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ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法 | 木下 勝寿 (著) | 2023年書評92

Webマーケティングの本で評判がよく北の達人という上場企業を率いている木下さんの本を読んでみました。Webマーケティングの中で結果を残し、商材も多く扱う中で見えてきたWebマーケティングの根本の部分、そしてそれを成功に導く戦略が書いてありました。

📒 Summary + Notes | まとめノート

Webマーケティングの全体像

Webというと消費者が簡単に比較できるようになってきました。その中で競合になるポイントは3点

  1. 世界中の最も品質が高い商品・サービス
  2. 世界中の最も価格が安い商品・サービス
  3. 世界中の最も到着が早い商品・サービス

Webでの販売が可能になったことで強烈な比較競争に巻き込まれる一方で、良い商品やサービスはよりダイレクトに顧客に届けられる事にもなり、今まで店舗を持つしか、大規模な広告をうつ、などコミュニケーションのコストが高かったものが一気に下がりました。

コストが下がった一方でWeb上での売出し方、マーケティングはまだまだ活用しきれていない部分もあり、データの解釈や顧客のリアクションなどに対してどういったアクションを取るのかという部分が不明確でもあります。

木下氏が提唱するWebマーケティングの全体像

引用:https://netshop.impress.co.jp/node/10720

商品自体はよくても、情報収集やコンセプトワークが間違っているというような事例が多く見られ、Webマーケティングの全体像を俯瞰的に見ながら必要な物事を認識していく必要性を説きます。

ファンダメンタルズクリエイティブ

上記の全体像の中でファンダメンタルズは全体をカバーしています。情報収集、コンセプトワーク、クリエイティブが主な部分になり、先程述べたように競争を行う中で注意点は3つ。

  • 世界中の商品と比較される事を前提に、一目でわかること
  • Web上ではスクロールしながら見られるため、最初の一文やパッと見た印象が肝心
  • 広告出稿メディアのセグメント機能を理解した上でのペルソナ設定

「誰に」x「何を」x「どう」伝えるのかという部分を明確化していく事が重要です。

「何を」

商品の訴求要素は選び方で売れ方が変わってきます。ターゲットユーザーと競合の存在により戦略的に考える必要があります。新車の場合でいうと例えば下記のようなものです。

  • デザイン的なカッコよさ→フェラーリ、ポルシェなど
  • 価格のやすさ→軽自動車、中古車
  • 運転性能→競合沢山

このコンセプトの部分で、誰に、何を、が定まっていないとメッセージが伝わらない事になってしまいます。

「どう」

何を?の部分が一番大切であるのは大前提なのですが、何が差別化できていないとどう?の部分を工夫するしかなくなります。例えば、広告のクリエイティブが良くて話題になったり、広告賞を受賞しようが結局売上が上がらなかったら意味がありません。

情報収集・事前リサーチ

Webマーケティングで基礎となる部分は事前リサーチです。マーケッターは原料メーカーに問い合わせたり自分で調べて強みを探さなければなりません。商品企画や商品開発からもらった情報を消費者に伝えるのではなく、売りとなる部分を再構築する事が仕事になります。

ユーザーインタビューはその一つで、キーワードとインサイトは必ず抑えておくべきポイントです。SNSを活用するのも一つの手です。また、専門家から情報や知識を得てそれを材料にして最終的な判断をしていきます。

マイケル・ポーターは競争の戦略にて、事業を左右する5つの力、既存の競合、仕入先、お客様、新規参入者、代替品販売者を指摘しています。これらの要素は随時入れ替わるために定期的に見直しが必要です。

ここでは、買うか・買わないかの選択肢も考慮し、4段階の深掘りで検討するとセールスコピーも効果的になりやすいです。

誰に伝えるか

ユーザーを考える事は誰に伝えるかでベースになります。本書ではニーズ9段階分類で考えており

  1. 対策の必要性に気づいていない
  2. 対策の必要性に気づいて入るが「悩みや痛みは一時的なもの」だと思っている。
  3. 対策の必要性を自覚しているし、悩みや痛みは一時的ではないと思っているが、何も手を打っていない
  4. 対策を色々検討し始めている
  5. 対策を色々検討してかなり詳しい状態
  6. 対策の手を打ち始めた
  7. 既にお気に入りの対策のための商品があり、満足している
  8. お気に入りの商品はあるが、他にもっと良いものはないかと思っている
  9. 色々使ったが結局満足するものはなかった

一方で商品起点では10段階分類で考えており

  1. 商品を知らない
  2. 知っているが、そこまで興味はわかず使ったことない
  3. 知っているが、使いたくないと思っている
  4. いつかは使いたいと思っているが、使ったことはない
  5. 以前は使っていたが、今は使っていない
  6. 以前は使っていたが、今はやめており、今後も使う気はない
  7. 今も使っているが、良いものがあれば乗り換えても良い
  8. 今も使っているが、可もなく不可もなく、今のところ替える気もない
  9. 今も使っており、満足しているので替える気がない
  10. そのジャンルの商品が好きで色々試したい

ペルソナ設定に関してはプロダクトの強みや利益を起点に最大公約数的に設定すべきで狭くなりすぎない事も大切です。

何を伝えるのか

UPS(Unique Selling Proposition)つまり独自の強みがメインメッセージになっていないとWebで中々際立つ事ができません。UPSは主に4つの観点がポイントとされています。

  1. 他社商品にはない便益を与えられる or 今までになかった便益を与えられる
  2. 他社商品よりも高い便益を与えられる
  3. 実績、権威性などの付加価値がある
  4. 金銭的お得感がある

また、商品品質から考えるのか商品付随要件に基づくものから考えるのかなどもあります。iPhoneの誕生時は他社商品にはない便益を与えられることをメインメッセージにされており、市場に類似商品が増えてきた現在では2や3などにシフトしてきており、今ではカメラ性能などがメインメッセージになりつつあります。

4の金銭的お得感に関しては他のUSPが見つけられていないための最終手段であるために避けるべきであります。

さらに注意すべきなのは男女で訴求のポイントが異なってくる事もあります。例えば洋服などにおいて男性の場合は女性にモテるためのおしゃれであったり、女性はおしゃれを楽しむためのおしゃれである傾向が多いようです。また男性は勝ち負け、女性は共感で考える事もあるようで、性別の習性や傾向を掴んだ状態でUPSを考える事が大事になります。

どう伝えるのか

誰に、何をを決まった後はどう伝えるのかです。

広告は伝わらなければ意味がないので、ユーザー起点で相手がメッセージを受け取るための仕組みを設計して創る必要があります。

スタート地点はどの媒体に表示されるか?です。例えばYahoo!などではニュースを見ている人が振り向くようなキャッチコピーが必要になるでしょう。

LPやメールでは読みやすい、伝わりやすい王道の文章構成フォームを例にされております。

  1. 結論
  2. 否定(会話文)
  3. 工程
  4. 自分の意見
  5. 煽り

ジャパネットたかたなどはこのフォーマットそのものにように読んでいて思いました。一言一言も短く難しい事は言わず、最後には限定感を出すなどついついアクションを起こしたくなります。お一人様2つまでなどの文言もその仕掛けになります。

コピーは最初の1、2行でユーザーの心をつかめないと、どんな良いことが書いてあっても読まれないものになってしまいます。絶対に伝えたいことは最初です。

また広告を見てクリックした後BLP(ブリッジLP)→HLP(販売LP)のフリクションを減らすエモーションリレーも重要です。

北の達人の決算にも毎回書かれているのですが、ROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)も注意すべき点です。広告費を増やさずにより効果を上げる試みも大事でしょう。

「誰に」x「何を」x「どう」の先へ

Webであれば誰にの部分をターゲティングしやすいためにフィードバックをうまくかける事で修正や改善の反応を見ることができます。何を、どう、の部分はクリエイティブの役割ですがWebではクリエイティブの部分は制度を下げる事もできてきました。

誰にの部分ではセグメント設定、また位置情報のターゲティングなどもできます。

広告をうざいものにせず、**「有用な情報(コンテンツ)」x「広告(コマーシャル)」=「コンテンツコマーシャル」**を作り込む必要があります。

テクニカルマーケティング

テクニカルクリエイティブには「着眼法」「苦情法」という伊吹卓さんの方法するアイデア創出方法があります。着眼点はうまくいった事例を真似ること、苦情法はお客様からの苦情に対応する足りていない部分を改善するという方法です。

着眼法

  • なぜこの広告が目に留まったのか
  • なぜこの広告を読もうと思ったのか
  • なぜこの広告をクリックしようと思ったのか

を考え分析をします。

ここには他者分析する中でもヒット要素の判断が個人で異なるために色々試してレスポンスを見る必要があるため注意が必要で複数人で考える必要があります。

著者の経験上、最後まで見られるLPは文字が少ないもの、一方でよく売れるLPは文字が多く、長いLPであると言います。

ABテスト

世界で最も有名なABテストはアメリカ大統領選挙オバマ氏のケースです。キャッチコピーや写真を変えたものをランダムに表示し、仮説からどれが正しいかのテストを行います。

AB-Xテスト

ABテストをする中で反応を見て切り替えるXという手段を持つことも必要です。ABテストをする中でどこにゴールを置いて、新しい候補XYZに切り替えるべきかの判断基準を考えておくことも選択肢に入れるべきでしょう。

テクニカルではKPI設定設定がとても大切でどんな商品に対してどういったKPIを設定するかも異なってきます。ROASで見る場合、ROASは広告経由売上/広告費です。ROASが低いものを辞めればROASは上がりますが、一方で露出が減ることになります。本書では下記のように書かれています。

月間平均獲得単価実績/上限獲得単価=1 適切な状態

月間平均獲得単価実績/上限獲得単価=1以下 採算割れの状態

月間平均獲得単価実績/上限獲得単価=1以上 機会ロスの状態

他のKPIとしては5段階利益管理を紹介されています。5段階は「粗利」「純粗利」「販売利益」「ABC利益」「営業利益」と分類して解説しています。これらを日々見続ける事で問題の有無を解像度高くトラックすることができます。

粗利=売上ー原価

純粗利=粗利ー注文連動費(注文連動費=決済手数料、送料、同梱資料やおまけ、梱包資材)

販売利益=純粗利ー広告費

ABC利益=販売利益ーABC(ABC=商品ごとに振り分けた人件費)

営業利益=ABC利益ー運営費

データの読解力

Webマーケターはデータから傾向を見て人間行動の仮説を立てて施策の手を打つ事が必要です。そのためにはデータの読解力が必要です。本書で紹介されている事例にはおむつと缶ビールが併せて買われているというデータが合った際に、調べていくと週末に重いものとして買い物をする代表がその2つであり、それがわかると売り場でまとめ買いコーナーを設置するなどの施策ができたそうです。

同様に広告の構造も認識しなければいけません。メディアは沢山広告を出してほしい、ユーザーとしては広告が多くあると鬱陶しい、広告主はできるだけ少ない広告で最大利益を上げたい。広告の費用にはクリックに対して払う場合、CVに対して払う場合、広告を表示して払う場合など様々です。

マーケターとブランド戦略

本書で紹介されているうまく行かないと思われる事例に「極上の四角形」というケーキがあります。

Instagram (@branche_chocolat)

価格帯が高いケーキであり、リピーター層の獲得が重要であり、そのためには味のコピーがあるべきである所ビジュアル重視のコピーが書かれており本質価値に惹かれたリピーター層の獲得が難しいと感じたそうです。

Webマーケティングは時代との親和性も求められます。プラットフォームの変化に対応できずに経験が悪影響を及ぼす場合もあります。毎日新鮮な目でデータや管理画面を見る事ができる人がマーケターに向いているのでしょう。

また、マネジメントスキルも重要で、仕組み化、ビジネスモデルの組み立て、教育、教育制度の確立などが求められるスキルです。

ブランドに関する章にて、人がものを買う時の優先順位が解説されています。

一般的な商品 効能/価格>効能>ブランド

衝動買い商品、失敗しても良い商品 価格>効能/価格>ブランド

ブランド力の高い一部の商品 ブランド>効能>効能/価格

ブランドの始まりは、1つの素晴らしい看板商品から始まり、その品質の良さに詳しい顧客が他の商品も購入、ブランドの始まりでロゴや袋のデザインがアイコンになり、マジョリティがそれをかっこ良いと思い書い始める、という流れだそうです。

一方でブランドが崩れる時は、イメージ先行で商品品質の劣化、品質の劣化に気づいた事で憧れの失墜、そうするとブランドは負のイメージになりカッコ悪さのアイコンになるという流れです。

新しい商品を開発する場合には、この商品から新しいブランドが生まれるというブランド一品目の気持ちで最高品質を作り上げることを忘れないようにしないといけません。

感想

とても印象深い本で、Webを使った広告という現代のシステム下でどのようにマーケティングをしていけばよいのかを、株式の概念であるファンダメンタルズとテクニカルズという視点で分類分けして紹介されていました。

どの仕事においても「誰に」x「何を」x「どう」伝えるのかというのはとても大切な視点だなと思います。同じ社内でも誰に話すのか、何を伝えるべきか、そしてどう伝えるべきかという点はつい自分視点でしか話していなかったりします。

営業においても自社製品のUSPを考えていない人も多い気がします。USPに関しては結構積み上げて考えるべきなきもしますので、短期間で答えをだすというよりも定期的に見直して競合の状態も見ながら市場の規模変化などに注意して、新鮮な目線を持つことも忘れがちです。

仕事での制約や獲得までの流れの理解やフリクションのポイントなどの認識や整理もとても大事で構造化して再現性を見つけていく作業もとても大事ですが、日々の業務に忙殺されてできていなかったり、根性重視で見落とされていたりするように思います。

Webマーケティングの話の本ではありますが、仕事に活用できる部分が多く視点の見つけ方としても有効なのでおすすめの本でした。