現代の資本社会ではキャッシュを一括で購入できない時にお金を貸して利子を上乗せして支払いをするという事が当たり前に行われています。そうすることによって家を購入できる人が増えて、企業は売上の成長をタイミングを逃さずに資金を投入して成長することができます。
利子や金利というものは資本主義で欠かせないトピックである一方で金利の知識というのは中々身に着けられないというのもある気がします。というのも金利などと触れる機会も少なく、また家などの大きな買い物の機会も人生に数回しかないために普段の生活と接点が少ない事が馴染みのない存在にしてしまっているように思います。
この資本主義社会で生活する中で欠かせない金利のシステムを理解したいと思い本書を読みました。
📒 Summary + Notes | まとめノート
そもそも金利とは
金利とはお金の貸借料のことです。お金を貸す方は一定期間お金が返ってこない、また途中で返済が滞るリスクを加味して賃借料を上乗せしてお金を貸し、この仕組は銀行を初め多くの場で活用されています。金利に関わる用語はこのような感じです。
金利:賃借料の元金や元本に対する割合(%)
利率:金融商品の収益率
利息:預金(お金を預ける)時の金利
利子:債券(お金を預ける)場合は利子
これらに対して年利や月利、日歩などで期間の異なる割合表現があり、金融の世界ではベーシスポイント(0.01%)を用います。金融商品などでややこしい表現が年6%の金利などとした商品がありますが、よく見てみると最初の1ヶ月だけなどあるので注意が必要です。
多くの人が金利と関わるのは住宅ローンの際の「固定金利」「変動金利」でしょうか。金利上昇が見込まれる局面では:
住宅ローンを組む際に金利が上がりそうであれば固定金利に、金融商品を買うのであれば変動型のものが良いでしょう。
銀行の主な設けは預金者から預金を集め、お金を企業や個人へ貸すことで利ざやを取ります。貸し出す方がリスクを取るために、預金金利<貸出金利という図式になります。
個人も企業もですが、金利が上がると支払い総額が高くなるために、あまりお金を借りたくなくなります。金利が下がると預金金利や国債利回りも下がるために金融商品からの収入も下がってしまうことになります。
企業評価で優良企業と呼ばれる基準の一つに無借金経営とありますが、これは借入れがないことを意味しており、つまり金利の影響を受けないために変動要素の無い予測が立てられます。一方でスタートアップなどの資金が潤沢に無いけれども広告費や設備投資を行い売上高を伸ばしたい企業にとっては借入れをする必要があり、借入金依存度などで財務の安定性を評価したりします。
金利を決める金融市場の仕組み
銀行は金融市場の金利を基準として賃借料の金利を決めているために、金融市場の金利水準はものすごく重要です。理解も浅いので詳細は解説できないのですが、短期(1年以下)か長期(1年超の取引)、金融機関が行うものか金融機関以外が参加する市場かなどあります。
短期金利の決まり方は日銀の金融政策に強い影響を受け、無担保コール翌日物金利は日銀が目標とする水準に誘導されます。(政策金利)これを引き上げることを利上げ、引き下げることを利下げと呼びます。
長期金融市場では債券が主であり、国債、地方債、社債など様々あり、その安全性や期間などからリスク評価され、リスクの高いものは金利が高く、低いものは金利が低くなります。債券を買いたい人が多いと、債券価格は上昇し、利回りは低下。売りたい人が多いと債券価格は低下し、利回りは上昇します。長期金利は将来の経済見通しに左右され、
インフレなく金利が上がらないと場合、国債は価格が上昇し利回りは低下。
インフレ進行し金利が上がる場合、国債価格は下落し利回り上昇。
します。
経済が金利を動かす仕組み
前述したようにお金の需給バランスで金利は変化します。沢山借りたい人がいれば高金利でも借りる人は出ますし、金利を下げないと借りないという人が多ければ金利は下がるように収斂されます。簡単に言うと下記のような関係性になります。
好景気 ー 金利高
不景気 ー 金利安
景気がよくなりすぎるとインフレも併せて起こりやすくなりますが、金利はスタビライザー機能があり、金利を高くすることで設けは少なくなり個人消費も鈍るために景気が良すぎてインフレが上がっていると、中央銀行は金利を上げることで沈静化しようとします。
逆に景気が悪いときには金利を下げることで設備投資や個人消費を戻す流れになれます。
長期金利は経済の高成長期には高く、低成長期には低くなるわけです。
伝統的金融政策としてはインフレ(好景気)のとき金融引締を行いデフレ(不景気)の時は金融緩和を行います。短期金利をコントロールするこの方法で結果が出なかったために、日銀は費伝統的金融政策である国債の大量買い入れやETF、REITの購入も実施しました。
この本で最も良かった点は日銀の政策を振り返ってくれている部分(P126〜)でした。
伝統的な金融政策は3種類ありそれぞれ実行された背景を解説してくれています
これらは1991年10月まで実行され、日本経済が長期低迷期に入っており金利は0%まで利下げされました。
2001年から非伝統的金融政策が開始され、量的緩和:国債、CP、社債、ETF、J-REITの買い入れ(包括的な金融緩和政策)ば実行。フォワードガイダンスを導入しました。
このように市中へ資金の供給を試みましたが、不良債権問題や資金需要が低調であったために思っていたほどの効果がありませんでした。
死に金と呼ばれる当座預金にペナルティを課すためにマイナス金利を開始。さらにはイールドカーブ・コントロール(長期金利操作)を実行し、指し値オペを導入。
次に見ていくのは為替についてです。為替も金利への影響を与える要因になります。日本のようなエネルギー資源輸入国家に対しては円高に動くと輸入コストが安くなり物価が安くなると、結果金利は低くなります。一方で円安に動いた場合には物価が上昇し金利も上がることになります。
金利と為替の関係をみると、米国の金利が上がれば米国の金融商品を保有している方が利益が見込まれるために円の価値は下がります。一方で日本の金利が上がれば円高に動くことになります。
株式相場に対しては、株価上昇した場合には債券→株式市場へ資金が流れ込むために債券価格は下がり利回りは上がります。株価下落した場合は株を持っているよりも預金や債券へと資金を移したい人が多くなるために、債券価格が上がり利回りが下がります。
ただし、株価が上がるということは好景気・インフレに繋がりますのでそうすると中央銀行としては金利を上げる政策を取ります。
本書とは別ですが、後藤達也さんの日銀振り返りも面白かったです。
金利動向を読み解く考え方とテクニック
本書でプロはどのように予測しているかというと
- 情報収集
- フィルタリング
- シナリオ構築
というサイクルを何度も繰り返し見通しを立てているそうです。
情報収集でどのようなものをウォッチしているかという点ですが、
がまず第一の着目点になります。
これらの見通しを予測するために
投資コストの注意点
本書の最後にかかれている部分でかつ投資する時の注意点で確かにと思ったことが手数料、信託報酬、信託財産留保額です。
最近投資信託で手数料ゼロなどを広告として掲げるパターンがあります。投資信託で利益が出た際の約20%の税金以外に上記3点のコストがかかってきます。(投資信託販売会社の設け部分)
最近流行りのインデックス投資は手数料が低く(かつリターンも高い事が多い)あります。アクティブ系、テーマ型のものですと手数料や信託報酬が高くあることが多いため、○○無料とうわわれていても何が無料であるのか、解約時にかかる費用が逆に高くなっていないかなどと注意する必要があります。
特にテーマ型の投資信託ですとテーマが終われば売却を促すことができるため、金融商品としては設けしろが多く見込まれます。
脳死でインデックス投資をしておけばこういった問題もあまり当たらないのですが投資初期ですとこういった背景を知らずになんとなく買ってしまうということもあると思うので今振り返ると注意したかったことでありました。
感想
資本主義にお金の貸し借りは必須であるのに金利について理解が乏しく2022年の株式市場で「金利が〜」と言われる事が多かったために気になっていたテーマでしたが、金利について知れるとても良い本でした。他にも2冊金利の本を購入し読んでいるので少しは勘所がついてきた気がします。
金利を理解していると一番良い点に利回りが異常に高いか低いかについて感覚がつかめて詐欺的な案件が感覚として認識できるところかなと思います。大金があればリスクの少ない債券でも十分な収入が見込まれますし、債券市場から大きく乖離した利回りを宣伝文句としている商材は怪しいものが多くあるように感じます。
中央銀行の政策(金利の上げ・下げ)により景気がどう思われているのか、政策の方向性により株価がどう動くことが見込まれるのかもつかめることができます。本書でも触れられているように日本では残念ながら中央銀行の政策が機能しない状態になってしまっているのですが、FRBなどの動向を見ていると中央銀行の政策により株式市場の変動が敏感に出ておりとても勉強になる年でした。
今後FRBの政策がどこまで市場への影響があるのかはその時々に依るとは思いますが、教科書的な動きをする側面も多くあり面白いものでした。
投資を始める時にまず勉強した方が言いテーマであることを本書を通じて実感しました。ただ、投資をする前にこのような金利の本を読んでみても何書いてあるんだ…となる気もするので興味が湧いた時に読んで見るしかないとは思いますが、とても良い本だと思いました。
投資をする方や興味ある方にとってはとてもおすすめです。