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改訂版 金利を見れば投資はうまくいく | 堀井正孝 (著) | 2023年書評#60

今年に入ってから金利に関わる本を何冊か読んでみましたが、本当に勉強になります。本書も同様に金利について理解することで投資を少しでも成功させる方向にもっていこうというための本です。よく見る投資系のYoutuberタザキさんもわかりやすく解説してくれているのでこちらもおすすめでした。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

金利は炭鉱のカナリア

炭鉱では危険を察知すると様子が代わるカナリアを連れて作業していたと言われています。金利も投資ではカナリアのように危険を察知して先に動くものです。

2018年の後半に長期金利は低下し始め景気の変化の合図を見せ始めると、2019年の3月には長短金利差が逆転する現象を店、景気後退の強いサインへと代わりました。

というのも経済活動は多くの場面でお金を借りて企業活動や個人の物件購入などされています。景気の行き過ぎ感を見ると金利をコントロールすることで抑制しようとします。インフレを抑えるときも同様です。

景気の予測に使用する3つの金利は:

またこれらの信用を格付けするムーディーズS&Pなどが国債社債の格付けを行ったりしています。

3つの景気サイクル

企業活動の中で著者は3つのサイクルに注目しそれぞれを信用サイクル、金融政策サイクル、在庫サイクルとして長期〜短期のサイクルを紹介しています。

10年程度の信用サイクル

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借入収縮 調達金利低下 借入拡大 調達金利上昇
信用回復 景気上向き 信用悪化 景気下向き

信用サイクルは銀行の融資状況と密に関連しており、①リスクオン局面②レバレッジ局面③リスクオフ局面④財務緊縮局面とのフェーズがあり、①、②の状態は融資に積極的な時期です。要は住宅ローンなど組みやすく、企業も借入をしやすいために、景気が良いムードがあります。

一方でリスクオフ局面が始まると、融資がしにくい状態になるために、デフォルトも増加。併せて動くのが社債スプレッドと呼ばれる社債国債の差額です。企業は銀行から借りにくい状態であるため社債を発行して資金調達しますが、資金が集まりにくい状態のために利率をよくする必要があるため社債スプレッドが増加してくると冬局面であることが伺えます。

この社債スプレッドの拡大と同時に株高が起きていると、景気悪化のサインとされており、企業の自社株買いなどが起きて株高が加速していると財務状態が悪化している兆候であるために注意が必要です。

社債スプレッドに先駆ける指標にスワップ・スプレッドもあります。

5年程度の金融政策サイクル

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金融緩和 景気回復 金融引き締め 景気減速
利下げ   利上げ  

2.5年程度の在庫サイクル

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生産減 売れ行き好調 生産増 売れ行き不振
在庫減 在庫減 在庫増 在庫増

これらを組み合わせて一覧にしたものが以下です。

   
景気循環 景気 回復 加熱 減速 後退
  金融政策 様子見 利上げ 様子見 利下げ
金利の動き 短期金利 横ばい 上昇 横ばい 低下
  長期金利 上昇 穏やかな上昇 低下 穏やかな低下
  長短金利 拡大 縮小 縮小 拡大

ポイントは長期金利短期金利よりも先に動き、景気後退の合図にもなります。長短金利差が逆転すると冬が近づいています。イールドカーブが注目される理由はここにあります。

金利による投資環境評価

投資環境を評価するために見る金利指標としてまとめられているのは5つのデータです。これらについてそれぞれ直近と1年前の様子を見て判定していくそうです。

  1. 政策金利(FEDFUNDS:Effective Federal Funds Rate)https://fred.stlouisfed.org/series/FEDFUNDS

    前年差0.25以上であれば+2、未満であれば-2

  2. 10年国債利回り(DGS10:10-yearTreasury Constant Maturity Rate)https://fred.stlouisfed.org/series/DGS10

    前年差0以上であれべ+2、未満であれば-2

    また長短金利差について、1以上であれば+2、1〜0であれば0、0未満であれば-2

  3. 社債スプレッド(BAA10Y:Monday’s Seasoned Baa Corporate Bond Yield Relative to Yield on 10-Year Treasury Constant Maturity)https://fred.stlouisfed.org/series/BAA10Y

    前年差0以上であれべ+2、未満であれば-2

  4. 米ドル指数(TWEXMMTH)https://fred.stlouisfed.org/series/TWEXMMTH

    前年差0以上であれべ+2、未満であれば-2

  5. 米ドル指数(TWEXBGSMTH)https://fred.stlouisfed.org/series/TWEXBGSMTH

これらが-6以下になるとボトムに近いことを示唆しており、ITバブルやリーマンショック、コロナショックでは-6以下となっておりました。

実際の投資行動にどのように反映するべきかというところがきになるものですがそれも一覧にまとめられています。

 
金融商品 先進国株式 新興国株式 債券 REIT
債券 HY社債新興国 豪ドル債 先進国外債 国内債
株式 ハイテク 素材 公益、医薬品 銀行、小売

感想

金利の解説本としても良かったですが、何よりもコロナ後の景況も踏まえて本の中では最も最近の事例まで取り扱ってくれている本である点はリアルタイム性が高く勉強になりました。

経済活動の中で金利が消費の根源になっている側面が強いために、投資活動をして資本主義に参加するのであれば金利の理解を進め状況を確認することが一番良いように感じます。毎月積み立てするにしても、金利状況に応じて積立額を多少動かすだけでも良いリターンが期待されるように思いますし、金利のようにある程度のスピードの遅さや方向性があるものを指標にしておくというのはとても有意義に思います。

仮に株式だけ投資する人にとっても大枠のサイクルを理解しておくことで、セクターの選定に役立てると思いますし、またサイクルに沿わない場合の外れ値に関しても観測しやすいと思います。

コロナの場合、外出禁止という行動制限が重なり期待とは異なるサイクル傾向であったかもしれませんが、基本の動き方を知っておいた場合は外れ方の関連付けや予測も考えやすいです。投資でものすごいリターンを期待していたり得られたりはしていないのですが、投資を始める前は運の要素が殆どだと思っていた物事がそうでないと感じることができ、面白い本でした。

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