年始に読んだブレイディみかこさんのぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルーの続編を読みました。
ブレイディみかこさんはイギリスブライトン在住で配偶者と書かれるアイルランド人の夫と地元の元不良中学校に通う13歳の息子と暮らしており、この本ではそんな彼女たちの日常が描かれています。
先日すっかり親世代になっている大学時代の友人たちとご飯を食べていたのですが、子供から毎日いろんなこと学んでばかりいると言っているのを思い出すぐらいに、本書では日々子供や配偶者からの気づきや些細な日常が描かれていてとてもおもしろい本です。
日本とは違い移民が多いイギリスの裕福とは言えないブライトンという街で起こる日常は人種の違いや価値観の違いが豊富に描かれており、日本という国の特殊性を感じるとともに人種が入り混じって生活する難しさなども伝わってきます。
📒 Summary + Notes | まとめノート
循環とルーマニア人
ある日家の前にバンに乗った知らない人たちが家の回りを走っており、配偶者が車庫にある使わない子供用の自転車をそのルーマニア人たちに渡します。(おそらくジプシーと呼ばれる放牧民と思われます)
配偶者は元々アイルランドの移民であり、このような貧困層の移民に対する感情もあるために、仲良くし定期的に巡回してくるようになると、今度は小さな街ということもあって、このルーマニア人たちが来て近隣のものが盗まれてるのではという心配の声が上がります。
子供も学校で「お前のとこルーマニア人と仲良いのだろ」というような事を言われたりと騒ぎが少し大きくなり、色々と要らないものを上げ続けて居ましたがある時巡回してこなくなります。
突然戻ってきたと思ったときには車庫の断捨離も一通り落ち着き、別の回収業者に鉄くずも出してしまっていました。もうすぐ子供が生まれるということでベビー用品をまとめて上げていた袋を持って帰ってきて、「生まれたけど、死んでいた」と言われ丁寧に返しにきました。
母親は無事だと言うことで良かったものの、貧困生活の中一家みんなでバンにのり出産間近まで動き回っていた中での残念な出来事でした。
ジェンダーとノンバイナリー
ノンバイナリーの話題もあり、学校の先生にも2人ノンバイナリーがいました。配偶者が彼らをなんと呼ぶのかと聞くと、子供は「They」と呼ばれたいと言います。配偶者はそんなの混乱を招くだろう、複数でも無い時に複数の呼称で呼ぶと‥と慣れない様子。子供の方が新しい価値観に柔軟に対応しています。
そんな子供が福岡の実家に帰省する時に、日本で平日の昼間に見るのは女性ばかりであるという事に気が付きます。イギリスではより平日の昼間であっても男女のバランスは保たれているようで、日本のように女性が家事をする文化は日本に強いのでしょうか。
ちょっとクスっとするエピソードはそんな帰省からイギリスへ変える時、祖父と息子がエモーショナルになるようで、福岡空港の保安検査場前でいつも泣きながら別れを惜しむことです。今回はさらに手紙も書くなんて言い出して、さらに大変な状態になるのでは、と不吉な予感がしていたと言います。息子は祖父に向けた手紙の翻訳をブレイディみかこさんに頼み日本語で書きます。ソウル経由で帰るための福岡ーソウル間で息子はまた泣きっぱなしだったそうです。
隣人たち
元々住んでいた長い付き合いの隣人が子供も育ち親になったということで家を売り払い違う家へ引っ越すということで、新しいポーランド人の妻を持つ一家が移り住みます。
元々の住人はDIYで色々と工夫をしながら家を作り上げていましたが、新しいポーランド人の妻一家が来ると綺麗に内装を工事して住み始め時代の変化を感じていました。
そうすると、元住人の母親がしきりに街へ戻ってきては車で巡回しているようで見かけた時に家でお茶でも?と誘い喜ばれます。60年も過ごしてきた街から新しい土地ではまだ話す相手もおらずさみしい思いをしていたようです。
一方で新しく来た家族は早々に離婚して夫が出ていく事になりました。育児休暇から早く復帰してファイナンシャルアドバイザーとして戻るようで、都合が合わなくて断ったがベビーシッターのお誘いなどされます。こちらの女性は現代的な価値観で良い学校へ行って良い大学へ行かせたいという思いがあるようで、子供が通っていたカトリック系の小学校の事を子供にしきりに聞いて、何でそのままカトリック系の優秀な中学校へ行かずに元底辺学校へいかせたのか?と子供へ質問します。
学校の課題
子供の学校の課題でスピーチのテストがあり、スピーチの書き方メソッドを習っていました。5Sと呼ばれる手法で思わず自分の執筆にも活かせると思いコピーしたそうです。
- Situation(聞き手が想像できるようなシーンを設定して議論を始める)
- Strongest(演説の最も重要な主張を提示する)
- Story(個人の経験談を用いて自分の主張を裏付ける)
- Shut down(反論を封じ込める)
- Solution(処方箋を提案する)
他にもプロデューサーとして、街のコンサートをプロデュースするという課題があったようで、コンサート会場に費用や搬入のルールを聞いてまとめるというようなものがあり、息子が選んだ会場は今まで卒業生が選ばなかったロケーションを選んだためにコンサート会場に電話して聞かなければいけない事になります。中学生にして大人に電話して色々と質問するということで横に母親が座り電話するのですが、音楽好きということがわかると相手も意気揚々と説明してくれてしっかりと聞きたいことを聞けて電話を完了します。
こういった難しいことができるようになったのかと関心する親心が子育てにはありますよね。
感想
日常生活や子育てから見える世界をビビッドに描かれており、日本の生活とのコントラストもとても興味深く読むことができました。
最近コロナが開けて出張や旅行するようになり色々な土地に行くのですが、その土地それぞれに自分が生きてきた文化や価値観と異なるものが転がっていてそこを見つけていく、知っていくというのはとてもおもしろいものですよね。
自分自身もイギリスの田舎街で少し生活した経験があるのですが、その思い出もあってイギリスの生活ってこうだよなと思える所があります。
日常の物事がこれだけ面白くなるということを考えると、自分がつまらないと思っている何気ない日々も解像度を上げて見るときっと面白いのだろうなと感じます。
日々の面白さを仕事やSNSで見過ごしていると思うと残念な気持ちになります。もう少し日々の生活に目を向け直して改めて細かな楽しさを見つけたり、考えたことや出来事を書き留めたりというような習慣って、この時代だからこそ意識的に行わないとより何となく年を取りそうだなと思います。
日々の出来事や旅行での発見など今後書けたらと思いますので、楽しんで頂ければ嬉しいです。