従来の投資法だけではいいパフォーマンスを得られなくなってきています。

ビッグデータで進化する定量的手法、そんな中、アルゴリズムトレード含めより多くのデータを用いた取引手法は今も進化しています。クオンツプレーヤーはルネサンステクノロジーズの成功が代表的ですが、他にもツーシグマインベストメンツ、イスラエルイングランダーのファンドなと定量手法が生み出す高成績が目立ってきています。

we.love-profit.com

byh00122.livedoor.blog

最後にどんな人におすすめか

投資の歴史本に近いもので、投資を始めるための入門書というよりは小説に近い感覚の物語ではないでしょうか。

しかし、ルネサンステクノロジーズは投資をしていく中で知っておくべき存在であると思います。

本書から個人投資レベル、かつ短期の実践的なトレードに活用できる内容があるのかというと、そうでも無い気がするところがあるのであくまで趣味的に知識をつける本のように思いました。

直接の活用はできないにしろ、クオンツがこれだけ台頭してきた中で秘密主義のルネサンステクノロジーズについてこれだけ濃く書かれた内容の文章は無いので、改めてグレゴリーザッカーマンのジャーナリズムに感心しました。

ルネサンス内での天才立ちが行う泥臭いデータ収集から分析、確執がもたらすドラマは興味深いものでした。

 

本当にわかる為替相場 | 相場の読み方と外れた時の対処法 | 2020年書評#27

コロナショックで投資を始める人が増えたようで、今年は自身でも口座開設し株式投資をはじめました。

www3.nhk.or.jp

今までなんとなく始めてなかったのですが、資本主義経済下で日銀の下支えの恩恵を受けるために少しずつ勉強しながら運用しています。

運用しているとわからないことが多く、いろいろな本を読むきっかけになりとてもおもしろく株式相場含め様々な相場を見ることになっています。

為替相場とは

昔イギリスにいたときポンド円が200円に近く、パン一つでも200円もするのかなどと思いながらご飯を食べていた覚えがあります。

2020年12月のポンド円を見てみると140円付近なので今と比べるととても高かったときにたまたまいたのだななんて思います。

こう振り返ってみると日本円の価値はいつも同じでないことがわかります。

コロナ経済対策としてドルはたくさん刷られ価値は下がり、日本でも日銀が紙幣発行量を増やして紙幣が溢れている状態のため、ドルは日本円よりも価格が下がりドル円は下がり続けています。

こういった価格の変動を利用して今、ドルで持っていたほうが良い、日本円で持っていたほうが良いのか判断し利ざやを得ることを投機、または投資などといいます。

為替相場のトレンド

為替相場では日々の経済ニュースや国際情勢から傾向(トレンド)を見つけポジションを変化させる必要があります。

トレンドがわかっていれば、例えばドル円が100円を切るとより下りトレンドのためドルポジションを続ける、ドル円が110円に上がれば上昇トレンドに切り替わったと判断するためロスカットしてでもポジションを転換する、などの判断基準が作れます。

うまいディーラーは「ストップロスは近く、テイクプロフィットは遠く」というそうで、ロスカットを最小限に抑えつつ利益確定はトレンドが変わらない限り遠くに設定するそうです。

この戦術も、長期、中期、短期、超短期のどのトレンドをフォローするのか、投資額はいくらかなどで各個人が戦略を組み立てる必要があります。

儲かるディーラーは「相場は間違っていない」を念頭に

  • 相場のトレンドをつかんでいる
  • 損失を最小限に抑えることができる
  • 相場観に時間軸を持っている
  • 相場のテーマを感じ取れる
  • 思惑やセンチメントの重要性をしっている

という点の意識を常に持っているそうです。

意識すべき経済指標

トレンドを掴むために多くの投資家は経済指標をチェックしています。

本書で紹介されているのは以下の指標。

  • 米雇用統計
  • 失業率
  • 非農業部門雇用者数
  • 人材派遣
  • 消費者物価指数(CPI)
  • 個人消費支出デフレーター
  • ISM製造業景気指数
  • 鉄鋼業生産指数
  • 消費者信頼感指数
  • 小売売上高
  • GDP統計

特にアメリカの経済指標は相場を動かすことが多いため、発表前などトレンドが変化しやすいタイミングではポジション調整をする必要があります。

これらは俗に言うファンダメンタルズというものに含まれており、相場をすでに織り込み済みである可能性が高いです。ただし、トレンド変化の起点となることが多いため、トレンド継続・転換を判断する理由として認識しておくことはとても大切なことになります。

テクニカル分析

為替相場は株式相場よりテクニカル分析が力を発揮する相場だと個人的に思っています。この本で紹介されているテクニカル分析(相場指標含む)は以下。

さいごに・どういった人におすすめか

株式含め投資を始めた人にとってはとても重要な指標が紹介されており、ディーラールームの様子なども含めどのような雰囲気の中で為替相場が動いているのか、といった話は面白かったです。

経済指標に関しても、Youtuberの高橋ダンさん含め多くの投資家が紹介してくれている指標とオーバーラップすることが多く、投資家がどういったことを意識しながら取引しているのか、を知ることができます。

投資するにあたりトレンド予測をするためには多くの投資家が使っている指標を意識しなければトレンド予測は難しいですし、注意するタイミングについてもずれてしまうため、どのような指標を意識しながらポジション調整すべきなのか知るためにとても良い本ではないでしょうか。

ブルーワールド:命の水を求めて | 誰しもに必要な水を求めて | Netflix review #2

水問題はずっと語られている問題の一つです。

水問題といってもアフリカの奥地で水汲みに行くような問題だけでなく、カリフォルニアやメキシコシティでの飲水不足や、インドの産業排水など様々です。

Netflixにて様々な水問題解決へ活動する起業の話をまとめたブルーワールドは面白く今ある解決策を提示してくれています。

www.netflix.com

 

Jaden Smith | 501CTHREE.org / JUST WATER

www.complex.com

Jaden Smithはラッパーや俳優でありながら、水問題の解決を目指します。飲水に適した水を小規模で生成するために、The Water Boxという装置を使用し安全な飲水を提供します。現在はミシガンで使用されており、将来はインドなどさらに必要な土地へ展開予定です。

MAJIK WATER

www.majikwater.co

Majik Waterは空気中から水を作り出す装置を作ります。

アフリカの多くの村では遠くの水場まで水を汲みに行きますが、多くの不純物が含まれる水は安全とは言えません。また、大切な学習時間を水くみの時間に奪われてしまうのを防ぎます。

WATER.org

water.org

Water.orgはマイクロローンにより水環境を提供する団体になります。毎月5,6ドルの返済プログラムであり、現在まで99%プラン通りに返済されているといいます。

ローンすることにより、安全な水にリーチでき学校にも通え、少額の返済は市民にとってとても大切です。

Sanivation

sanivation.com

Sanivationは各家に汲み取り式のトイレを置くプログラムです。

シェアで使用していた不衛生なトイレではなく、各家庭にトイレがあるためより管理された使用ができます。

汲み取られた便はSanivationの施設に集められ炭として使われます。

従来の炭より8倍長持ちしコストの削減にも有利です。

The Water Environment Federation (WEF)

www.wef.org

窒素の効率的な製造を試み、藻類を用いたアンモニアの生産をします。

Aqualia

www.aqualia.com

Aqualiaはスペインにて藻類から水素を取り出すことで、車の動力として利用します。

バイオメタンを活用した車はスペインでもあるようですね。

Aquaporin

aquaporin.com

水洗浄メンブレン技術はとても大事なテクノロジーの一つです。

Suez

www.suez.com

Suezは海水からメンブレン技術により飲水を製造しています。

特にシンガポールなどの海水にアクセスでき飲水の確保が必要な国などで活用さてています。

Orange County Water District

www.ocwd.com

カリフォルニアの水危機は慢性的なものです。

雨水だけでは水使用量を賄えないため、メンブレン技術により排水の利用を行っております。

L'oreal | dry factory

www.loreal.com

ロレアルは工場で使用する水の再利用をしようとDry Factryというコンセプトを持ち活動しています。

使用した水を無駄にせずリサイクルし十分に活用しようとする試みです。

ここれもメンブレン技術がふんだんに使われ、90%もの水使用削減も実現されているそうです。

Hydraloop

www.hydraloop.com

Hydraloopは家庭用の水リサイクルシステムを提供します。

排水を各家庭でリサイクルしみずの使用量削減を目指しています。

 

さいごに・どんな人におすすめか

とても有益なコンテンツで一般知識として所有すべき内容を教えてくれるNetflixという媒体の協力さを改めて感じます。

紹介されている技術は多義に渡り、かつ最新のものが多いのもとても良い点です。

教科書に載る頃には古い情報になってしまい、不明なソースが提供する情報よりはるかに正確で信頼できる内容が、テレビではなくネットテレビで提供される時代に、時の移り変わりを感じます。

また、英語コンテンツであるためにワールド・スタンダードであり、日本バイアルがかかっていないのも良かったです。

水含め資源を使い切らずに捨てるケースはいつまでも存在する中、最近は日本でもレジ袋の無料配布が停止され、エコバッグの利用などから資源活用の意識が少しは高まってきているように思います。

電気自動車の台頭もあり、これからさらに効率よくかつ繰り返し資源を活用する習慣が身についてくることを願うとともに自身でも気をつけてその時その時の正しいと思える選択肢をするように心がけたいと思います。