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武器としての会計ファイナンス 「カネの流れ」をどう最適化して戦略を成功させるか? | 矢部 謙介 (著) | 2023年書評65

先日読んだ投資家である駄犬さんのブログに影響されて決算書を読めるようにならなければと思い会計関連の本を読むようにしておりました。決算書には企業情報が一定基準の元記載されており、経営のスタイルや企業の状態が凝縮されているのにも関わらず中々読むほどのモチベーションがなく読めていなかったために今後は少しずつ読書や決算書の読み込みを通じて慣れていきたいと思います。

本書では財務諸表3表を通じて企業の状態を理解しそこから戦略を作成していくというようなMBAで学ぶような視点が組み込まれております。財務諸表3表から状態を理解し、実態のビジネスと照らし合わせて現実に即したKPI作成、さらにそこからのPDCA作成にまでわたりわかりやすくKPIやPDCAの作成部分にまで参考になる部分が多くありました。

 

ohtanao.hatenablog.com

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

収益モデル

固定費と変動費

企業ごとに収益モデルは異なり売上高と費用が比例しないケースするケースなどから「固定費」型、「変動費」型のビジネスモデルがあります。DNeAなどのゲーム企業は固定費型ですし、宿泊業やテーマパークなども同様です。これらの企業の損益分岐点がどこになるか認識しておく必要があります。固定費型のビジネスは売上が上がれば利益も増えますが、変動費型のビジネスは売上が上がれば費用も上がるため利益はそこまで変動しないです。変動型はそのためローリスク・ローリターンと言えるでしょう。

製造個数と利益、キャッシュフロー

製造個数が増えると会計上B/Sの棚卸資産が増えます。現金が棚卸資産に形を変えた状態です。これらはキャッシュフローを圧迫し資金繰りに対してマイナスの作用を与えます。また、在庫が売れない状態になると損失の計上にも繋がります。

P/L上費用なのにキャッシュフローに影響を与えない減価償却費やキャッシュフローに関係するのに費用にならない棚卸資産の増減、売上債券の増減、仕入れ債券などに注意する必要があります。

黒字倒産においては営業CFのマイナスが続いていないか確認することも重要です。

キャッシュフローを良くするためには以下のようなアクションがあります。

  1. 売上債権の回収期間を短くする
  2. 無駄な棚卸資産を持たないようにする
  3. 仕入れ債券の支払い期間を長くする

負債と節税効果

有利子負債は無い方が財務上良いのですが、有利子負債は節税効果があるために、有利子負債をうまく活用することで同じ売上高であっても税金の支払いが減ることがあります。

アマゾンの例

本書で上げられているアマゾンのFCFがとても勉強になります。アマゾンは先行投資を多く行いながらも当期純利益がFCFを上回ることが多い企業です。FCFを高めるためには営業CFが高くないといけません。また営業CFが高くあるためには利益を増やすまたは運転資本をスリム化することが求められます。

アマゾンの場合の特筆すべき点は売上債券や棚卸資産の金額に比べて仕入れ債券の金額が非常に大きく、かつ支払期間が長いことです。CCCを見ると常にマイナスであり、仕入れ債券期間が棚卸資産回転期間売上債権回転期間の合計よりも長くなっていることから、支払いが遅くできることで運転資本を生み出していることが分かります。

ただし、売上が拡大している局面に関してはよいとされますが、売上が減少に転じるとキャッシュフローの減少を招きます。NOVAは同様の構造を抱えており、受講者から料金を前払いで獲得し投資することで拡大を行いましたが成長が停滞すると資金繰りが行き詰まり破綻へと繋がりました。

投資判断の手法

NPV法

IRR法

DCF法

類似会社比較法

株主還元と株主価値

配当政策無関連性命題:https://ja.wikipedia.org/wiki/MM理論

シグナリング仮説

フリーキャッシュフロー仮説

感想

前半は前著と同内容のものが多く財務三表の部分は再確認程度にさっと読み、後半はKPI設定の部分について前著よりも詳しく様々な手法が紹介されていた本でした。

会計をベースに考えた経営戦略の建て方について勉強できるのですが、ケース・バイ・ケースで成功の確証が無いために実際の経営戦略立案は複雑な仕事だなという印象です。一方で何をしてきたか・何をしようとしているかなどは財務情報や決算説明資料から会計を理解しておくことで読み解けるものが多くあるのではというのも気づきでした。

コマツROEに対するKPI設定に対して、財務レバレッジを上げていない安全性を確保しながらの会計情報を見ることで、資産回転率と売上高当期純利益率を上げることで達成を見込んでいたことなど株主を意識した目標設定であったことなど解説されていて、このような視点が得られると投資判断に活用できるように思いました。