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JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則 | ニック・マジューリ (著), 児島 修 (翻訳) | 2023年書評75

ニューヨーク在住の超有名Youtuber、Casey Neistat。彼が3M登録者に達した時にたった3語のコツ「Just Keep Uploading」。この言葉に影響されたタイトルがついているのが本書のJust Keep Buying。投資し続けろ!というようなイメージでしょうか。

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貯金か投資か?というと言う問いに投資資金の程度やライフステージに併せて必要な考えをまとめつつ紹介されておりとても興味深い本でした。

📒 Summary + Notes | まとめノート

貯金について

投資する前にまずは資金を作るために貯金について考えましょう。収入の2割を貯金しましょうなど世の中に言われている事は色々ありますが、本書のスタンスはできる範囲で貯金するというのが最適と言います。

貯金=収入ー支出ですから、貯金を増やすのは①収入を増やすか②支出を減らすかです。貯金について細かく見ていく前に大前提で認識しておいた方が良いことに、十分に貯金があるのでは?という点です。米国の年金受給者のうち資産を減らしているのは7人に1人しか居ないということで、お金がなくなるということよりも、お金がなくなる恐怖に対して脅威に思う人が多いという事は大事な点です。

先程みた貯金=収入ー支出ですが、よくある議論に支出を減らしましょうという考えがあります。収入が増えても、支出が増える人は多くなく(限界効用逓減の法則)ある一定のラインで支出は止まります。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究「なぜ人々は貧しいままなのか?」によると低収入にあることが貧しいままに陥る原因と結論づけているようです。本書での結論は収入を増やし、収益を生み出す資産に投資することとしています。

収入を増やすためには5つの法則があります。

  1. 時間単位の専門サービスを提供する
  2. 出来高制の専門サービスを提供する
  3. 人に教える
  4. 商品を売る
  5. 会社で昇進する

これらで増やした収入をどう扱うのか考えていきましょう。まずお金の使い方では贅沢な買い物をする場合、それと同額を投資する、ということで支出の罪悪感を減らす事ができると言います。また、罪悪感の少ない支出には①体験を買う②自分のために贅沢する③時間を買う④前払いする⑤人のために使う、などを挙げています。

上昇した収入分の50%は貯蓄に回すのが良いというのが提案ルールです。

よくある持家賃貸議論について本書の解としては、基本的に持家のメリットがある事があるが3つの条件(10年以上はその土地に暮らす予定、公私共に安定した生活を送っている、経済的余裕がある)が当てはまれば買ったほうが良いとしています。

投資について

投資について今すぐ始めるべき理由は3つあります。

  1. 老後に備える
  2. インフレから資産を守るため
  3. 人的資本を金的資本に置き換えるため

面白かった部分は人的資本と金的資本の考え方で、Die with Zeroと少し違う考え方のように思いましたが、年を重ねる毎に基本的には人的資本は体力の衰えとあわせて低下していきます。この稼ぐ能力が減った部分を金的資本に変えておく事が大事という考え方です。サラリーマンだと想像しにくいですが、プロスポーツ選手だと顕著ですよね。若い時20代で数億稼ぐ選手が30代で解雇されて普通の仕事につくわけですが稼ぐ能力は大幅に減ります。

何に投資すべきか?という点については株式インデックスでOKという事が基本的な解です。大きく成長し続ける市場にベットするのが最も確実でリターンが安定している方法です。

本書で強調されているのは個別株を買うなという点。コロナ禍で起きたゲームストップ株の殺人的な値動きの個別株を例に紹介されています。この部分を読んでいて思い出したのが、前回読んだTo be Richにあるアートピースの投資で、アートピースに投資した会社が価値を2倍ほどまで伸ばしたのですが、その中の99%のアートは値を落とし、たった2作品だけの利益でこのような結果に結びついていたようです。個別株投資は影響因子による振れ幅が市場全体よりも遥かに多いので、十分に上がる見込みのある状態(大きく下げた時や大きな上げの可能性が高い時)、細かい利益で確定させるなど、インデックスとはまた毛色の異なる投資に感じます。

いつ投資すべきか?という問いに関する部分も大変おもしろいものです。殆の期間成長を続けているのでとにかく早くというのが解です。それでは一括で今すぐなのか?少しずつが良いのか?著者のニックが分析した中で殆のケースで一括投資が良いという結果でした。

投資手法に下落した時に買うバイザディップという方法があります。本書では過去を遡って、下落時にすべて予言的中して買えた場合というような神様シナリオでもドルコスト平均法と比較しています。結果は97%のケースで下落時に買う手法が悪いということでした。そのため底値を待って現金を貯める意味は無いという結論です。

これからタイトルにもあるJUST KEEP BUYINGが哲学として提唱されます。

ただし投資に運の要素は払拭しきれません。特に大事なのは投資の出口部分での運の悪い下落相場です。ある程度期間を長く持っていると10年間ではマイナスになる可能性があったものが20年間の投資期間ですと基本的にマイナスリターンの状態は無くなり、30年持ち続ければおおよそ7%程度のリターンに収束されます。

投資の場合、後半になると投資額が大きくなっているために、下落相場にぶつかると下げ幅が大きくなり、前半で下げていた場合に比べると遥かに被害が大きくなります。そのため、リタイアするタイミングの時に低リスク資産に分散する(債権など)、取り崩しをやめる、パートタイムなどで臨時収入を得るなどが効果的です。

続いてある面白い分析に、下落回避戦略をした場合にバイ・アンド・ホールド戦略と比べて結果がどうなるかという部分です。結論としては、下落を回避することにより、回復分の取りこぼしがあるために、バイ・アンド・ホールドの方が良い成績になるという。ただし、ここで債権を組み合わせて下落率が15%以上ある時に債権を1/3購入するとすると、債権+株式の組み合わせの方が成績がよくなります。

暴落時はどうするべきでしょうか?銀行家ロスチャイルドは「通りで血が流れている時が書い時」と言い、様々な混乱する経済禍で財を成しました。本書の結論は50%以上暴落した時はできる限り投資すべき、とのこと。仮に33%の下落時に買ったとして、5年をかけて戻せば年率8%、1年の期間で戻せば年率50%となります。

実際に下落時に買えるかといえば心理的に難しい気もしますが、今後意識してきたいポイントです。

さて、投資で書い続けましょうという話ですが、今度はいつ売れば良いのか考えていきます。売るのは3つの時です。

  1. リバランスのため
  2. 集中投資状態から抜け出すため
  3. 経済的なニーズを満たすため

売るときは買う時の逆で、ゆっくり少しずつ時間をかけて売るようにしましょう。(買う時はなるべき早く一気に買う)

一つめのリバランスですが、これは基本的に下落率を低下させる目的です。リバランスしないとポートフォリオは株式が大部分を占めることになります(株式の成長が債権の成長よりも高いため)。利益を取りこぼしてしまうことになるのですが、特に出口付近での下落回避は重要です。

個人的には現役世代でのリバランスは軽視して株式でのリターンを教授できるようにしておけば良い派ですが、本書では年に1回ほどはリバランスしてみるのも良いのではとのことでした。

個別株などでの集中状態のリバランスは重要だと思うので、投資銘柄にもよりますが1年に1度か定期的にリターンの確認習慣は良いと思います。

21のルール

  1. お金がない人は貯金、お金がある人は投資を重視すべき
  2. できる範囲で貯金する
  3. 節約よりも収入アップ
  4. 2倍ルールで罪悪感を減らす
  5. 収入アップ分の50%以上を貯蓄する
  6. 借金は使い方次第
  7. 家は適切な場合のみ購入する
  8. 頭金は、まず現金で貯めることを検討する
  9. リタイアで大切なのはお金だけではない
  10. 減り続ける人的資本を金的資本に置き換えるために投資する
  11. オーナーのように考え、収益資産を買う
  12. 個別株は買わない
  13. 早く買ってゆっくり売る
  14. できるだけ頻繁に投資する
  15. 投資は配られたカードではなく、そのカードを使ってプレーすること
  16. 相場の変動は必然的に発生するが、恐れてはいけない
  17. 暴落は買いのチャンス
  18. 過度に贅沢な暮らしをしようとして大きなリスクを背負うのではなく、十分な暮らしができるお金を確実に得ることを重視する
  19. どれだけ資産が増えても、金持ちになったとは感じないが、それは問題ない
  20. 時間ほど重要な資産はない
  21. 私達はすでにこのゲームをプレーしている

感想

投資に対するキャッチーなコピーに加えて、データを用いた根拠を分かりやすいストーリーで展開してある本でした。投資に関しての多くの疑問に対してかなり明快な回答があります。個別株は買うな、素早く一括で投資しろ、という理由をデータを加えて紹介しており、インデックス投資の優秀さが改めて分かります。

投資をする目的の部分について、本の後半で触れられており、時間という何事にも変えられないものが最も価値があるものであり、幸福度については年を重ねる上がるものであるとあります。またお金を貯めても貯めてもお金持ちになったと実感できるか?という問いにいくら稼いでもそう思えない人が多いという事でした。

投資の楽しさに隠れた次のアップルやマイクロソフト株を探し当て10倍となるような期間ホールドして成績を上げる。この探索時間や勉強が楽しいと思えるならば個別株も良い選択肢なのでしょうが、時間をもっと貴重な人生に使いたいと思うような人であればインデックス投資で積立続けるというものが良いでしょう。本書のデータはあくまでインデックス投資という観点なので、個別株などでは購入タイミングがより顕著に大事でしょう。インデックス投資だと運の要素が薄まり経済成長の恩恵を受けやすいというのは忘れないようにしたいです。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://ofdollarsanddata.com/ 著者ブログ
  2. https://amzn.to/3OEZEx6 となりの億万長者 〔新版〕 ― 成功を生む7つの法則 単行本(ソフトカバー) – 2013/8/23 トマス・J・スタンリー (著), ウィリアム・D・ダンコ (著), 斎藤 聖美 (翻訳)
  3. https://amzn.to/45BBqKT Happy Money: The New Science of Smarter Spending (English Edition) Kindle版 英語版 Elizabeth Dunn (著), Michael Norton (著)
  4. https://amzn.to/45kYNZO モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫) 文庫 – 2015/11/20 ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳)
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  6. https://amzn.to/3OyHcpK お金か人生か――給料がなくても豊かになれる9ステップ Kindle版 ヴィッキー・ロビン (著), ジョー・ドミンゲス (著), 岩本 正明 (翻訳)
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  9. https://amzn.to/47A2GeP 株式投資 第4版 単行本 – 2009/7/23 ジェレミー・シーゲル (著), 藤野 隆太 (監修, 読み手), 林 康史 (監修, 読み手), 石川 由美子 (翻訳), 鍋井 里依 (翻訳), 宮川 修子 (翻訳)
  10. https://amzn.to/3saQFMu 証券市場の真実―101年間の目撃録 単行本 – 2003/7/1 エルロイ・ディムソン (著), ポール・マーシュ (著), マイク・ストーントン (著), 山田 香織 (翻訳), 小沢 光浩 (翻訳), 田口 智也 (翻訳)
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  15. https://amzn.to/3snHOqN ヒューマン・ネットワーク 人づきあいの経済学 単行本 – 2020/11/19 マシュー・O・ジャクソン (著), Matthew O. Jackson (著), 依田光江 (翻訳)
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  18. https://amzn.asia/d/iQZSQTQ カッコウの呼び声(上) 私立探偵コーモラン・ストライク 単行本 – 2014/6/27 ロバート・ガルブレイス (著), 池田 真紀子 (翻訳)