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起業のファイナンス増補改訂版 | 磯崎 哲也 (著) | 2025年書評12

起業がブーム化してからしばらく時間が経っており、行政もスタートアップ政策なども増えてきている時代かなと思います。アメリカがあまりに起業で成功しており生態系としての経済成長が著しく日米の格差を指摘することなどが起源なものかなと感じます。

仕事で中国の企業を接する機会があるのですが、中国の方が起業文化がまだ多い印象もあり挑戦して生活を変えたい、経済的成功を勝ち取りたいという意欲がみられます。

日本はかなり企業人文化が広まりかなり多くの人が企業に属することで安定的な経済的対価を取る立場に周り起業して個人としてまたは今無い企業を育てるという文化は少ないと思います。

本書は起業について情報が不足している所があるために、起業した場合の金銭面での情報をまとめてくれている本になります。それぞれの分野の内容はものすごく深いものであるかというとそうでは無いかも知れませんが、全体像を見渡すという意味ではとても貴重な本だったと思いました。

本書の最後にも書かれているのですが、起業で最も大事なのはファイナンスではなく、アニマルスピリットなる感や生き抜いていく意欲などになるのを理解しながらファイナンス面を勉強していきましょう。

📒 Summary + Notes | まとめノート

起業にあたる資金面

上場起業や個人が資金を得る手段として日本で代表的なものは銀行融資などです。銀行融資は今までの成果や財布事情を理解した中で融資の回収見込みを見積もり資金の提供判断をします。

一方ベンチャー企業は実績や懐事情はあまりかんばしくなく、未来の可能性に価値を持ちます。そのため銀行融資はあまりベンチャーに向く性質のものでは無いものになります。

ベンチャー企業への投資で一番の魅力は株式のキャピタルゲインになります。

  • 上場によるもの
  • バイアウトによるもの

上記2つが主な手段になります。

ベンチャー企業のライフサイクルには、シード、アーリー、ミドル、レイターとありIPO・上場があります。シードなどの前段階では新株予約権を対価に資金調達をし、ミドル以降になると未上場の株式発行など行われ、IPOの後に株を売却できる機会を得られます。

会社の始め方

最近は株式会社化せずに個人事業主や個人企業として事業をする事も増えましたが、株式会社の始め方をみていきます。登記にコストが掛かり、税務、有限責任、説明コスト、信用などをもとに会社を開始します。

会社の種類には合名会社、合資会社合同会社(LLC)、有限会社、株式会社、有限責任事業組合などがあります。ベンチャー企業は株式発行が重要になるために基本的には株式会社の選択になります。

事業計画も必須のものになっていきます。事業計画を立てる上では下記などをまとめます。

  • 会社概要
  • 外部環境:マーケットの概要、市場規模、市場の構造
  • 数値計画:販売計画、人員計画、損益計算、売上など
  • 資金調達の概要や資本政策

この中で財務諸表3表を作成するのは必須になってきます。財務諸表の数字はベンチャー企業にとって正確性は落ちてしまうことに注意になります。

企業価値

ベンチャー企業にとって難しい点に企業価値計算があります。現在の帳簿をもとに企業価値を作成する純資産法というものから、類似企業を参考にする類似企業比準法、未来の価値に注目したDCF法などがあります。

最近ではnoteのダウンラウンドなどのように結局の所企業価値は受給で決まる側面があります。IPO前の資金調達段階で企業価値が高く評価される際には需要サイドが強くIPO時に見直されて低くなるようなケースもみられています。

www.businessinsider.jp

ストックオプション

ベンチャー企業をする・働く中での醍醐味としてストックオプションがありますがそちらの概要も紹介されています。本書で書かれている株の種類の話とはまた別でストックオプションをどのように配布するのかという話で信託型ストックオプションは昨今問題に上がりました。

www.nikkei.com

感想

良くYoutubeやメディアなどで見る起業、スタートアップなどについて知ることができる本でした。ベンチャー創業や投資の魅力はやはりキャピタルゲインであり企業価値の成長による株式売却かなと読めました。

スタートアップ投資は魅力的な反面リスクの大きな事も読み取れます。投資先としては素人がするものでは無いと思いますが大きなキャピタルゲインとなるとスタートアップやベンチャー企業の話はキラキラストーリーが語られるのでその裏にある多くの屍も想像するようにしたいと思いました。

会社員をしている限りあまり詳しい財務情報やファイナンス情報にふれる事が少ないため身の回りの興味を持てる範囲から情報に接する習慣をつけることを今年のテーマにして財務面の感覚を身に着けたいと思いました。

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