最近は米国の利上げも収まり今年の何処かのタイミングでは利下げに転じるという状況になりました。コロナ後顕著にFRBの発言が相場に大きな影響を与えるということが見受けられます。
本書ではFRBの仕組みについてコロナ禍でのアクションや議事録などを見返しつつ最新事例を交えて解説されています。仕組みを理解することで、リーチするべき一次ソースは何であるのかなどをプロの視点を通してまとめられているために、今後経済ニュースを見る中で気をつけるべきポイントを図り知れる気がします。
📒 Summary + Notes | まとめノート
FRBの仕組み
1931年にFRBは連邦準備銀行(12行)、FOMC(連邦公開市場委員会)の構成で設立されました。ちなみに日本ではFRBと呼ばれますが英語圏ですとFEDと呼ばれます。
引用:https://www.oanda.jp/lab-education/beginners/fundamentals_analysis/federal-reserve/
政策目標は主に2つあります。(デュアルマンデート)
- 雇用の最大化
- 物価の安定
この2つの目標のために5つの機能を持つとされています。
- 金融政策の実施
- 金融システムの安定化
- 個々の金融機関の安定性と健全性の促進
- 支払決済システムの安全制と効率性の促進
- 消費者保護と地域開発の促進
FRBには3つのテーマが掲げられており、株式市場に影響を与えるのは主に市場との対話部分と言えるでしょうか。
地区連銀12行の中でニューヨーク連銀は中核を成す存在になりまして、プライマリーディーラーと呼ばれる制度があります。FOMCで決定された金融政策を具体的に実行する存在です。どのような事が行われるかというのは下記例になります。
- 政策金利の誘導
- 量的金融緩和
- 貸出政策
- 為替市場介入
FOMCの経済会合スケジュールはあらかじめ調整されており、ECBや日銀などのスケジュールも確認することができますが、年に8回実施されます。
FOMCの経済見通し
先述したようにFRBの2つの政策目標は「物価の安定」「雇用の最大化」です。
これらに関してはトレードオフの関係があり、物価が下落すれば失業率は上昇する、失業率が低下すれば物価が上昇するという関係性が提唱されています。(フィリップス曲線)
FOMCでは経済状況と見てこの相反する2つの政策目標を安定する方向にコントロールしようとする役割があり、その判断材料として5つの指標が主に見られます。
- 実質GDP成長率
- 失業率
- PCEインフレ率
- コアPCEインフレ率(CPIも見られる)
- FFレート
例えばですが、FOMCのメンバーが経済指標を見てインフレしていると見通しが多いとインフレを対策するための政策が行われます。見通しに対して個々のFOMCメンバーがどう回答しているのか公表されているために、市場関係者はこれらの発表を見て参加者の多くがインフレが高まっていると感じているのか、収まってきているのかなどを読み取ろうとしています。
予測には失業率から考える側面もあります。失業率が高まっていると考えているFOMCメンバーが多くいるかどうかもどうように確認することができます。
同様にFFレートからも予測できドットチャートと呼ばれる政策金利の予想も市場関係者は注目しています。
本書で紹介されている基本的な優先順位はPCFインフレ率→FFレート→GDP成長率→失業率の考えですが、同時に複雑な要因ですので一つのシナリオとして紹介されています。
FOMCの声明文
これらの予想をいち早く見られるのは会合後のFOMCの声明文です。こちらもFEDのWebページに会合後に公開されます。
FRB議長が会見で内容を説明するのですが、これらに「警戒」などの言葉がどの程度使われているかなどから雰囲気を読み取ろうという動きが行われます。
会見後から3週間ほど経つと議事録が公開されるために、議事録の発表も大きな意味をもちます。
FRBの金融政策がなぜこれほどまで注目されるのかという背景には基軸通貨としてのドルに対する金利政策があるからです。例えば、失業率が低下して雇用状況が良くなっているというサインが出ると、経済が拡大しており、物価上昇の働きが生まれます。そうすると中央銀行は物価上昇を抑えるために金利を上昇させる動きが予想され、市場関係者はそこに対応する動きを見せます。
雇用の最大化、雇用統計に見られる動き
個人消費はGDPの割合で大きな部分を占めるために、雇用が最大化(失業率の低下)による就業者の増加、個人消費の増加は重要な着目点になります。
雇用統計で見られる重要な3要素は以下になります。
- 非農業部門雇用者数
- 失業率
- 平均時給
物価の安定に関して
もう一つの政策目標物価の安定に関してはPCE、CPIが注目されます。多くの国で目標とされている物価目標は2%のインフレです。2%の物価目標が安定的に継続できるという意識が各人にあるという事は念頭に入れておき、コロナ禍後におきた2%よりも大きなインフレなどがある場合にはそれを押さえつける金利調整が行われます。
金利政策が有効になるインフレであるかどうか、というのは状況に依ります。日本の現状のように輸入物価が高騰したことによるインフレはコストプッシュインフレと呼ばれ。需要が上回るインフレ(ディマンドプル型)とは区別されて考えられます。
これらのインフレ種類を見分けるためにもFOMCではインフレの分類を分けて判断し、食品やエネルギーであるのか、サービス価格なのか、住宅関連サービスのインフレなのかなど見ています。それらについて議事録などから読み取ることを市場関係者は実施します。
その他の経済指標
FOMCが意識されているとしている指標は他にもあります。
- ISM製造業購買担当者景気指数
- PMI購買担当者景気指数
- ニューヨーク連銀製造業景気指数
- フィラデルフィア泉銀製造業景気指数
- 消費者信頼感指数
- ミシガン大学消費者信頼感指数
- アトランタ連銀GDPNow
- 小売売上高
- 鉄工業生産指数
- 住宅着工件数
- 中古住宅販売件数
- S&Pケースシラー住宅価格指数
- 貿易収支
また地区連銀経済報告書(ベージュブック)も注目されます。
◆好評につき
— 後藤達也 (@goto_finance) 2022年4月24日
先日のおうかがいで「いいね」を6000以上も頂いたので、つくりました。ベージュブックを使った「英語で読む 米経済のいま」。私自身もかなり勉強になりました。昨日の音量トラブルも改善したので、よければ覗いてみてください🙇♂️
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感想
以前読んだ経済指標に関する本の中でよりコアな指標をFRBの仕組みを理解することを通じてまとめられた内容になっていました。
株式投資をしている大手企業や証券会社の人たちはこれらの動きを頻繁にチェックしており、大枠の流れを予想することで投資先を常に変更する動きをしています。思うに投資行動の説明基準にもなり、投資を委託している会社らが出資者たちに対して成績が悪い時(良い時)の説明材料になると思っています。
これらの細かい動きを追わず市場全体にベットするというようなSP500やオルカンのような投資信託を買う方法はほぼすべての人の正解になると思いますが、それらの人にとってもある時期の成績の上下に対して今は景気が悪いから下振れしているのか、などの理解するためにも知っておいて損は無い気がします。
細かい動向なんて言いから市場全体に賭けて後は日常の生活を豊かにしていきたいというような考えも十分にあるために、すべての人が知るべきかというとそうではないと思います。
ただし、大体の枠組みを理解しておく事はある意味変な投資案件に引っかかってしまわない対策にもなります。世界中でインフレ目標が2%であるという事は、経済成長を大きく超えるようなリターンを提示する投資案件を見た時に怪しさがわかります。また個人に大きな影響を与えるような住宅ローンについても日本のような状態であれば変動金利でしばらく大丈夫そうだななども判断ができます。
自分で判断できる材料を知っておくということはとても大切に思うので引き続き勉強できしていきたいと思います。