財務諸表を読むにあたりより実践的に企業の決算内容を見ながらそこから何を読み取れるかを見ていく本になります。ビジネススクールは行ったこと無いのでわからないのですが、こういう感じのことやるのでしょうかね。
掲載されている企業は10社で、こちらの企業の決算内容を比較しながら会社の特徴を見ていく流れになります。
📒 Summary + Notes | まとめノート
ROE
ROEは当期純利益を自己資本で割ったものであり、株主の資本がどれだけ効率よく儲けにつながっているのかが分かる指標になります。こちらをデュポンシステムで分解すると3項目から成ることがわかります。
ROE=売上高当期純利益率(収益性)×総資産回転率(効率性)×財務レバレッジ(安全性・借りれの多さなど)
日本企業はROEが低いと言われるのですが、理由は色々あり収益性の低い事業を持ち続けたり、内部留保を増やして非借金経営などの財務安全性が好まれたり、値上げがしにくい利益のあげにくさなどあるようです。
株探ではROEの表記もありますがそれぞれ3項目も見ることができます。下のカルビーの例ですと、利益率が下がって来ており、財務レバレッジも落ちている(自己資本比率アップ)、総資産回転率はあまり変わっていない結果としてROEも落ちてきている事がわかります。
参考:https://kabutan.jp/stock/finance?code=2229
ソフトバンクグループなどは財務レバレッジがとても高く新規事業や投資を沢山行い最近ではアームのようにホームランを当てて全部取り返すというような経営で投資会社に近い側面もありそうです。
本書で参考になったのは、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間、仕入債権回転期間から、棚卸資産回転期間や仕入債権回収期間が短いとより効率的に資産を利益に変えられているなどわかるという点でしょうか。
レバレッジについてリスクを取れば財務レバレッジは高くなりますし、無借金経営などであれば財務レバレッジは低くなります。レバレッジがきくと財務安全性は低くなってしまいますので、社債格付けなどは低く利率が高くなりがちです。最近ですと楽天などが良い例でしょうか。
企業の成長フェーズなどで何が良いのかは変わってくるために、正解は無いのですが、比較する際にはとても良い指標に見えます。(WACCなどで評価するケースもあるようです)
その他
成長について
上場企業であれば株主から成長が求められるのが資本主義社会なのですが、持続的にできるというのは経営がうまくないとできないでしょう。ヤオコーは本書の例で記載されていますが、現在35年連続増益している企業です。
IRバンクなどで細かい業績推移を見ることができます。(https://irbank.net/E03127/quarter)
スーパーという業態であるためにデュポンシステムで見ると薄利多売の形態にはなりますが、他地域のスーパーと比べると利益率が多少良く、回転率が良い状態です。
各章で、より良いものをより安くという事にはニトリと無印を比較、コストは信越化学と日東電工を比較、もったいないの考えについてはユニクロとしまむらを比較、キャッシュフローは日立とパナソニック、M&Aはセブン&アイを例にデュポンシステムでのROE分析をベースにしながら回転期間やCCCを見つつ考察してく流れになります。
感想
決算書に関わる本を読み続けていくと少しずつ言っている事が分かってきたり、株探やIRバンクにある数値の意味合いや比較したときの洞察が増えてきて嬉しく思います。
このような事を重ねていくとROEが高くなったのは何故なのか?財務レバレッジ高いけど大きく拡大を狙っているフェーズなのかな?でも株価はまだ上がってないような気がするな、などのような考えが繋がると嬉しいですよね。
記事など読む時も記者が書いている内容が妥当性あるのかなどを決算情報から答え合わせもできるようになると少し見える世界が変わってくるのかなと思います。
考え方や読み方のお手本となるようなアナリストレポートも読むように努力したいですね。まだまだ使いこなせるまでは遠そうではありますが、今年は少しでも読めるようになりたいです。
著者の西山さんは日経ビジネススクールで講師されているようですね。