コロナが始まってから海外旅行しながら年末年始を過ごしのではなく実家に行かざるを得ない状況になったのを機に実家で1週間ほど滞在し、両親とゆっくり日常を過ごすようにしています。
せっかくなので同じ空間で過ごす時間を増やそうと思いリビングで本を読みながら適当な会話やテレビをチラチラ見てたのですが、自分が持ち込んだ本を両親が読み始めて置いて来ることになった。
両親が比較的長くて読むのに時間がかかるタイプの本を読む人たちだとは思っていなかったので少し驚きながらも、一緒の空間に誰か居ながら本を読むのも幸せなものだなと思う時間でした。
旅行や日常を送る中で感じる事や発見があっても数ヶ月したら忘れてしまうので、日々の感情をどこかに記しておく事も今年はしたいものだなと思ったので、書評のみではなく雑記的なものも定期的に書ければと思います。
前置きが少し長くなりましたが、今回もまたブレイディみかこさんの著書を前回に続き読みました。
本書は著者のブレイディみかこさんのノンフィクションストーリーであり、英国ブライトンでアイルランド人の配偶者と子供っぽいのに逞しく生きていく息子の様子を書いている本になります。
貧困世帯が周囲に多く居る環境でボランティア活動や保育士の活動を通じてブライトンという街の生活であったり、イギリスにある中上流階級と公営住宅に居る恵まれない家庭の子供たちの様子などをビビッドに記されています。
銀行員を辞めてトラック運転手になった配偶者の思い切りのある発言や考えであったり、東洋人とアイルランド人の間に生まれ見た目が東洋人であり息子の思慮のある発言や考えからブレイディみかこさん自身が関心したりする様子がとても興味深い文章が続きます。
📒 Summary + Notes | まとめノート
元底辺中学校
ブレイディみかこさんの息子はカトリック系の小学校に通い、比較的にその地域では良い学校とされる所に行っていました。中学校への進学を機にイギリスでは学校を見学に行き選択することになるそうですが、バスで少し離れたカトリック系の落ち着いた学校に行くか、近所にある元底辺中学校へ行くのかという選択肢がありました。
元底辺中学校へ見学へ行くと、最近では音楽部の活動などが盛んでそうるすと不思議と成績も上がってきたという先生たちも活発な学校の雰囲気に息子含め惹かれ、最後は友達がその学校に進学を決めたという事もあり元底辺中学校へ進学することになりました。
白人の割合がほとんどであり、いじめや人種差別なども色々受けることになるだろうと思いつつ入学すると、いきなり演劇の試験があり準備していくことを求められており真面目な息子は準備していると、そこには準備したもう一人のダニエルと言う美男子と二人が主役として選ばれます。
ダニエルはハンガリー出身であり比較的恵まれた家庭ではあった一方でレイシズムが非意図的に垣間見れ、その後学校では嫌われつつも、その光景がほっとけ無い息子は仲良くなり、同じ音楽や映画の趣味が語れる友人になります。
プールサイドでの出来事
息子が市主催の水泳大会に出ることになり、行ってみるとそこは公立学校と私立学校の格差を見ることになります。横に居たタトゥーの入ったお母さんと話しているとプールサイドの人口密度が全然異なることを聞くと、あちらは私立学校のサイドで公立校がこちらなのよと、明確な区分けがされていました。
レースも一度に全校が泳げないために、最初に6校こちら側から参加し、次に3校私立学校の生徒たちのレースと分けられており、私立学校の生徒たちはしっかりと綺麗な泳ぎ方で全く違った競技の様子でした。
私立学校の生徒はみなプロのような綺麗な水着で、公立校の生徒はバカンスを楽しむようなダブっとした海パン姿。そこに公立校のレースにて派手な柄パンの陽気なお兄ちゃんが出て来ると隣のタトゥーのお母さんが「ゴー!ジャック!」と応援。全国大会に出るような競泳選手のようでダントツぶっちぎりでゴール。本来競泳水着を持っているのにわざわざ下品な格好をして勝つとうい姿はみんなのヒーローとして輝いていました。
息子のアイデンティティ
イギリスはブレクジットで揺れる中サッカーのワールドカップがあり、子供は日本を応援しつつ、日本が負けるとイギリスを応援するというしたたかに楽しんでいました。
「僕はイングランドに住んでいるけど、よく考えたら父ちゃんはアイルランド人で、母ちゃんは日本人だから、イングランドの血は流れていない。」と様々な所で自身のアイデンティティを考える場面が描写されています。
日本で祖父と会話する時は英語で話、日本語で話しかけられるという事で不思議に会話が通じるものの、福岡の田舎では酔っ払った親父に絡まれて「外人」と言われる事を認識します。
ブライトンで過ごす中にては年齢を重ねる毎に東洋人としての面影が増していき、見た目がイギリス人からはどんどん離れていく。
「ニーハオ」と話書けられたり、黄色の工事用で使うようなベストを着ていると「お似合いだね」というような人種差別発言を受けたりもする。
生徒会長の中華料理屋の中国人の息子がそれを聞いて昔から習っている空手の寸止めをするといじめっ子がよろけてコケて怪我をして怒られる羽目になると息子が負い目を感じていた。
様々とリアルな様子がとても興味深いものです。
感想
イギリスの学校制度や労働階級の様子がとても詳しく書いてあり異国の文化を知るという意味でもとても面白い本でした。
思えばイギリスのサッカーなども今では世界一市場の大きなサッカーリーグとして有名ですが、労働階級の人たちが熱中できる自分たちの街を代表する選手たちを一生懸命に応援するようなもので、パブでも労働階級の人たちがスポーツをお酒に浸りながら楽しむような場であるイメージがあります。
環境問題のデモに参加するにもイギリスでは学校を休むと親が罰金を払わなければいけないということで貧困層の子供たちは中々参加できなく、自分たちの主張を思いっきりする機会も平等でないのが実情のようです。
親は外国人であり、見た目も違う自分に時に悩みながらもたくましく、大人も関心させる子供の姿を見て未来の明るさを思うシーンもまさにそうだなと思います。子供たちに対して未来を憂う大人たちは子供のことをしっかりと見ていないのではないかという問いかけもはっとさせられるものがあります。
前回読んだ両手にトカレフでも書かれている格差社会やソーシャルワーカーなど日本からは中々知ることができないイギリスの実情をブレイディみかこさんの視点を通じて見られる本です。著者の着眼もこういった側面をしっかりと見る事で色々と考える部分が多く面白いものでした。
どの社会であっても問題はあり、イギリスなどの格差がはっきりしている世界では色濃く残る様子を見て日本はまだまだ恵まれている部分が多く良くも悪くも隠れていたり、格差は少ない社会なのかなと思います。
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