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仕掛学―人を動かすアイデアのつくり方 | 松村 真宏 (著) | 2023年書評88

人を動かすというのは仕事においても私生活においても難しい事だと思います。論理的に説明して意味を理解して行動する人も居れば、感情的な側面で動く人も居ます。一人に対してなら限定的になりますが、そこに複数が絡んだり副次的要素が多くなるほど難しくなります。

それは天候かもしれませんし、前日の徹夜による寝不足かもしれません。

本書は仕掛けの例を多く集め、ついつい人がそう行動してしまうようにどんな事をしたかを見ていく事ができる本です。

📒 Summary + Notes | まとめノート

仕掛け事例

  1. 天王寺動物園の筒 https://mtmr.jp/miraichi/report02.html
  2. 整理したくなるファイルボックス
  3. 並べたくなる漫画
  4. 駐輪場の斜め線
  5. ゴミ箱の上のバスケットゴール
  6. 散らかったおもちゃを片付けたくなるような口をあけたぬいぐるみ
  7. 足跡マークを書くことで左に並ばせるエスカレーター
  8. 的を狙いたくなる小便器
  9. 温度で色が変わる炎のステッカー
  10. ピアノ鍵盤が書いてある階段

仕掛けを定義する3つの要件

仕掛けには良い仕掛けと悪い仕掛けがあり、問題解決に繋がるものには3つの要件があります。

F:Faireness 公平性 誰も不利益を被らない

A:Attractiveness 誘導性 行動が誘われる

D:Duality of purpose 目的の二重性 仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる

仕掛けについて

行動の選択肢を増やせるような仕掛けはナッジと呼ばれ、人はそれほど合理的に判断するわけではないという前提に立って、あまり考えずに選択しても損をしないように選択肢を設計することが大事です。著者は本書の仕掛けについてはより積極的に選びたくなる行動の事を指しておりナッジとは区別しています。

面白いなと思った内容は仕掛けに対する反応の強弱は仕掛けの「便益」と「負担」によって特徴づけられる点です。よくフリクションなどと言われることもありますが、フリクションレスにする事で行動をできるようにするのは習慣づくりの方法論でもよくでてきます。

人は何でも慣れると飽きるもので、特に真新しい物事に対してはインパクトは後に薄れて試してみた後はもう仕掛けが効かない場合もあります。継続する仕掛けの方がよいのか、一過性の仕掛けで良いのかは物事によるため、仕掛けをする際にどういった目的を持つかは考えるべきでしょうか。

仕掛けのトリガーの分類分けもわかりやすく、何か行動を促したい時に相手がどの物事に食いつきやすいのか、分解して考えてみると効果的な仕掛けにたどり着けるように思います。

引用:https://onoken-web.com/blog-6136?print=print

イデアに煮詰まったら

仕掛けの発想についてアイデアを誘発するチェックリストでオズボーンのチェックリストがあります。

  1. 他の使い道は?
  2. 他に似たものは?
  3. 変えてみたら?
  4. 大きくしてみたら?
  5. 小さくしてみたら?
  6. 他のもので代用したら?
  7. 入れ替えてみたら?
  8. 逆にしてみたら?
  9. 組み合わせてみたら?

また、SCAMPER法と呼ばれるオズボーンのチェックリストを改変したものなどもあります。「考えてみたら?」なんて言われた時にこういった考え方のヒントをくれるチェックリストは意識してみると考えの方向性にヒントをくれるでしょう。

感想

発想方法について引き出しを増やすには①経験する・接触すること②それに気がつくこと③その時に考えること④ストックしておき応用したり組み合わせたりできることだと思います。昔で言うスクラップブックや、現代で言うセカンドブレイン的なストックの積み重ねがアイデアの幅を広げる大事な要素だと思います。

本書でも面白い事例が紹介されており、その事例を分解してどういったトリガーの仕掛けなのかを分類分けしているなど勉強になるものも多くありました。

大学生の頃読んだ佐藤可士和さんの本で、論理的にデザインをやっている方法を知り、仕掛けを分析してみたり組み合わせてみたりすることの大切さを感じましたが、本書でも論理的にアイデアを生み出す方法のヒントが書かれています。

一方で、とっさの発想力やフリースタイルで起きるひらめきなど、意図していない仕掛けのようなものも興味深いです。現在読んでいる坂本龍一さんの本に小学生への授業でディレクターに用意された良い生徒の授業よりも、多様な子が居る授業で意外な子の演奏が素晴らしかったなど準備されていない楽しみも世の中には沢山あると思います。予定していない旅行や天気の読めない登山など何でも楽観的に予想外を楽しめる心意気も忘れないようにしたいです。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3PA1xLU 誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論 単行本 – 2015/4/23 D. A. ノーマン (著), 岡本明 (翻訳), 安村通晃 (翻訳), 伊賀聡一郎 (翻訳), 野島久雄 (翻訳)
  2. https://amzn.to/3Pz3zMf 複雑さと共に暮らす―デザインの挑戦 単行本 – 2011/7/28 ドナルド・ノーマン (著), 伊賀聡一郎 (翻訳), 岡本明 (翻訳), 安村通晃 (翻訳)
  3. https://amzn.to/3PT2S1Q 実践 行動経済学 単行本 – 2009/7/9 リチャード・セイラー (著), キャス・サンスティーン (著), 遠藤 真美 (翻訳)
  4. https://amzn.to/46uKy4N アイデアのつくり方 単行本 – 1988/4/8 ジェームス W.ヤング (著), 竹内 均 (解説), 今井 茂雄 (翻訳)