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消える地銀生き残る地銀 | 野崎 浩成 (著) | 2023年書評111

超低金利社会が長らく続き、お金を貸す形態の銀行業にとっては逆風の時代が終わり無く続いているように思います。さらにはそこからテクノロジーの発展により、銀行業に近しい機能が至る所で発生してしまい、元々テック企業でも無い銀行業は自前でシステム開発をできない側面もあり中々苦しい状態にあるように思います。

日銀総裁が上田さんへと変わりそろそろ利上げをしなければ行けないというムードが流れるもインフレが起こったと思えばインフレもすぐに収まる様子が見え隠れしてきています。

地域社会に密着した地方銀行などはその土地土地を支える存在になりながらもコロナの逆風下で資金繰りが苦しい人たちへの資金提供も必要になり、さらには貸し倒れのリスクを精査しなければならないとなると本当に神経使う大変な仕事に感じます。

銀行不要論や銀行再編論はしばしば見られるものの、実態としてはそこまで切迫した様子を内部では見られていないという事もあるようです。

📒 Summary + Notes | まとめノート

銀行の歴史

銀行の大きな環境変化の時代は大まかに15年サイクルできているようです。バブル経済が誕生した1985年からの15年は自然淘汰が進み大きな銀行でも退場を余儀なくされました。2018年までは安定した15年、バブルの不良債権処理などから立ち直りを果たした時期になります。そしてここ数年が新しい15年の始まりにはいり新しい自然淘汰の周期になっていると著者は考えています。

銀行の主となる仕事にはお金を貸出することによる利ざやです。ただし、自己資本比率の増加により借入金の大幅な減少が起きており財務健全を重要視されている傾向による銀行側の利益の低下があります。そのために、国内での資金利益に依存している地銀にはとても厳しい状況になっています。

引用:https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/keyword/keyword_01.htm

そうすると銀行はリスクの高い人に対して貸出を行うなどをする必要性も生まれてきてしまい、多重債務者への貸出やシェアハウス向けローンの事案などが起きてしまいました。

フィンテックの波もある一方で、紙の通帳への書き込むが依然として続いている銀行も多くあります。ATMなど通帳記帳の取り扱いがあるとコストも高くなり身軽さが失われてしまう銀行も少なくありません。

地銀の現状と好例

最近再加熱している低PBRの話題がありますが、地銀は低PBRの代表格銘柄です。2023年は銀行株に取って希望の年でもあり低PBRも緩和されてきた部分もありますが、銀行にとっては大きなテーマになっています。

www.bloomberg.co.jp

本書で紹介されている今後の解決策は以下です。

株主に合わせるのではなく、地銀の持続可能性に資する方策に賛同する投資家を株主に

  1. 経営ビジョンの明示
  2. 利益成長よりも利益安定性を重視することを明示
  3. 株価下落の甘受
  4. 情報の非対称性の解消

非上場化による本質的コミュニティバンク化

  1. 資本調達方法の確定
  2. チェックポイントのクリア
  3. 非上場化後のキャッシュアウト検討方法

海外の銀行などにおいて様々な成功事例もあります。

再編:トラストリージョナルバンク

システムや管理業務の一元化

グループ化:SBIによる第四のメガバンク構想

発展的ガラパゴス化や事業先鋭化:イギリスブティックバンク、パーランドのmBank

感想

本書の最後に地方銀行ふくおかファイナンシャルグループによるネット銀行みんなの銀行の事例なども紹介されているのですが、最近になって赤字が深刻であるというニュースもありました。

facta.co.jp

みんなの銀行は多くのキャンペーンを打って拡大をしていた一方で中々回収が思うほど進んでいないという事もあるのでしょうか、地方銀行の難しさを改めて感じます。

銀行業の本来の動きが低金利により制限されており、そこに内部留保の確保や自己資本比率の増加などの安定志向の企業体制、また各企業が銀行業に近しい業務を行うなどの向かい風が吹いている事は確かでしょう。

そこに日本経済の停滞なども重なり中々本来の貸出業務ができない中でどうやって回復をしていけば言いのでしょうか。

まだまだ厳しい時代は続くとは思いますがその中でどのように活路を見出していくのかウォッチしていきたいと思います。