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投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 | ハワード・マークス (著), 貫井佳子 (翻訳) | 2023年書評82

長いあいだ読もうと思いつつ読めていなかったハワード・マークスの本を読みました。

ハワード・マークスはオークツリーの創業者でいわゆる逆張りスタイル、ディフェンシブな投資を行っており、リーマンショックで最も稼いだ運用会社と言われています。

fu.minkabu.jp

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彼が投資家に対してメッセージを書いている「Memo from Howard Markes」を抜粋して纏められているものが本書市場サイクルを極めるになります。メモは未だに更新され続けており少し長くはありますが投資家にとって勉強になるものばかりなのでこういう考えを学べるものはしっかり読む癖をつけたいものです。

www.oaktreecapital.com最近はインタビューされた記事もブルームバーグから出ており未だに現役で投資活動をしております。

www.bloomberg.co.jp

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考え方としてはタレブのようなリスクに備えることの重要性を問うことや、バフェットのような効率的市場の中に起きる非効率な状態のものを探し出すことの大切さを大事にしているように思います。

ohtanao.hatenablog.com

バフェットが大量に本書を買い、株主総会で配ったというように言われている本であり、投資をする中でリスクへの考えや、リスクとリターンのバランスについてなど投資をする上で認識をしていた方が良い視点が多くあり、好景気相場で上の上を狙いに行くようなARKとは違い、大きなダメージを得ない事で長くリターンを得るというスタイルは何故バフェットが長期に渡り活躍し続けられるのかという結果も頷けます。

 

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

ハワード・マークスが参考にする投資家・書籍

ハワード・マークスはペンシルベニアのウォートンスクール、シカゴ大学経営大学院で学生時代を過ごし、アメリカの中でも学術的に有名な投資理論の2大学派の考えに触れました。

チャールズ・エリスの敗者のゲーム、ジョン・ケネス・ガルブレイスのバブルの物語、ナシーム・ニコラス・タレブのまぐれなどはハワード・マークスの思考に大きく影響を与えました。

ohtanao.hatenablog.com

また、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーから合理的な期待、ブルースニューバーグから確率と結果、マイケルミルケンから意識的なリスク負担、リチャードケーンからわなを仕掛けることについて学んだと言います。

これらが唯一の正解ではないが、これらの考えを組み合わせて取り込む事でオークツリーの投資スタンスを形成しており、ハワード・マークスに取っては合ったスタイルとなっています。

一次的思考と二次的思考

「この企業は減益になると思うから、売りだ」というのが一次的思考。一方、「この企業の減益幅は周りが予想しているよりも小さいと思う。予想より良い業績が発表されて株価は上昇するだろうから、買いだ」というのが二次的思考である。

一次的思考は単純で底が浅く、誰にでもできること。である。一次的思考をする者がみな求めるのは、「この企業の見通しは良好だから、株価は上がる」といった将来に関する見解である。

一方、二次的思考は奥が深く、複雑で入り組んでいる。

二次的思考をするためには

  • 今後、どのような範囲の出来事が起こりうるか?
  • その中で、実際に起きると思うのはどれか?
  • その予想が当たる確率はどれくらいか?
  • コンセンサスの予想はどうか?
  • 自分の予想はコンセンサスとどう違うのか?
  • その資産の現在の価格は、コンセンサスあるいは自分が考える先行き見通しに見合っているか?
  • 価格に織り込まれているコンセンサスの心理は強気がすぎたり、弱気がすぎたりしないか?
  • コンセンサスあるいは自分の予想が的中した場合、その資産の価格はどうなるか?

価格とは何か

企業の価格には心理とテクニカル要因が含まれる。例えば本質的価値とは無関係に、証券の供給と需要に影響を及ぼすものや、信用取引を行っていた投資家が、市場の暴落で証拠金の追加預け入れを迫られて行う投げ売りなど。

危機時やバブル期という稀な状況で投げ売りする人から買い、価格が上がった所で売る。投げ売りする側にならない事は避けるべきこと。

価格に最も影響を及ぼすことは心理学とハワード・マークスは言います。

価格が本質的価値に収斂するまでに、想定よりも時間がかかる事があるため期間について予測しにくい所があるが、本質的価値よりも低い時に買う事が大事。

サイクル

ハワード・マークスの他の著書でもあるが市場のサイクルについて言及しています。

  • ほとんどの物事にはサイクルがあることがやがて判明する
  • 利益や損失を生み出す大きな機会は、周りの者が原則その①を忘れた時に生じる

信用サイクルは不可避で触れが極端に激しく、順能力のある投資家にチャンスをもたらす点で著者は特筆しています。サイクルの波がなくなる事は決してなく、投資家がサイクルが無くなったという思い込みや今回は違うというムードは危険の兆候である。

大衆は先に利益をあげた投資家に刺激を受け、仲間入りしようとする。物事にはサイクルがあるということを無視し、相場は永遠に上がり続けると思い込む。だからこそ、私は「賢明な人が最初にやること、それは愚か者が最後にやることだ」という古い格言が好きなのだ。特筆すべきは、強気相場の終盤になって、好況が未来永劫続くことを織り込んだ価格で進んだ株を買う人々の行動だ。

すばらしい投資成果をあげるために重要な要素は2つある。①ほかのものが気づいていない、あるいは評価していない資産の値打ちに目を向ける。②実際にその値打ちがあることがやがて判明する

投資プロセスは①投資先候補のリスト、②それらの本質的価値の推定、③それらの価格が本質的価値と比べてどうなのかという感覚、④それぞれの投資にともなうリスク

投資は相対選択の学問(証券分析より)

人々が実態よりも著しく悪い印象を抱いている状況でなければ、掘り出し物は生じ得ない・つまり、最良の機会は、たいてい周りのほとんどの人がきづいていないものの中から見つかる。結局のところ、誰もが良いと感じ、喜んで買おうとするものに、お買い得価格はつかない。

市場サイクルについて

  • 市場サイクルの上下動は避けられない
  • 市場サイクルは投資家のパフォーマンスを著しく左右する
  • 市場サイクルの期間、そして特にタイミングは予測不可能である・

サイクルのどこに居るのかを意識し、周りで起きていることがどんな影響をもたらすのか理解するために、賢明に努力しなければならない。

運の要素について

知ることが難しいマクロの世界について予測し、それに基づいて決断するよりも、知りうることの中から割安な投資先を見つけようとするのに時間を使うべき

結果がどのような要因によって生じたのかはきわめて不明瞭であるため、検証を重ねて解明されるまで、戦略とその結果を懐疑的な目で見なければならない。

市場が熱狂に包まれると資金は革新的な投資商品へと集中するが、その多くは時の試練に耐えることができない

行き過ぎた状態は修正される

感想

ハワード・マークスの背景も理解しつついわゆる本質的価値よりも大幅に安い時に仕込む逆張りスタイルの投資について纏めてあるとても良い本でした。バフェットも似たようなスタイルという認識があり、本質的価値からの乖離があるものに対して大きく投資をするという所はとても勉強になります。

運の要素を重視するとディフェンシブ投資になる方向になり、そうすると大きな下落の時に投げ売りされる株を買いにいける資金があるようになります。投資は相対選択の科学という考えもとても趣があり、ポートフォリオを入れ替える時により魅力的なものがあれば入れ替えるべきである(が中々うまくできない)と改めて思いました。

投資をし始めたコロナ禍から思い出すと、金融緩和の影響もあり、新技術企業やクリーンエネルギー、SPACなど兎にも角にもイノベーティブなものに資金が流れ、グロース株と呼ばれるものが大幅に利を伸ばしました。(ARKなど特に好例)レバナスなどがもてはやされていたのも記憶に新しいです。

一方で今は、利上げが続くと資金の使用が慎重になり、高配当株やバリュー株など比較的地味でインフラに関わるようなものにSNSでの声が集中しているように思います。こういうタイミングで本質的価格を自分で精査し、2次的思考を用いて吟味できるようになり、注目していないようなものに目を向けなければいけないのだと思います。

本質的価格については本書でも書いてあるように、いつか収斂されるがその期間は誰にもわからないし、そもそも本質的価格を精査するはっきりとした方法が無い。

株式投資をする上で決算を読み、業績の良し悪しや今後の推察ができないというのはとてつもなく不利な状況で投資をしているということに改めて危機感を覚えたので企業のスクリーニングや業績分析、幅広く知ることは努力しないといけないと感じます。

そういう事ができない・時間が無いのであれば大人しくインデックス投資をするべきだと思いました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3P8cOTH 市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学 (日本経済新聞出版) Kindle版 ハワード・マークス (著), 貫井佳子 (翻訳)
  2. https://amzn.to/3PjRhHQ 敗者のゲーム[原著第8版] (日本経済新聞出版) Kindle版 チャールズ・エリス (著), 鹿毛雄二 (翻訳), 鹿毛房子 (翻訳)
  3. https://amzn.to/3RhJA7C [新版] バブルの物語 Kindle版 ジョン・ケネス・ガルブレイス (著), 鈴木 哲太郎 (翻訳)
  4. https://amzn.to/45FBSZ8 まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか 単行本 – 2008/2/1 ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳)
  5. https://amzn.to/48amc1F 証券分析 Kindleベンジャミン・グレアム (著), デビッド・L・ドッド (著)