最近はNewspicksのNPレポートシリーズが好きで上場廃止の話や倒産寸前の話などを知る仲で倒産企業についてどのような生態系があったのか知りたいと思い倒産の話を知れる本書を読みました。
著者は税理士法人TripleWinの方々です。ホームページが未だにhttpであるのは気になりますが、アットホームな様子が魅力的に見えます。
本書ではプロの税理士目線で倒産企業を見るにあたり財務諸表のどこを見るべきであるのか、そしてその視点を持って倒産企業の実例をみていく流れになります。
「既存の借入金返済・新たな借入れ」がフローであり、「その残額」がストックである。 フローは「キャッシュフロー計算書」を対象とし、ストックは賃借対照表の配列をキャッシュフロー計算書にリンクしやすいように並び替えた「キャッシュ体質図」を対象として、「キャッシュの安全性」を検討する。
📒 Summary + Notes | まとめノート
キャッシュ体質図
本書の見どころはキャッシュ体質図という表現です。通常貸借対照表においては流動性配列法という考えに基づき、流動性の高いものから順に記載していきます。キャッシュ体質図の提案はCF計算書にリンクしやすい順に並べ替えたものです。
引用:http://triplewin.or.jp/develop-system/
人間の身体と紐づけて悪玉資産、善玉資産などとカテゴリしてイメージを持ちやすい表現を用いたものになります。
悪玉資産:現金化を遮る資産であり売掛金、受取手形、棚卸資産などのこと
善玉負債:現金の減少を抑えることができる買掛金、支払い手形などのこと
脂肪資産:土地、建物などの固定資産のこと
エネルギー資本:主に利益剰余金のこと
キャッシュ体質図の良し悪し
ホームページの図が最もわかりやすいのですが、キャッシュ体質図の注目点をみていきましょう。
- 悪玉資産 > 善玉負債 流動資金の不足を意味する。あまりに差分が大きいとエネルギー資本または有利子負債部分から調達される
- 悪玉資産 < 善玉負債 流動資金が余剰している
- 脂肪資産 > エネルギー資本 差分だけ固定資産が不足している
- 脂肪資産 < エネルギー資本 差分だけ固定資産が余剰している
- 現金と有利子負債のバランス
CF計算書でフローの安全性をみる
短期的な安全性はCF計算書で見る必要があります。著者の主張はフローの安全性の分析とは有利子負債分析であると考えており、有利子負債を返済できれば、その企業はフローが安全性があると言えます。
営業CFは健全であればプラス、その額が有利子負債の約定返済額未満であればフローの安全性に問題が発生します。(本業での利益からローン返済が賄えない)
ストック・フローの安全性分析
安全性分析の手順は5つのステップで表現されています。
- 第1フェーズ:現状の現金等と有利子負債の比較
- 第2フェーズ:現金等と有利子負債のトレンド
- 第3フェーズ:「概ね留保経常収支額」と「有利子負債の約定返済額」を比較
- 第4フェーズ:営業CFの「その他」の検討
- 第5フェーズ:「運転資金のマイナス」の調達原資
感想
本書はより詳しく安全性分析がまとめられており、その方法によりレナウンやJALなどの財務分析が行われていました。売上が上がっていてよく見えるもののM&Aのスピードが早すぎて売上成長が止まった途端に有利子負債が返せなくて倒産になる、単純に売上が落ちてきて負債を返すために負債するというような現象など倒産になる理由は様々あるものの基本は負債を返せるようにしっかりと利益が上がっているのか、またそれができない場合には何か対応を行っているのかというような事を注目してみると倒産の確率が上がるかどうか読み取れるということでした。
昨年は上場企業であれば日本電解の倒産などもありました。
東京商工リサーチのレポートに倒産企業などまとめてくれていますのでこういった情報も参考に考えの引き出しを増やせるようにしたいと思います。