教育系の本で有名なマインドセットを読みました。
ビル・ゲイツのブログでも紹介されており、日本語版ではビル・ゲイツのコメントが帯に使われています。
The greatest virtue of the book is that you can’t help but ask yourself things like, “Which areas have I always looked at through a fixed-mindset lens?” and “In what ways am I sending the wrong message to my children about mindset and effort?” Thanks to Dweck’s skillful coaching, you’re almost guaranteed to approach these tough questions with a growth mindset.
英語のPDFはオンラインで無料で読めるようになっており、特に最後のチャプターは一読の価値あるように思いました。
https://adrvantage.com/wp-content/uploads/2023/02/Mindset-The-New-Psychology-of-Success-Dweck.pdf
📒 Summary + Notes | まとめノート
あなたのマインドセットはどちらか?
本書で対比されているマインドセットは硬直マインドセット、しなやかマインドセットです。
- 硬直マインドセット(Fixed mindset)
自分の能力は石版のように刻まれたように固定的で変わらないと信じている人。自分の能力を繰り返し証明せずにいられない。
人間の基本的な資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念がある人。
どちらのマインドセットを持っているかによって同じ結果であっても受け止め方が異なり、失敗から成長できるかが変わってきます。自分のマインドセットを知り、マインドセットをしなやかにするためにはどうすれば良いのか?
様々な有名プロスポーツなどの事例を見ながらなぜしなやかマインドセットが大切であるのかを見ていきます。
硬直マインドセットの特徴
硬直マインドセットの人はものごとが完全に自分の手中にあり、順調に進んでいる時はとても意気揚々とします。医学生の化学の授業はとても難しく、難関大学試験を突破してきた人たちは大学の授業で困難に直面して挫折してしまう人が少なくないと言います。
ジョン・マッケンローは有名なテニスプレーヤーですが硬直マインドセットの代表として本著であげられています。全て自分中心に回っており負けた時はラケットを叩きつけて何かが悪いと苛立つ。
硬直マインドセットの人は努力をすることがそもそも才能が無いと思うことがあり、失敗をするとうつのような症状を出すこともありました。
子供たちで硬直マインドセットに陥っている理由に、親から能力をほめらる傾向があり、しなやかマインドセットの子供たちは努力をほめられる傾向があり、能力をほめられる子供たちの知能は下がることが調査から分かります。
そういった子供たちはできなかった時に親に嘘をついたり、点数を高く伝えたりと見栄をはる傾向もありました。
スポーツ選手で他に登場したのはボストン・レッドソックスの有名選手ペドロ・マルティネス。彼の所属するボストン・レッドソックスはワールドシリーズに進出するも毎回敗退。呪いと言われたりもします。その呪いを晴らすチャンスのワールドシリーズ挑戦をかけた一戦でマルティネスは苛立ち死球を与え、ビーンボールを投げ、相手コーチを引き倒す乱闘を起こします。
経営者の硬直マインドセットも描かれています。アイアコッカはその一例です。社内の意見が異なるものを辞職させ、自分が歴史にどのように名を残せるかばかりを考え結果日本車の勢いに負け、日本車に対して非難と言い訳を重ねます。
エンロンのケネス、スキリングもその例としてあげられています。自身を偉大な経営者と語り、社員たちを見下し自分の事しか考えない人間でした。集団浅慮に陥る状態となりエンロンはご存知のとおり不正会計問題で破綻します。
どう教育に活用するか?
子供にかける言葉や親の態度で子供がどのようなマインドセットを育むのかが変わってきます。そしたらどうすればよいのでしょうか?
成功した時にどんな言葉をかけるか
- 頭の良さをほめると学習意欲が損なわれる
- 努力と成長に注目したメッセージを送る
- 素早く完璧にできることを褒めると難しい事を避けがちになる
- 失敗したときには、失敗から何を学ぶか、将来成功を勝ち取るために何をしなくてはならないかとアドバイスする
- 間違った方向にベストを望まない
シカゴのスラム地区の学校でマーヴァコリンズはしなやかマインドセットを育てて子どもたちがシェークスピアを読めるような学ぶ意欲のあるこどもたちに育てました。
才能や知能は必ず伸びると信じ、学ぶプロセスをとても大切にすること。到達基準を下げずに、簡単に基準を下げないこと。を実施していました。
しなやかマインドセット
しなやかマインドセットの鍵は信念です。幸福のカギは信念であり、不幸のカギも信念ということは精神科医のアーロン・ベックが1960年代に見つけました。
短絡的に楽になりたい人たちは硬直マインドセットになりがちで頼るようになります。
世の中が悪いではなく挑戦と捉える
苦しい状況でふさぎ込むのではなく、努力して成長を楽しむ
マインドセットがしなやかになると回りの人も助けてくれるようになる
私の人生は完璧だと思わない
硬直マインドセットの人は怒りのコントロールが上手くできず、当然のように怒ってしまう
- 今日は、私にとって、周囲の人にとって、どんな学習と成長のチャンスがあるだろうか?
- いつ、どこで、どのように実行しようか?
- いつ、どこで、どのように新たな計画を実行しようか?
- どんなに落ち込んでいても、行動に移すことが大事!
感想
物事に対するマインドセットが異なることでものの見え方や成長が変わってしまうという内容の本であり、楽観的に挑戦し失敗してもそこから学ぶ事により成長できるということで、本書の日本語訳の「やればできる!の研究」という抜群の訳に関心しました。
ビル・ゲイツのコメントにあるように、誰しもある分野でしなやかマインドセットであり、ある分野で硬直マインドセットであると思います。
My only criticism of the book is that Dweck slightly oversimplifies for her general audience. Contrary to the impression that Dweck creates here (but probably not in her academic papers), most of us are not purely fixed-mindset people or growth-mindset people. We’re both. When I was reading the book, I realized that I have approached some things with a growth mindset (like bridge) while other things in a fixed mindset (like basketball).
プロスポーツ選手の例の部分はちょっと極端に思うのですが主張したいことはとても分かりやすく、子どもの声掛けの仕方の重要性など以前に書評の感想で書いていました。
最近直面している問題で十分な大人(職場の人)が硬直マインドセットな場合どうしたら良いのかと考えています。外資系企業だとありがちなのかもしれませんが、海外に居る上司へのレポートは良いことばかり伝えて、実際に日本のオフィスサイドでは仕事をしていない問題社員というケースが結構な数直面します。
しかも特徴に隠蔽癖があり、挑戦はせずにできることばかりして、何か新しいことや不確定要素が含まれる事象を避ける傾向があります。
あくまで自分自身のマインドセットを変えよう、子どものマインドセットを変えようというのは比較的ラクな物事だと思いますしこういった本を読む時点で向上心があるまたは理解しようとする人であると思いますが、本当に問題がある人たちはこういった本を読むともすら思わない人たちではあります。
エンロンもペドロ・マルティネスもあれだけ優秀な人材が集まるプロフェッショナルの世界で硬直マインドセットのままになってしまったという事が本当に解決すべき所であると思いますがそこへの解は思いつきません。腐ったみかんがあると箱のみかんは腐るように、腐敗していくしか無いのでしょうか。
📚 Relating Books | 関連本・Web
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