ex-Googlerの著者がデータを活用したストーリーのあるプレゼンの作り方の本になります。良い意思決定のためにはデータの可視化・ストーリー化が不可欠。データのビジュアリゼーションが良くてもそこに興味深いストーリーがなければつまらないものになってしまいます。
日本語著書のタイトルは「Google流資料作成術」となっておりますが、本書では主にストーリー化の大切さを伝えており、そのためにはどうするかを紹介されておりました。
著者のブログや講演動画はYoutube上でもあるので、興味を持った方はそこから調べてみるのもよいでしょう。
📒 Summary + Notes | まとめノート
1.コンテキストを理解する
分析には探索的分析:データを理解し、何を他人に伝えるかを理解するためのもの、と説明敵分析:100の異なる仮説を試したり、100の異なる方法でデータを分析してたった12うか2つの重要なことを見つける作業、があります。
よくあるミスに説明の場なのに探索的分析を伝えていることがあります。説明的分析の重要な点は**「誰に」「何を」「どのように」**です。
特に「何を」の部分は、誰にどんなアクションをしてほしいのか、行動まで遠いのであれば行動に結びつけるために何が必要なのかを見つけなければいけません。
「どのように」の部分はその主張を裏付けるために、どのようなデータを利用できるか?という部分を明確にし、どう組み立て、伝えるかを考えなければいけません。
内容をよりシンプルにするため活用できる考え方には「3分ストーリー」「ビッグアイデア」というものがあります。
3分ストーリー:3分しかなかったら、相手に何を伝えるか?
ビッグアイデア:簡潔に1文で表すならどうするか?
ビッグアイデアはResonate(ナンシーデュアルテ著)にかかれているもので重要な要素3点あり①あなたの独自の視点を明確にしている②何が危機にさらされているかを伝える③完全な文章であることです。
また、ストーリーボードを活用して、ビッグアイデアの組み合わせから提案の順序・構成などを作成します。
相手に伝わりやすい表現を選ぶ
データを見せるときの表現方法は様々あります。著者のウェブサイトにある、CHART GUIDEにそれぞれのグラフがどういった表現をするのに適しているか紹介されています。著者が主に使うのは4種類:点グラフ、線グラフ、棒グラフ、面積グラフのカテゴリです。
回避した方が良いグラフには、円グラフ、ドーナツグラフ、3D表現、第2縦軸の使用(縦軸を2つに分ける方が良い)などが紹介されています。
不必要な要素を取り除く
要素を一つ加えるごとに相手に理解するための負荷を与えています。重要な情報を伝わりにくくさせる要素や資料にのせるに値しない要素は取り除くことが良いでしょう。
視覚認知のゲシュタルト法則でクラスターを識別する工夫も良いでしょう。「近接」「類似」「囲み」「閉合」「連続性」「接続」の6つの法則をグラフに適用します。
資料を読みやすくする工夫に「整列」と「ホワイトスペース」、「コントラスト」に利用もあります。
下にあるサンプルがステップ・バイ・ステップで修正したものになります。(修正前:左、修正後:右)
引用元:https://readingraphics.com/book-summary-storytelling-with-data/
相手の注意を引きつける
次は相手にどのように読み取ってもらうかを考えます。1つめは無意識的視覚情報を使って、集中して見てもらいたいところに相手の注意を向けさせる方法、2つめは、あなたの意図どおりに相手がされを受け取るよう、視覚の優先順位をつける方法です。
ビジュアルコミュニケーションをする上で記憶には①映像記憶②短期記憶③長期記憶があることを知る必要があります。
映像記憶とは無意識的に認識をしやすいものから認識している記憶になります。例えば、文字の大きさ、斜体、コントラスト左上からZの流れ、などです。こうしたことを活用することで、相手の注意を意図したところにすばやく集める、情報に視覚的な優先順位をつけることができます。
これはグラフにも同様で、グラフの中で強調したい部分の色だけ目立つようにしておくこと、コントラストをつける、データの文字を大きくするなどの工夫もあります。
短期記憶には、とどめておける情報は4つまでです。あまりに多すぎるデータは相手の負担を与えていることになります。
画像と言葉の組み合わせを活用することで、画像が長期記憶を手助けします。そのため、画像と言葉の組み合わせを活用した資料であると相手の意識にとどまりやすくなります。
デザイナーのように考える
データビジュアライゼーションにおける形式と機能は、データを使って相手に何をして欲しいか(機能)を考え、そしてそれをできるように視覚化(形式)することです。
データコミュニケーションをする際には、アフォーダンス、アクセシビリティ、審美性というい視点からデザイン上の戦略を考えるとよりよくなるでしょう。
アフォーダンス:どのように情報を扱えばよいか?
- 重要なものを強調し、全体の10%までに抑える
- 気を散らすものをなくす
- 情報に明確な「視覚的階層」をつくる
アクセシビリティ:誰でも理解できるか?
- 相手を動かしたければ、必要以上に複雑にしない
- 「解読させる」のではなく「理解させる」ための言葉の使い方
審美性:そのデザインは美しいか?
- 色使いを工夫する
- 配置に注意を払う
- 空白を活用する
ストーリーを伝える
わかりやすい物語の例に演劇があります。演劇のストーリー構成は三幕構成であり**「設定・対立・解決」**があります。
始まり:設定を伝えて、コンテキストを構築する
中間:相手の可能性、行動の必要性を説明する
終わり:何をしてもらいたいか「行動」を呼びかける
ここで、注意するのは事実を羅列するだけでは伝わらないということです。また、ストーリーの順序を考える時に時系列である必要性は無く、最も効果的な順序に組み立てると良いでしょう。
良い参考に多く触れる
本書内では多くの実例や修正例が紹介されています。好例を見ておくことでアイデアのストックを持つことができるでしょう。
Storytelling with Data:https://www.storytellingwithdata.com/makeovers
Eager Eyes: https://eagereyes.org/
Five Thirty Eight’s Data Lab:https://fivethirtyeight.com/
Flowing Data: https://flowingdata.com/
The Functional Art:http://www.thefunctionalart.com/
The Guardian Data Blog:https://www.theguardian.com/data
HelpMeViz:https://policyviz.com/
Junk Charts:https://junkcharts.typepad.com/
Make a Powerful Point:https://makeapowerfulpoint.wordpress.com/
Perceptual Edge:http://www.perceptualedge.com/
VizWiz:https://www.vizwiz.com/
(良くない例)WTF visualizations:https://viz.wtf/
感想
資料やプレゼンでのストーリー(物語)の大切さが身にしみる内容でした。仕事場の資料は目的があるべきでありますが、結構な割合で①目的が不明確②伝えたい内容が簡潔でない③目的に関係ない不必要な要素がある④目的が鈍る資料形式である⑤伝えてに伝えたいアクションが不明確、という資料を目の当たりにします。
特に日系企業的な現場ですと現場から遠い人間がプレゼンを作成するために、現場に不必要な量の情報を求め、それら全てを資料に詰め込むために、嫌に込み入ったビジュアルになっているように思います。
研究生活を経た画一的な人材が集まる部署になると、一般的な視点が欠けた予備知識を必要とするような内容になりますし、ビジュアル面も込み入ってある方が「やっている感」があるから良い、というような好まれ方などもあります。
Amazonは社内資料にワードのみでまとめる方法をしています。組織全体で問題意識が無い場合はどういった資料であるべきか、という考えに及ばないでしょう。
最近話題になったツイートを見てみても、問題意識の欠如を感じざるを得ませんよね。
環境省のパワポをTimewitchに丸投げ入稿してみた。
— けんのすけ (@CEOfromBCG) 2023年3月10日
←←環境省
Timewitchを利用した翌朝→→
環境省さん、「寝ろ!」
そしてLet's Timewitch !https://t.co/rsEsod5JEO pic.twitter.com/ewo8JuAgMt
📚 Relating Books | 関連本・Web
- https://amzn.to/3T4If2N Resonate: Present Visual Stories that Transform Audiences (English Edition) 1st 版, Kindle版 英語版 Nancy Duarte (著)
- https://ferret-plus.com/8022#:~:text=ゲシュタルトの法則とは、人間は近いものや,という法則のことです。 ゲシュタルトの法則とは?ノンデザイナーこそ知っておきたい法則を解説
- https://amzn.to/3ytD6Ym Information Visualization: Perception for Design (Interactive Technologies) ペーパーバック – 2020/3/27 英語版 Colin Ware (著)
- https://amzn.to/3J7GRru Beyond Bullet Points: Using PowerPoint to tell a compelling story that gets results (English Edition) 4th 版, Kindle版 英語版 Cliff Atkinson (著)
- https://amzn.to/3YzKRXD Beautiful Evidence ハードカバー – 2006/7/1 英語版 Edward R. Tufte (著)
- https://amzn.to/401zPv5 slide:ology[スライドロジ―]―プレゼンテーション、ビジュアルの革新 単行本(ソフトカバー) – 2014/12/9 ナンシー・デュアルテ (著), 熊谷小百合 (翻訳)
- https://amzn.to/3l6nsPQ 誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論 単行本 – 2015/4/23 D. A. ノーマン (著), 岡本明 (翻訳), 安村通晃 (翻訳), 伊賀聡一郎 (翻訳), 野島久雄 (翻訳)
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