仕掛学の新刊が出たので早速読んでみました。
前回の著書では様々な事例集めてみたというようなものでしたが、今回のものは松村さんが関わって実施した事例とその結果を中心にまとめられており、タイトル通りより実践のものでした。
📒 Summary + Notes | まとめノート
仕掛学とは
「仕掛け」に学問をつけるとそんな学問あるのかな?という印象を持つ方もいるかも知れませんが、広義では行動経済学のナッジのようなもの、本書で言う定義では、FAD案件を満たしナッジのような認知バイアスによる行動呼びかけというよりは遊び心を利用した誘引としています。
F:Fairness 公平性
A:Attractiveness 誘引性
D:Duality of purpose 目的の二重星
著者の村松さんのWebページにも説明があります。
遊び心というポイントは重要視されていそうな印象であり、確かにどの紹介事例を見ても遊び心が高い案件が多いです。
これらに加えて、「利己的な行動」と「利他的な行動」が組み合わさっているようなものや、「新規性」や「親近性」があるものにより仕掛けの受け入れられ方が変わっていきます。
正論のジレンマ
ある地域でゴミのポイ捨て禁止という立て看板をつけた所、つける以前よりもゴミが捨てられるようになってしまったという事があります。人は立て看板を見ることで「ゴミが捨てられるような所なのだ」と認識し、一定数居るルールを守らない層の人たちがゴミを捨てだしてしまいました。
このような正論のアイデア(ポイ捨て禁止の立て看板を作る)は実行する時に選ばれやすいアイデアになるものの、安全感を持って選ばれてしまう側面があり、良い結果に繋がらないなんて事もあります。一方で前例のない物事に対しては、ハードルが高く説明が余計に必要になります。
正論がいつも正しいわけではないというのは、仕掛けのようなユーモアを持った物事をするときにはとても大事なマインドセットでしょうか。
仕掛学事例集
ゴミ箱の上にバスケットゴールを設置しゴミをボールに見立ててゴミを捨てるようになる、というものは代表作としてされています。
Webページを見てみると、本書内にまとめられている事例も多くあります。論文形式にまとめられているのでより詳しくみたい場合は下記リンクが良い気がします。
本書内では良い事例も悪い事例も両方書かれており失敗事例を読める事も面白かったです。
感想
仕掛学のような遊び心がある取り組みや事例を見るのはとても好きであるので楽しく読めました。
ちょっと気になるのは効果測定の部分がもう少し詳しくあって欲しいなと思うものが多く、多くの事例での効果測定が仕掛けをしたものしてないものを比較して何倍増えました、といったようなコメントでした。
例えば、ペットボトルの中に異物を入れて捨てられる対策にペットボトルを潰せる簡易装置を置いたところ異物混入割合が2.6%から0.4%になったとありますが、喫煙者が近くに居やすい環境であったら大きく変わるであろうし、そもそもペットボトルを潰す機械に興味を持つ人であると異物を入れるようなアクションをしない人に寄る可能性もあります。
仕掛けについて新しく見るものか、以前どこかで見たものかで効果は大きく変化するように思いますし、コピーされた仕掛けの場合効果が落ちたりするようにも感じます。
そうすると一過性の仕掛けになってしまいそうですし、また次の仕掛けを定期的に実行していかなければいけないという「仕掛ける」事が目的になったりもしてしまいそうです。
持続可能であり効果もある仕掛けという観点で世界を見られたらなと思いました。