ライフイズビューティフル

訪問記/書評/勉強日記(TOEIC930/IELTS6.0/HSK5級/Python)

キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション | 延岡健太郎 (著) | 2023年書評80

以前読んだキーエンス解剖に引き続きキーエンスに関わる本を読んでみました。キーエンス解剖の方が難しくない文面であったので、どちらか読むのであればキーエンス解剖の方が良いかなという印象ではありましたが面白い内容も多くありました。

ohtanao.hatenablog.com

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

顧客企業の利益向上・営業活動

本を読んでいて印象的だったのはキーエンスの問題解決能力です。付加価値の最大化するために、顧客にコンサルタントのような提案で問題解決を促し、顧客利益をわかりやすく伝えるという手法がとても興味深かったです。特に不景気時にむしろ頼って貰えるような場面も多いらしく、「困ったときこそ、キーエンスに相談すると、コスト削減の提案をいろいろと考えてくれるので助かります」という声もあるようです。

営業の販売促進のための学習支援が充実しており、自社商品の価値の高い部分、費用対効果の説明など顧客が自分で調べなくても良いような情報も整理して渡すようにしています。

また、過去に商品を効果的に活用した事例集なども準備されており使い方が創造できるような資料も準備するようです。

営業活動は月にだいたい10日ぐらいで、一日5件ほどアポを取るため月で50回ほど実践して意見交換する機会があり、それらはすべて報告されロールプレイングでフィードバックを得るという好循環で育つ事ができるシステムが導入されています。

顧客の購入理由や解決された問題などの情報も記録され、提案内容や失敗・成功事例もシェアされるために社内で成功事例の蓄積もされ、さらに困り事やニーズの調査、現場へ訪問した際は工程や業務内容までも記録されます。

ニーズカードというもので開発のアイデアも吸収され、これをもとに製品開発が行われます。

SEDAモデル

著者の延岡さんが提唱するモデルでScience、Engineering、Design、Artの頭文字を取ったSEDAモデルが面白いものでした。ArtとDesignの部分は意味的価値と呼ばれ、ScienceとEngineeringは機能的価値と区分分けしています。またScienceとArtは問題提起・価値探索、EngineeringとDesignは問題解決・価値深化の意味合いが強いものと言います。

Untitled

引用:https://www.hri-japan.co.jp/contents_library/term/marketing/2971/#:~:text=SEDAモデルとは、一橋,において価値を創造する。&text=とし、それぞれの頭文字,シーダ)モデル」と呼ぶ。

近年デザイン思考などで下の2つの領域が注目されているのですが、アートの領域は顧客の満足や想定を超えた部分で感動を呼ぶものであり、アート思考的な考え方により発掘できるものと表現しています。キーエンスのものづくりや営業において、デザイン思考的なものによる健在ニーズや潜在ニーズの探索に加えて、アート思考的なソリューション提案も組み合わせる事でキーエンスのサービスがより価値が高くなっていると言います。

キーエンスの面接での重要点

採用で大事にするのは論理的思考能力と柔軟な学習能力、コミュニケーション能力です。志望動機や入社後やりたい業務などは、ほとんど重視しないようで、事前に準備してきた話を聞いてもあまり意味はないと考えています。

思考能力を評価するためには、日頃考えていないことを急に聞くのが効果的。相手をうまく説得するコミュニケーション能力も重要とされます。これらをみるために「説得面接」と呼ばれるものがあり、例えば賃貸のほうが良いと思っていると過程して家を購入したくなるように説得してみてくださいというようなものがあるようです。

感想

仕事がらキーエンスの製品を使うのですが、学生時代から触っていた事を思い出すと格段に使いやすさが進化しており、昔はキーエンス以外の顕微鏡などを好んで使われていた事も多くありましたが、今ではキーエンスのものが圧倒的に使いやすく、製造現場に組み込みやすいものになっています。結構びっくりするぐらいのレベルで使いやすいですし、目的に対して解決策を用意してくれている感覚が高いです。

本書でヒット作が紹介されているのですが、どれも製造現場で役に立つものばかりで、研究者が困っていた事にクリアに助かる製品ばかりでした。本書を読んでいてEA-300のような製品があることを知り仕事上で今まさに困っていた事を解決してくれそうな装置でした。

マイクロスコープで観察しながら元素分析 | レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズ | キーエンス

驚くぐらい的確に良い製品を作り出している背景にある記録文化やシステムが素晴らしいなと思います。営業チームによる効果的な顧客訪問に、ニーズを明確にできる文化システム、組織として完成されている様子が今のキーエンスを作り上げた事を頷けられます。

優秀な人達が集まっているということもあるとは思いますが、このレベル感で会社組織でアクションさせる仕組みづくりや助け合える文化というのはとてつもなく関心します。会社という組織には色んな目的で在籍する人がいるにも関わらず、様々な理由・背景からそこまで本気にならなくて良いやと思う人は少なくはないと思います。一度体験してみたいぐらい気になる文化です。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3EqhPlm デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕 イノベーションを導く新しい考え方 Kindle版 ティム ブラウン (著), 千葉 敏生 (翻訳)
  2. https://amzn.to/3YYzudD 両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く Kindle版 チャールズ・A・オライリー (著), マイケル・L・タッシュマン (著), 入山 章栄 (翻訳), 渡部 典子 (翻訳), 冨山 和彦 (その他)
  3. https://amzn.to/3L7ASoh マス・カスタマイゼーション革命―リエンジニアリングが目指す革新的経営 単行本 – 1994/3/1 ジョー パイン (著), Joe Pine (原名), 坂野 友昭 (翻訳), 江夏 健一 (翻訳), IBI国際ビジネス研究センター (翻訳)
  4. https://amzn.to/3EpvTvK イノベーションのDNA[新版] 破壊的イノベータの5つのスキル Kindle版 クレイトン・クリステンセン (著), ジェフ・ダイアー (著), ハル・グレガーセン (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
  5. https://amzn.to/3Z21nBq 「最強」ソリューション戦略 (日本経済新聞出版) Kindle版 高杉康成 (著) 形式: Kindle
  6. https://amzn.to/3P0syrD 京阪バレー―日本を変革する新・優良企業たち 単行本 – 1999/9/1 日本経済新聞社 (編集), 日経= (編集), 日本経済新聞= (編集)
  7. https://amzn.to/3P47PmH 実践経営哲学 (PHP文庫) Kindle版 松下 幸之助 (著) 形式: Kindle
  8. https://amzn.to/3L6dsQl MOT技術経営入門 単行本 – 2006/9/1 延岡 健太郎 (著)
  9. https://amzn.to/45ThjrL 価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道 (日本経済新聞出版) Kindle版 延岡健太郎 (著) 形式: Kindle
  10. https://amzn.to/481Tb8c アート思考のものづくり (日本経済新聞出版) Kindle版 延岡健太郎 (著) 形式: Kindle
  11. https://amzn.to/3OUB3o0 生産システムの進化論 ハードカバー – 1997/1/1 藤本 隆宏 (著)
  12. https://amzn.to/3svQnju 日本のもの造り哲学 単行本 – 2004/6/1 藤本 隆宏 (著)