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スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 マクロ編 | ティモシー・テイラー (著), 池上彰 (著), 高橋璃子 (翻訳) | 2023年書評109

人気の授業として選ばれたティモシー・テイラー先生の授業を纏めた本になります。

Youtubeで全然と言っていいほど見られていないのが気になりますが同じ内容を英語で30分ほどの授業形式で学べるので色々な用語を一通り触れるのに良いです。

www.youtube.com

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

マクロ経済学

上巻はミクロ経済を見ましたが下巻はマクロ経済です。ミクロ経済は大まかに4つの観点があります。

  1. 経済成長(GDP
  2. 失業率の低下
  3. インフレ率の低下
  4. 持続可能な国際収支

経済成長を測るための指標としてGDPがありますが、GDPは万能な指標でもありません。ただし万能ではないながらもGDPは経済成長を測る指標として使用され続けております。複利の話と同様でGDPの継続的な成長は大きな違いを生み出します。成長過程の国ではGDP成長率は大きくなりますが、先進国も成長し続けているために追いつくのは難しいです。最近GDPの話をよく聞きますが日本は成長が著しく緩やかであり中国に抜かれました。

アメリカが抱えていた問題は生産性上昇率の低迷であり、インフレ率と失業率が上昇し、財政赤字が膨れたことにより政策によるコントロールが必要でした。

コロナ禍では特にFRBの利上げによる景気コントロールを行いインフレ率が急激に上昇したのは記憶に新しいです。FRBが注意する指標にはCPI、PPIなどがあり物価上昇が大きくなると金利を引き上げスピードコントロールをします。

失業率とインフレ率のトレードオフにはフィリップス曲線と呼ばれる図で表されます。これは近年の研究からは短期的に有効な関係性を示しており長期的には機能しないとされています。これはケインズ派を重視するか新古典派を重視するかということにもなります。

景気対策

政府が行える景気対策には財政政策があります。これらには大きく裁量的なもの自動的なものがあります。

1960年代には多くの経済学者が裁量的な景気対策を指示していましたが、1980年代になると有効性が疑問視されます。そこにはタイミングの問題と副作用のおそれがあります。

本書には無いですがコロナ禍でのFRBはタイミングを見極め市場と対話しながら政策を進めていました。金融緩和しインフレが発生したために、利上げを行い金融を引き締め、そしてインフレが収まってきたのを見て利上げを辞めて来年は利下げが想定されています。

お金と銀行

お金の役割は次の3つです。

  1. 交換の手段
  2. 価値の保存
  3. 価値の尺度

銀行はお金を貸して利子を得ることで利益をあげます。お金の出入りで貸したお金が返すことができないと銀行は破綻に追い込まれてしまいます。

銀行は中央銀行金利を調整することによりお金の貸出をコントロールするために、中央銀行の判断が市場に出回る通貨量を決定することができます。

金融政策が機能しないケースがデフレによる不況です。利下げしてゼロ金利までいくとそれ以上にできる政策がなくなります。1930年代のアメリカは深刻なデフレになり大恐慌が重なり多くの銀行が潰れました。

ここに絡んでくるのはグローバル化した世界と自国の通貨価値です。自国の通貨が弱くなると輸出企業は有利になり、自国の通貨が強くなると輸入企業は有利になります。(日本円が安くなると海外にものを売りやすくなり、日本円が高くなると海外のものを買いやすくなる)

本書には無いですが、ここ最近の円安により為替介入した事が話題になりましたが、政府は過度な為替変動があると介入を行います。日本は石油資源など輸入に頼るために自国通貨が下がると長期的には経済的に苦しいでしょう。

為替介入が抱える問題には、為替市場がそれを予想すること、また適切なレートというものは存在しないために最適解が無いことです。

感想

マクロ編はこのコロナ禍の経済政策を見ていると本の内容とFRBの実際の動きを見れてとても内容が理解しやすく、また副作用の考えについても体系的に学べるものだったように思います。

本書を読んでからアメリカの一連の動きを見ると、政府やFRBは結構頑張ってコントロールできた好例なのではないかなと感じます。

景気後退を防ぐためにお金を配り株価はコロナショック後過去の不景気では例を見ないレベルの早さで回復しました。インフレが発生してからは利上げを行い経済をスローダウンさせる働きをしてインフレが落ち着いてきた状態です。

一方で日本はアメリカの動きに引っ張られて円安が激しく進み、金融政策をしてもデフレが取り除けない状態に陥っています。アメリカの利下げの見通しを織り込み始めたのか円高方向に少し落ち着いて来ましたが、そうするとトヨタなどの輸出企業は見通しが大幅に下がるでしょう。

アメリカと日本はエネルギー資源など根本的に構造が違いますし、世界的企業も製造業意外はほとんど無いために経済成長の能力としては厳しい印象を受けますが、今後どのようになっていくのでしょうか。