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ハーマン・サイモン自伝 | ハーマン・サイモン (著), 上田 隆穂 (監修, 翻訳), 渡部 典子 (翻訳) | 2023年書評#19

 

隠れたチャンピオン企業の著者ハーマンサイモン氏の自伝本を読みました。考えてみれば、100年も昔ではない時代に人類は領地拡大に明け暮れており、戦争をしていたと思うとすごい時代です。

コロナやウクライナ戦争でさえかなり絶望感があったことに比べると比ではないレベルで混沌とした希望を見出すことが難しい泥沼な時代だったのかもしれないと想像したりします。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

ハーマンサイモンは戦後間もない1947年にドイツに生まれました。叔父はロシアから命からがら逃げられたものの、ドイツ兵を帰還させる船で変える所をロシア兵に打たれ黒海で亡くなったりと、戦争に影響を受けた時代でした。父親も戦争へ参加しており、ワルシャワに派遣されるなど前線で闘い、そこで父親と知り合いました。

戦争が終わると二人は別々に戻りドイツの山地アイフェルに戻りました。母親は様々な場所で過ごしたこともありこの地へ移り住むことに大きな困難はなかったものの小さな村であり村の女性たちは外の世界を知らない人が多かったそうです。

父親は戦争が終わると学校へ言ったりするものの中々選択肢を選べることも無く農業の後継ぎをすることになりました。

ハーマンサイモンの幼少期は伝統的な農家で育つものの、変化が激しく起きた時代でもありました。電話、電気ストーブ、ラジオ、オートバイ、トラクター、洗濯機と次々にイノベーションが起き生活が変化していきます。その中でサイモン氏はギムナジウムへ進学するために村では珍しく受験をしにいきます。村の友人ハインツと試験に向かい誰も知らない中で試験をすると、午前中の筆記試験であっさり合格してしまいます。高原の村から出て進学をします。

その後飛行機に夢中になったサイモン氏は軍へと入隊します。空軍に入りスターファイターなど夢見ましたがパイロットになれず今度は勉学の道にのめり込みます。そこで投資ファンドを売るなどして金儲けにはまり経済学を学びます。プライシング理論の勉強をして教員の資格を取得するとデータを活用した研究へと進みMITで博士研究員をします。

アメリカへと進むと更に学問に熱心となりハーバードへと進みシリコンバレーへと移ります。大学教授になると3年毎に取得できるサバティカルを利用して日本へ旅行。東京では堀田教授などに迎えられ慶応大三田キャンパスの近くに滞在します。多くの良い出会いに恵まれ日本でも住むことになり、極東の文化を新鮮に体験するストーリーも面白いものがありました。

研究内容のプライシング理論でも多くの功績を残し、価格の掟などの名著も執筆。価値の創造、価値の伝達、価値の維持など価値に関わる尺度を形作ります。価格決定力の重要性はウォーレン・バフェットも語るように、プライシングの重要性も世の中に浸透していきました。

その後は、前回の書評でも書いた隠れたチャンピオン企業の探求に時間を注ぎます。本書の後半にある様々な出会いの章には、ピーター・ドラッカー、ヘルマンザジャーマン、テッドレヴィット、ヨーゼフヘフナー、フィリップ・コトラー、マーヴィンバウワー、ハンスリーゲル、中田智洋、ヤンシューリェン、ミキーリー、などと各国での著名人との出会いやエピソードも書かれておりとても印象深かったです。

最終章の人生の学校には様々な教訓も書かれておりました。

  • 受けた支援に感謝する
  • 明日のことは心配しない
  • 健康に生きる
  • 地に足をつける
  • 徹底的にシンプルに(KISS:Keep it simple, stupid)
  • ポラリティリーダーシップ
  • 過敏に反応しない
  • 後戻りできない状況をつくらない

印象的な言葉

幼い頃に旅行熱に駆られたことはあっても、旅行中にはやはりホームシックにかかり、家に戻りたくなった。この何とも言いがたい、明らかに矛盾した感覚はいまだに抜けない。旅行熱とホームシックは矛盾というよりも、私の2つの人間的側面を表している。家を出ることと帰ってくることは、どんな旅でも一番ワクワクする部分だ。

広大な宇宙では どこが果なのかわらかない 遠く離れていくほど 我々の巨大な鳥は虫けらおようだ 飛行の評価は 距離、スピード、男らしさ 機体の品質で見るけれども 大多数を占めるのは、男らしさだ

神が価格を決める

価格に関する情報は素早く呼吸するように市場の精鋭を支えている。価格が新しい需要状況に適応す仕組みは、ほぼ神業と思えるほど高度化されている

感想

変化の大きな時代の中を生きてきて、どの時代もビビッドに書かれたサイモン氏の生き方が垣間見れるとてもおもしろい本でした。

ヨーロッパ人にとっての日本やアジア圏への視点であったり、片田舎の村から進学を通じてどんどんと大きな世界へ羽ばたいていく様子などはグローバル化した現在からは考えられないほどの冒険だったように思います。

価格の掟についてもいつか読んでみたい本であり、色々な文献や研究結果なども覗いてみたいと思いました。まだまだ現役で寄稿などもしているので時間を見つけて読んでみたいと思います。

 

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  3. https://amzn.to/3YKTy2a クザーヌス研究序説 単行本 – 1986/2/15 日本クザ-ヌス学会 (著)
  4. https://amzn.to/3EnkBbE The Memory Illusion: Remembering, Forgetting, and the Science of False Memory (English Edition) Kindle版 英語版 Julia Shaw (著)
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  6. https://amzn.to/3lRfom9 トライアド・パワー―21世紀の国際企業戦略 (講談社文庫) 文庫 – 1989/8/1 大前 研一 (著)
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