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教養としての「金利」 | 田渕 直也 (著) | 2024年書評104

株の勉強を進める中でいくつか金利本を読んでいたのもあり、久しぶりの金利本を読んでみました。

金利」と呼ばれているものでわかりづらい要因となっているのが、利息のことを金利や利率を金利と呼んだり、利回りのことを金利と呼ぶこともあるために、文脈で理解する必要があるややこしい使われ方をしていることがあります。

そんなややこしい、けれども金融の世界で基盤として働いている金利というものについて理解を深められる本でした。

本書を機にどの金利本を読んだのかなと振り返ってみると結構読んでました。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

金利の歴史

金利の歴史はお金の歴史よりも古いもので、メソポタミア文明から存在していたと言われています。貨幣が使われる前に銀や小麦が貨幣代わりに使用されていたころ、法定上限金利とされていたものとして穀物33.3%、銀20%というものがありました。(紀元前18世紀、4000年前)

紙幣の歴史は11世紀ごろの中国の交子が最初であり、そもそも硬化の預かり証としての役割でしたが後に紙幣としての役割を持ちました。

興味深いことに宗教的金利が禁止されている側面があります。イスラム教では現代でも金利の部分は手数料やリース料という名目になっています。キリスト教もかつては金利が禁止されていましたが、中世のユダヤ教の人々は「他教徒であれば金利を取って良い」というされていたことからキリスト教徒に金貸しがありました。

16〜18世紀のヨーロッパは戦争を繰り返しており、そこには国王が多くのお金を銀行から借りては踏み倒すという事が横行していたために高い金利を課すようになります。イギリスの名誉革命の際には、国の借金について国家が責任を持つようになり、国債というシステムが育まれます。

金利の3つの役割

  1. 利息を計算する
  2. 投資対象の収益性を判断する
  3. 投資対象に投資すべき価格を計算する

金利の種類

金利には一般的に市場できまる市場金利中央銀行が誘導目標の対象としている政策金利があります。

政策金利が出発点となり、市場金利が決まり、その後の預金金利やローン金利が変動していく関係性にあります。

景気と金利の関係

経済活動にお金のやりとりが関連しているため、経済が活発になればお金のやりとりが増えます。つまりお金を借りてでも生産力を伸ばしたり、広告をうったりして売上が伸びるために借り入れ意欲が高い状態です。その場合は多少金利が高くてもお金を借りる人が多い状態です。成長力が高い国は平均的な金利水準が高くなります。

中央銀行の役割として「物価の安定」「雇用の最大化」があります。景気が良くなりすぎると金利は上がっていくために中央銀行は金融引締を実施して沈静化して、物価の上昇を防ぐことを行います。物価の安定として言われている指標は2%であり、多くの中央銀行が採用している目標値となっています。

金利と株式

本書で一番勉強になったのは株価と金利の関係です。

理論上の株価=配当(1株あたり)/(リスクフリー金利+リスクプレミアムー配当成長率)

という理論上の株価計算式があります。こちらに配当だけでなく、内部留保分も含めた計算式は次のようになります。

理論上の株価=純利益(1株あたり)/(リスクフリー金利+リスクプレミアムー純利益成長率)

この式から言えることとして下記のようなものがあります。

  • EPS(1株あたりの純利益)が上がると理論株価は上がる
  • 金利が下がると株価が上がる
  • 投資家がリスクを選好する度合いが強まると株価は上がる
  • EPSの成長期待が高まると株価は上がる

また、PERを用いて置き換えることもでき下記のようになります。

理論上のPER=1 /(リスクフリー金利+リスクプレミアムーEPS成長率)

市場全体の割高感の評価をする際に見たりする方も多い指標になります。

引用:https://nikkeiyosoku.com/nikkeiper/

感想

今まで読んだ金利本の中でもわかりやすく、包括的に勉強できるものだったと思いました。

EPSとPERにおける話はよく割高感について語られる時に出てくるものであり、これから日銀が利上げを見込んでいる中でどのように市場を見るのかという点で重要な指標です。

www.dlri.co.jp

金利と言われると難しい印象があるのですが、お金の貸し借りの利子は経済活動の根幹であるので、定期的に金利にまつわり本は読んでいきたいと思いました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3BZfW1n そのとき、「お金」で歴史が動いた 単行本(ソフトカバー) – 2021/1/14 ホン・チュヌク (著), 米津篤八 (翻訳)