前回読んだポールタフ著の前著になります。子供の成功には何が必要であるのか、ということを科学的なアプローチをもって追跡調査した纏めになり、認知能力と言われる早めの学習や問題を多く解くということから、非認知能力と呼ばれるGRITや好奇心などの重要性について纏められています。
ヘックマンの研究などが紹介されており、子供たちの成功には好奇心、自制心、社会性などが重要であると非認知能力の考えが紹介されて大きく広まりました。
📒 Summary + Notes | まとめノート
成功する子、失敗する子
子供時代の逆境体験(ACE)についてカイザー者が行った研究において、ACEの数値が高いと成人してからのネガティブな結果の間に相関関係がある事が纏められます。
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1220020135.pdf
子供の頃に精神的な痛手があることにより大人になってからも負のサイクルから抜け出せないというものでした。これは生物学的アプローチからも研究されており、HPA軸と呼ばれるシステムに過度な付加が子供時代にあると、精神や神経に影響を及ぼしその影響が大人になってからも持続してしまい自制心が欠如してしまうような方向にあるようです。
この効果に対して重要とわかってきたものはアタッチメント(愛着)です。これは情緒的な指標であり中々研究として明確化できなかったのですが、アランスルーフやバイロンエゲランドがミネソタで行った研究は、過去にラットの研究などで報告されていた結果と一致しており、乳児のうちに適切なアタッチメントがあると安全地帯から外に出た際のストレスに対して適切に対処でき、好奇心や自制心、自立心を持つ大人になれる事が多くありました。
気質を育てるには
様々なケースを見ることから非認知能力についてどのような項目が大事なのか次第に纏められていきます。最終的に纏められてものは7つのリストとなります。
- やり抜く力
- 自制心
- 意欲
- 社会的知性
- 感謝の気持ち
- オプティミズム
- 好奇心
書籍内にあるお金持ちの家庭における弊害においても面白く、裕福な家庭ではC判定が出た場合にA判定が出るものだと思っていた親から抗議にあうなど失敗をさせないような家庭もありました。ただしやり抜く力や自制心は失敗をとおして手に入れる能力であるために、何も失敗したことがないような子供たちは失敗の仕方を学ぶ必要があるとされています。
また、楽観的に知能は改善できると信じている生徒たちは成績の伸びも良かったなど、楽観的に信じられる事で学習の成果も出やすい傾向などもありました。
これらの性質を獲得するためには適切なタイミングで困難に立ち向かったり、失敗を経験したり、また何か達成するなどが必要であることなどKIPPの研究結果からわかってきました。
親ができること
知能至上主義が蔓延していた教育業界で非認知能力の重要性が知られる事で、そしたら親として一体どうしたら良いのか、という考えが著者に及びます。本書内での一つの大きな結論は、アタッチメントです。深刻が心的外傷と慢性的なストレスから可能な限り子どもを守ること。そして安定した、愛情深い関係を築くことです。
そして子どもが歳を重ねてからは規律、規則、限度など逆境に立ち向かって一人で転び、一人で起き上がる機会の提供です。
感想
様々な研究結果をうまく流れに沿って纏めながら教育について科学的に理解する事ができる本になっていると思いました。書かれている事は意外にも素朴な事で、子どもが幼い段階では愛情を持って子どもが好奇心を持って様々な世界に触れられるようにし、心の安心できる場所、帰って来れる場所を用意しておく。ある程度のメタ認知ができるようになってきたら、今度は失敗をできるようにし自身を律する事ができる能力や、自分を信じて学習することで頑張ることで成果が得られるのだという理解を体験を通じてしていくこと。
昔ながら言われている「可愛い子には旅をさせよ」などある種誰でも知っているような物事であるように思います。
非認知能力の7つのリストは大人でも同様に大事なもので、好奇心を持って楽観的に過ごす事でいわゆるフロー状態という努力とも思わない努力をできる事に繋がります。
子どもの頃を振り返ると、お金も何も貰えないのに何故か一生懸命に頑張っていた事や夢中になっていた事が多くあり、大人になってからどこか給与などの対価が無いと頑張れないや、仕事を受け取って新しい挑戦をしないなどやりがちなので注意しないといけないなと思いました。
教育で難しい問題には貧困の問題があり、ポールタフさんは貧困層への教育についても多く言及しています。実際に格差があるのは避けられないのですが、ゲイツ財団などを中心に多くの教育プログラムを行われて貧困層への教育格差是正に対して取り組みが行われておりますが課題は多そうです。
📚 Relating Books | 関連本・Web
- https://amzn.asia/d/aOKhREk なぜシマウマは胃潰瘍にならないか―ストレスと上手につきあう方法 単行本 – 1998/3/1 ロバート・M・ サポルスキー (著), 栗田 昌裕 (監修), RobertM. Sapolsky (原名), 森平 慶司 (翻訳)
- https://amzn.to/46anBnH オプティミストはなぜ成功するか Kindle版 マーティン・セリグマン (著)
- https://amzn.asia/d/g9LnfzY アメリカ資本主義と学校教育―教育改革と経済制度の矛盾〈1〉 (岩波現代選書) 単行本 – 1986/12/1 S. ボウルズ (著), H. ギンタス (著), 宇沢 弘文 (翻訳)
- https://amzn.asia/d/9puiYUq 過食にさようなら-止まらない食欲をコントロール 単行本 – 2009/11/24 デヴィット・A・ケスラー (著), 伝田 晴美 (翻訳)
- https://amzn.to/3PBXq20 崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫) Kindle版 アチェベ (著), 粟飯原 文子 (翻訳)
- https://amzn.to/3ZFlF3O The Big Test: The Secret History of the American Meritocracy ペーパーバック – 2000/11/16 英語版 Nicholas Lemann (著)