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監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影 | テクノロジーのダークサイド | Netflix review #1

久ぶりにNetflixを使い始めたのですが、改めてとても良いコンテンツだなと感じました。

今回見たのはThe social Dilemma (監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影)です。

www.netflix.com

ソーシャルメディアのビジネスモデル

GoogleFacebookTwitterPinterestAmazon、など今私達が日常的に使用しているソーシャルメディアのビジネスモデルは広告です。

ユーザーが興味を持つ広告を表示し、ユーザーも欲しかったものを見つけ、広告者にも購買意欲のあるユーザーにリーチできるためにとてもWin-Winなモデルだと思います。

ユーザーの情報を集め、広告者にリーチさせるという点で私達は自分たちの行動履歴や検索履歴をソーシャルメディアに支払う対価として無料でそれらのサービスを使う形になります。

一方、ソーシャルメディアは広告主がお客さんでもあるため、多くの広告を表示させユーザーと広告の接触回数を増やす必要があります。

ユーザーに対してスクリーンを見させる数々の仕組みを作るわけです。

Facebookタグ機能は一つの成功例で、タグをつけられた人はそのフィードや写真を見てライクを押し、自分の投稿でもタグをつけることでユーザー同士のコミュニケーションがソーシャルメディア上で発生します。ユーザーの滞在時間が長くなります。

新着メッセージの表示をさせる仕組みも同様です。定期的に新着のメッセージやライク、タグ付け、アップデートを知らせるお知らせが携帯のロック画面上に表示されます。

言い換えると、時間を奪うために気にならせる、どっぷり浸からせる仕組みを頭を使って考えています。

浮かび上がる問題点

ソーシャルメディアの影響力が大きくなるにつれて多くの問題点が議論されます。

Social media Addiction

とても賢い仕組みでかつ日々改善されるアルゴリズムで人々がいかにソーシャルメディアに触れたくなるか、触れていないといけないと思わせるかを狙いにしているため、スクリーンを除く時間が多くなります。

多くの人々は集中力を欠き、目の前の事よりもソーシャルメディア上で起こっている事に気を取られるようになります。

自殺率の上昇

アメリカではティーンエイジャー、プレティーンエイジャーのうつ、自殺者が増加傾向にあります。その傾向が見られたのは2010年以降大きなソーシャルメディアの誕生以降の事です。

ソーシャルメディアで承認欲求を得られず、寂しさを感じるという循環は避けがたいがために、もっと考えなければ行けない話題ではないでしょうか。

time.com

フェイクニュース

選挙がらみの政治的な発言でソーシャルメディアが使われる事が増えてきました。

またコロナウイルスに関する多くのフェイクニュースSNS上を飛び交っています。

Googleの検索結果はそれぞれ個人にカスタマイズされているために、同じ言葉を検索しても違うページが表示される事があります。

私が見ている検索ページは、誰かの見ている検索ページと違う。

私が見ているSNSの情報は、誰かが見ているSNSの情報と違う。

そして、私の考えはその検索ページやSNSの情報のバイアスがかかっている、という事に注意する必要があります。

特に怒りや不安を煽るような情報はより勢いよく拡散される傾向があるためにSNSでどのような情報を得るか気をつける必要があります。

ソーシャルメディアは悪魔か?

デジタル社会の良い側面

今までの話を振り返ると、ソーシャルメディアはいいところないのでは…となりますが、良い側面はそれ以上にあります。

例えばGoogle Mapsはわかりやすい例です。

行きたいところを携帯に伝えると、最適なルートが数秒で導き出されます。地図を正確に読む必要も、交通渋滞を予測する必要も、その地域に詳しい誰かにルートのアドバイスを聞く必要もなく、最適なルートを提示してくれます。

電車の乗り換えもそうです。訪問する会社の位置を検索してルートを調べれば、自動的に最適な電車やバスのルートを出してくれます。

さらに、それらの情報は日々正確性を増してくれます。

美味しいレストランやカフェ、ラーメン屋さんもそうですね。旅行した知らない土地のご飯もGoogle Mapsの星の数を調べれば美味しいお店にたどり着けます。

それでは、どうしたら良いのか

ソーシャルメディアが台頭したこの時代、とても大きなマーケットが生まれました。

ビジネスモデルが広告であり多くの資金が生まれている限り、この構造は変わらないと言います。

デジタルアセット(データ)の活用に対してルールがほとんどありません。

データは石油に変わる資源と言われており、石油が多くの資産を生んだように、デジタルアセットは多くの資産を生んでいます。

広告がビジネスモデルであり続ける限り、ソーシャルメディアが人々の時間を奪おうとする構造を変えられないことを認識する必要があります。

最後に今すぐできるアクションアイデアが挙げられています。

  • アプリをアンインストールする
  • ノティフィケーションをオフにする
  • Youtubeのレコメンド機能をオフにする
  • クロムエクステンションを使用してレコメンド機能をオフにする
  •  Twitterで異なる意見の人をフォローする
  •  SNSの使用制限する
  • ベッドルームや学校からデバイスをなくす
  • バイス使用時間を認識する 

さいごに・どんな人におすすめか

ソーシャルメディアと接点が無い人はほとんどいない現代で、どういったビジネスモデルで無料のサービスを享受しているのか認識するためにはとても良い作品でした。

数々の有名テックカンパニーの元社員、それも幹部クラスのメンバーが語る内容にはとても説得力があります。

最後の数分までテクノロジーのダークサイドを紹介しているため、ネガティブな側面が強調されているように思いますが、最後にポジティブな側面やうまい付き合い方や考え方が紹介されているのはとてもバランスの取れた視点を得られると思います。

個人的にはソーシャルメディアで視野が広がる経験が多くあったり、自身の所属企業内で完結していた生活も、TwitterFacebookで他の価値観に触れられる機会があったため、どちらかというとソーシャルメディアには楽観的な意見を持っています。

大きく開かれた情報の中からなにを選択するか。どう付き合うかは、きっと自分たちの努力でどうにかなるものだと思います。

その一方で、わたしの行動をコントロールしようとしている事も頭に入れながらうまく付き合っていけたらなと思いました。

未来IT図解 これからのDX | 流行りのデジタルトランスフォーメーションとは | 2020年書評#26

経済産業省お墨付きのDX(デジタルトランスフォーメーション)は最近のバズワードです。

www.meti.go.jp

政府からの発表もあり、多くの人の注目を集めている一方、実態として中国のDX化に比べると足元にも及ばない気がします。そもそもDXというワードよりも、中国の事例でよく聞くのはOMOなどより具体的な話に近しいですし、日本でDXというとIT化とオーバーラップするレベルの話題が多いように思います。

中国では、顔認証のゲートが地下鉄や鉄道に当たり前にあり、物理カード要らずのQRコードですべての支払が済み、レストランでは机にあるQRコードを読み取りスマートフォンでメニューを見て注文し料理が来る前に会計を済ませる。

そんな世界が当たり前にある中で、電車の改札は未だICカードのみで、レストランでは紙のメニューを開き会計時にはレジに行き支払い、というアナログの国が世界で大半です。

DX化という指標で行くと、詳しい事情はわかりませんが街なかで生活することに関しては上海の5〜10年前と今の東京が同じぐらいのレベルなように思います。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとはDigital Transformationの略でスウェーデンウメオ大学のエリックストルターマン教授が提唱し始めたと言われています。

データやデジタル技術を活用することで、業務そのものや、組織、風呂セス、企業文化、風土までも改革することを定義していると書かれています。

この本でよく出てくるのですが、デジタルディスラプション(破壊的な企業)を起こすようなものがDX化に伴いより多く出てくるといいます。

DXはわかった、じゃあ具体的にどうするのか

で、この本のターゲットはおそらくDXという言葉は聞いたことがあるけれども、DXって何?という人たちのように思います。

というのも、アフターデジタルや14億人のデジタルエコノミーのような具体的な例がアマゾンやネットフリックスぐらいしか無く、DXしている領域なものの有名なごく僅かな事例の社名ぐらいしか挙げられていません。

それってどうなの?というような内容であることは正直な感想でしたが、ある種それが今の日本のITリテラシー標準なのかなと感じるところでもあります。

ohtanao.hatenablog.com

ohtanao.hatenablog.com

さいごに・どういった人におすすめか

DXという言葉を耳にし、興味があるけど何か分からない、という層に良い内容なのかなと思います。イラストを大いに活用してあり、なんとなくわかった気になれるようなイメージです。

企業の偉い人がこういった本を読み、ゆるふわとDX化なんて言うのかななど想像ができる内容であったのは少し残念ではありました。

著者の方の連載が下記にあるので気になる方は下記のzdnetの記事を少し見てから本を読むか決めてみても良いのではないでしょうか。

japan.zdnet.com

株価を上げるために事業内容にDXやSaaSと書いてしまう企業が多く見られる現状を考えると、日本のDX推進はかなり暗いものになっているような気がしますし、結局はDXコンサルなんてものが乱立しては資金を吸い取って大きなDX化が起こらなかったなんてことも予期できそうです。

中央銀行の「静かなる革命」 | 透明性・多数決・中央銀行と市場について | 2020年書評#25

中央銀行という機関はかなり古くから存在する機関です。

経済活動について勉強していく中でたまたま見つけた中央銀行に関する本を読んでみました。

ja.wikipedia.org

中央銀行は外部に対して秘密を漏らさず、自分の姿を見せるべきではない、という考えがあったようで、秘密主義めいた部分があります。

しかし、著者ブラインダーによるとこの秘密主義について近年大きく変わりつつあると言います。この本で書かれているのは、透明性、多数決、市場との関係性であり、この3点について以下に変化があったのか説明されています。

中央銀行の透明性とは

本書が書かれたのは2008年のことなので現状とは少しズレがあるかもしれませんが、中央銀行の透明性というのは元来低いものであったようです。

中央銀行の決定が「簡単に判別でき」、中央銀行の政策が「用意に理解でき」、中央銀行の発表に「虚偽が存在しない」時に中央銀行は透明性があると本書では定義し議論していきます。

透明性を高める理由には、政治的見地、経済的にも好ましいと言われています。

それでは、何を透明にするべきかです。FOMCの任務は「雇用を最大化し、物価を安定させ、長期金利を低めに抑える」事です。これらの任務は目標として捉えてもよく、この目標のためにどのような政策が行われたかということを分析するべきと言います。

政策が透明になれば、その政策がどのように決定されたのか過程を公表することも求められてきます。

近年広まった中央銀行が透明になり、目標を公表し、政策やその狙い、過程を公開していくことはだんだんと当たり前になってきているようです。

日本の中央銀行にあたる日本銀行も様々な政策を公表しています。

www.boj.or.jp

www.bloomberg.co.jp

一人による決定から多数による決定へ

中央銀行の意思決定は総裁により行われていました。近年、例えば英国、スウェーデン、スイス、ブラジルにおいて委員会による意思決定をするというように多数による決定へと変化が生じています。

「多様性に富む」グループのほうが個人や同質的なグループよりも複雑な問題を解くことができるとル・ホングとスコット・ページは論文で発表しています。

個人よりも委員会方式が良いとする3つの理由は以下と言います。

1.委員会によるブレーキ機能

2.多様な知識によるよりより決定可能性

3.複雑な仕事を処理する点において個人よりの意思決定を上回る

一方、個人の意思決定が有利と言える点もあり、変動幅が大きく(早い動き)、極端な政策ができる、という点です。

とても興味深い話として、世界にある様々な中央銀行の中では民主度の極めて低い中央銀行の一つにニュージーランドが挙げられるのですが、ニュージーランド中央銀行は最も透明性の高い銀行とされています。

つまり、決定は独裁的ですがとても透明性の高い情報開示をしているという点です。

反対に、スイスの中央銀行は民主度はそれなりに高いのですが透明性が極めて低いです。

方向性としては委員会による決定へと向かっているようです。

リードするのは中央銀行か市場か

本書の中で書かれている詳細は難しく理解が追いつかなかったのですが、結論としては、リードするのは中央銀行がベターのようです。

市場は時に正しい判断を行い、時に誤った判断をする群衆であり、市場は常に中央銀行が考慮に入れるべき対象ではあるが、ときには操作の対象ともすべき点に留意すべきと述べています。中央銀行が市場を追随すべき存在では無いと。

解説にて植田和男さんはこの点について最も興味深く言及しています。

ブラインダーによる中央銀行リードの金融政策は理想ではあるものの、実態としては難しい部分もあるようで、中央銀行リードによるあるべき形はできていない事が多いようです。

さいごに・どんな人におすすめか

中央銀行の金融政策が直面する3つの課題ということで、独裁制の希薄化、市場とのバランスについて大まかに知ることができました。

特に市場とのバランスに関しては根本的な解決策は未だ見えておらず、市場という欲望にまみれた強力な生き物に対してどうリードしていくのかはこれからウォッチしていってみたいと思います。

経済学を勉強していたり市場に詳しい人にとってどのように感じるかはわかりませんでしたが、中央銀行という機関がどういった構造で性格を持ってきたのか。今まで激しく変化の遅い機関であった世界中の中央銀行がどのように変わってきているのかというのを感じ取れる本でした。