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バフェットのマネーマインド――投資の神様はいかにして誕生したか | ロバート・G・ハグストローム (著), 小野 一郎 (翻訳) | 2023年書評107

バークシャー・ハサウェイのマンガーが99歳にて亡くなったというニュースが出ました。文字通りバフェットの右腕としてバークシャー・ハサウェイを支えてきた人物であり、バフェットに大きな影響を与えた人物です。

markets.businessinsider.com

バークシャー・ハサウェイはバフェットのバリュー投資と言われる良い株を長期持つという投資スタイルにてSP500を大幅に上回るリターンを出しています。

info.monex.co.jp

引用:https://info.monex.co.jp/yahoo-usstock-beginner/column/005/#:~:text=バークシャー・ハサウェイのリターンは,言われる所以なのだ。

この好結果を生み出した考え方がどのように育まれていったのかを知ることができる本です。

特に面白かったのは影響を受けた人物や本についてかなり幅広く紹介されており、バフェットが日々様々な勉強をこなして新しい考えを吟味して自分の投資に味をつけているのだなと感じます。

📒 Summary + Notes | まとめノート

若き日のバフェット

子供のころのバフェットはOne Thousand Ways to Make $1000というみネイカー著の本に出会います。オハマ効率図書館のベンソン支所で借りたその本にはお金を稼ぐための方法が様々ありました。

そこでハリー・ラーソンという人がドラックストアにある体重計はコインを入れて体重を測る事ができるサービスがあるのを見つけ店員に尋ねると売上の25%を店がもらい残りを体重計の所有者に分けるというものでした。ハリーはすぐに体重計を3台購入すると月98ドル稼げるようになった。さらに最初の3台が生み出した利益で67台を購入しいい暮らしをもたらしてくれた、という話に好奇心が刺激されます。

複利の話ですね。

ミネイカーはマネーマインドを鍛えるためには「始めること」と言います。誰もがタイミングや良い見通しの時期を待ち先延ばしにする。何もしないことは安全な場所に逃げ込む言い訳にすぎない、

バフェットは証券会社で勤務した後にネブラスカ大学に入り直します。1950年の夏にベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」「証券入門」を知り彼らが教授をしているコロンビア大学へ入学します。

当時グレアムの授業は革新的で、現在の株式価値をどのように評価するのかというのを、売上債権、現金、投資有価証券、流動資産を合計し負債を引き算して純資産とし、株価を見る事を教えていました。バリュー投資と呼ばれる考え方ですね。

バリュー投資の歴史

バフェットといえばバリュー投資と呼ばれるスタイルの投資法を行いますが、それはグレアムの影響を大きく受けます。

バフェットは大学卒業後地元に戻りますがグレアムと手紙をやりとりしていたこともありグレアムの会社へ入社します。

グレアムの基本スタンスは安く買い、負けないこと。バフェットは株式投資を通じてそこからブランドの価値や成長の遅い成長でも十分に価値のあるという視点を加えます。逆張りの精神もそこにはあります。

コカ・コーラの株式を買い始めた際には割安さは無くグレアムの教えを忘れたとも言われたそうですが、現在バークシャー・ハサウェイの中心投資先にあります。

バフェットはビジネスを評価するという考えも組み合わせます。この時代無形資産に対する価値の考え方に変化があり、ビジネスも特許など有形資産ではないものの価値が上昇した時代でもありました。

フィリップ・フィッシャーの「株式投資で普通でない利益を得る」はバフェットに大きな影響を与え、特に売上高と利益が長年にわたって同業他社よりも高い成長率を示している企業に目をつけます。

価値に基づく投資をするために

バフェットは価値に基づく投資を信念にしており、本書内で価値算出手法が様々でますがその問題点にも触れています。また価値に基づかない投資手法としてよく出てくるものは様々な名前がつけられている。

  • モメンタム
  • テクニカル
  • アセットアロケーション
  • インデックス
  • ヘッジ
  • タックスロス・セリングおよび株式贈与
  • ESG
  • マクロ投資
  • 高頻度取引
  • 投機

バフェットのような低頻度の取引スタイルの投資においてどれも合致するものではありません。バフェットは効率的市場仮説に関しても明確に見解をしめしており、「市場が効率的である状態が頻繁に起こることは観察したのは正当ですが、常に市場は効率的であると結論づけてしまったのは誤りです」と言っている。

感想

バフェットの投資スタイルや投資に対する考え(マネーマインド)をバフェットの生い立ちから遡り、グレアム、トッド、マンガーという影響を与えた人物とのやりとりや影響を受けた考えを追いながらまとめた本です。

学術的な株式投資の考えに対するある種ネガティブな視点も語りながら書かれており具体的な必勝法のようなものは書かれてないです。

考えが形成されるまでの過程がかなり興味深く、かなり幅広い本も紹介されており教育や心理学、何よりもOne thousand Ways to Make $1000の引用にある「始めること」の重要性も強調されています。

多くの人は株式投資を呼ばれるとアクティブ投資 vs インデックス投資というような考えですが、バフェットはその中間にあたるようなスタイルであり、アクティブと言えるほど頻度は高くないですが銘柄選定をしないインデックスのスタイルではないです。

逆にこの本に書いてないことには、投機的な取引をする場合にはバフェットのように長期保有することは向いていない投資になるために、ある程度利益が出たら手仕舞いする方がきっと良いのでしょう。

今のインデックス投資全盛の考えは否定しないですしそれがほとんどの人にとってみると正解だと思うので、コア・サテライト方針で基本的な安定を求める部分はインデックスに投資し、サテライト的にバフェットが言うような価値に基づいた投資を実践できればなと思います。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3RMP4ah 株で富を築くバフェットの法則[最新版] Kindle版 ロバート・G・ハグストローム (著), 小野 一郎 (翻訳)
  2. https://amzn.to/3Nq4Mpe 賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法 単行本 – 2000/9/1 ベンジャミン グレアム (著), 土光 篤洋 (著), Benjamin Graham (著)
  3. https://amzn.to/3GHosRH One Thousand Ways to Make $1000 (English Edition) Kindle版 英語版 F.C. Minaker (著)
  4. https://amzn.to/47Yfo6Z 証券分析【第6版】――原則と技術 (ウィザードブックシリーズ) 単行本 – 2023/11/20 ベンジャミン・グレアム (著), デビッド・L・ドッド (著), セス・クラーマン (著), 長岡半太郎 (監修), 田中陸 (翻訳)
  5. https://amzn.to/3NxiM0h 人間知性論 1 (岩波文庫 白 7-1) 文庫 – 1972/10/16 ジョン・ロック (著), 大槻 春彦 (翻訳)
  6. https://amzn.to/3RopXJf コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1) 文庫 – 1976/4/16 トーマス ペイン (著), 小松 春雄 (翻訳)
  7. https://amzn.to/3tnmdjq 森の生活 上: ウォールデン (岩波文庫) 文庫 – 1995/9/18 H.D. ソロー (著), Henry David Thoreau (原名), 飯田 実 (翻訳)
  8. https://amzn.to/3uWj9Lk ビジネスは人なり 投資は価値なり―ウォーレン・バフェット 単行本 – 1998/5/1 ロジャー ローウェンスタイン (著), Roger Lowenstein (原名), ビジネスバンク (翻訳)
  9. https://amzn.to/3GKELgp 自省録 (岩波文庫) 文庫 – 2007/2/16 マルクスアウレーリウス (著), 神谷 美恵子 (翻訳)
  10. https://amzn.to/3tjVfJh Benjamin Graham on Value Investing: Lessons from the Dean of Wall Street ハードカバー – 1994/10/1 英語版 Janet Lowe (著)
  11. https://amzn.to/3GI3aTY Poor Charlie’s Almanack: The Essential Wit and Wisdom of Charles T. Munger (English Edition) Kindle版 英語版 Charles T. Munger (著), Peter D. Kaufman (編集), John Collison (はしがき), Warren Buffett (はしがき)
  12. https://amzn.to/47ZITFo 人はなぜ失敗するのか 単行本 – 1999/7/1 ディートリッヒ デルナー (著), Dietrich D¨orner (原名), 近藤 駿介 (翻訳)
  13. https://amzn.to/3TsPeEJ 影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理 単行本 – 2023/11/10 ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 (翻訳)
  14. https://amzn.to/473JwfV 純粋理性批判 1 (光文社古典新訳文庫) Kindle版 カント (著), 中山 元 (翻訳)
  15. https://amzn.to/48ff8zW 人間本性論 第1巻〈普及版〉: 知性について 単行本 – 2019/4/19 David Hume (原名), デイヴィッド ヒューム (著), 木曾 好能 (翻訳)
  16. https://amzn.to/477uYvv 人間知性研究 (近代社会思想コレクション) 単行本 – 2018/12/3 デイヴィッド ヒューム (著), 神野 慧一郎 (翻訳), 中才 敏郎 (翻訳)
  17. https://amzn.to/48101ul 道徳原理の研究 単行本 – 1993/4/1 デイヴィッド ヒューム (著), David Hume (原名), 渡部 峻明 (翻訳)
  18. https://amzn.to/3tmw5d8 Ralph Waldo Emerson Collection: Collected Essays and Lectures: Nature, The American Scholar, Essays: First and Second Series, Representative Men, The Conduct of Life, English Traits (English Edition) Kindle版 英語版 Ralph Emerson (著)
  19. https://amzn.to/4akXBsb 破天荒な経営者たち ──8人の型破りなCEOが実現した桁外れの成功 (ウィザードブックシリーズ) 単行本 – 2014/1/20 英語版 ウィリアム・N・ソーンダイク・ジュニア (著)
  20. https://amzn.to/3GRLiG1 株式投資で普通でない利益を得る (ウィザードブックシリーズ) 単行本 – 2016/7/16 フィリップ・A・フィッシャー (著)
  21. https://amzn.to/3RLcRqT 日経BPラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 1 単行本 – 2016/7/13 ヨーゼフ・シュンペーター (著), 大野一 (翻訳)
  22. https://amzn.to/41nmShf 投資価値理論 ──株式と債券を正しく評価する方法 Kindle版 ジョン・バー・ウィリアムズ (著)
  23. https://amzn.to/3TtFL0a 新版 バリュー投資入門 ──グレアムとバフェットを超えるために (ウィザードブックシリーズ Vol. 323) 単行本 – 2021/12/13 ブルース・C・グリーンウォルド (著)
  24. https://amzn.to/3NuyuJC 盗まれた手紙 Kindleエドガー・アラン ポー (著), 佐々木 直次郎 (翻訳)
  25. https://amzn.to/3RMX6zX イノベーションの普及 Kindle版 エベレット・ロジャーズ (著), 三藤利雄 (翻訳)
  26. https://amzn.to/3Rtwoel Technological Revolutions and Financial Capital: The Dynamics of Bubbles and Golden Ages ペーパーバック – 2003/4/1 英語版 Carlota Perez (著)
  27. https://amzn.to/48iR2EK The Economy As An Evolving Complex System (Santa Fe Institute) (English Edition) 1st 版, Kindle版 英語版 Philip W. Anderson (著)
  28. https://amzn.to/3GNmf72 キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論 Kindle版 ジェフリー・ムーア (著), 川又 政治 (翻訳)
  29. https://amzn.to/3RKkqhB 収益逓増と経路依存―複雑系の経済学 単行本 – 2003/1/1 W.ブライアン アーサー (著), W.Brian Arthur (原名), 有賀 裕二 (翻訳)
  30. https://amzn.to/3RIeMN0 ゴリラゲーム ― 株式投資の黄金律 単行本 – 2001/9/18 ジェフリー・A・ムーア (著), ポール・ジョンソン (著), トム・キッポラ (著), 高田 有現 (著), 斉藤 幸一 (著), 荒井 拓也 (著)
  31. https://amzn.to/3tlP5sc 情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPラシックス) 単行本 – 2018/2/24 カール・シャピロ (著), ハル・ヴァリアン (著)
  32. https://amzn.to/3TKy06f Financial Strategy: Studies in the Creation, Transfer, and Destruction of Shareholder Value ハードカバー – 1979/4/1 英語版 William E. Fruhan (著)
  33. https://amzn.to/4aqR3bi 哲学探究 単行本 – 2020/11/13 ルートウィッヒ・ウィトゲンシュタイン (著), 鬼界 彰夫 (翻訳)
  34. https://amzn.to/3GKMc7j 競争戦略の謎を解く Kindle版 ブルース グリーンウォルド (著), ジャッド カーン (著), 辻谷 一美 (翻訳)
  35. https://amzn.to/480re0b 価値と資本: 資本主義の理論的基盤 (明治大学社会科学研究所叢書) 単行本 – 2017/9/20 飯田 和人 (著)
  36. https://amzn.to/4ai67rX 科学革命の構造 新版 単行本 – スペシャル・エディション, 2023/6/13 トマス・S・クーン (原著), イアン・ハッキング (解説), 青木薫 (翻訳)
  37. https://amzn.to/4807g5S 経験と教育 (講談社学術文庫) 文庫 – 2004/10/9 ジョン・デューイ (著), 市村 尚久 (翻訳)
  38. https://amzn.to/3v0ZeLx 心理学〈上〉 (岩波文庫) 文庫 – 1992/12/16 W. ジェームズ (著), 今田 寛 (翻訳)
  39. https://amzn.to/3RmTlzL 美徳なき時代【新装版】 単行本 – 2021/11/4 アラスデア・マッキンタイア (著), 篠﨑榮 (翻訳)