地方の住宅開発の空き家は話題になることが多く、ニュータウンとして開発された土地に残る空き家について調べ実際に住んでいる著者の本になります。
最近はYoutubeでも栄えた街がどのようになったかを見るチャンネルも多くありまちづくりの成れ果てを見ることができます。
本書の著者もYoutubeをしています。
📒 Summary + Notes | まとめノート
限界ニュータウン
本書では主に千葉の北東部にあるエリアで成田空港の近く、茨城県の南側のエリアを題材にしています。限界ニュータウンは造語であり限界集落とニュータウンをあわせたものになります。
高度経済成長の開発ブームの中で宅地分譲が様々な土地で起こりました。その多くは土地を投資対象とした土地成金を狙う目的のものが多くそれにビジネスが乗っかり開発をどんどん行った企業がありました。
そうすると販売する側も宅地目的でないという事に漬け込み開発業者も宅地に必要な集中井戸や集中浄化槽などのインフラ整備が蔑ろにされた営業が実施。
結果として空き地が点在し商業開発などもされず利便性が著しく低い状態であり実際に住む人にも不便な状態となってしまいました。
ニュータウンの構想はイギリスが起源でありエベネーザーハワードによるものでした。計画的で良質な田園都市を構築しロンドン郊外のレッチワースなどは成功事例でしたが、その理念は多くの失敗を生み出すことになります。
問題点
先述したように実使用の見込みがないのに住宅地としての売出しが行われていたため、質の低い工事がおき住民訴訟がおきた事例があります。
開発業者はその土地に関わりのない会社であったり、また無名で今では連絡が取れないようなケースも少なくないようです。
水道やガスの設備に関しても計画した個数での管理を見込まれていたために、見込みより少ない住民数であった場合は採算が取れない計画が多く残ります。空き地で連絡が取れない持ち主も多く割当られたインフラ用の費用の未払問題も起こり、土地取得者にその未生産分割当が配分されることで次の購入者が二の足を踏む理由になります。
放置された分譲時は空き地になり草木が伸びると不法投棄に結びついてしまい家電製品やタイヤなど不法投棄されてしまうことに繋がります。近くの住人が手入れすることも場合によってはあるようですが、基本的には所有者の許可などが必要であること、土地によってはバリケードを付けられて入りにくいようになっており手入れできない理由にもなります。
自治体や企業が新たな所有者を見つけるインセンティブも少なく、土地費用が極端に安くなっていることもありその仲介をする利益が少ない事も少なくありません。自治体では空き家バンクなどで登録することもありますが、基本的には行政の関心も低いために放置されてしまう事が少なくありません。
限界ニュータウンでの暮らし
そんな中著者も限界ニュータウンで暮らしており、東京で住むより低コストで住める経済面や限界ニュータウンの中でいくつか分譲地を買うことで物置としての場所を所有するなど恩恵を活かして生活しているようです。
他にも限界ニュータウンでバブル期に買っていたセカンドハウスを持つ都内在住の家族が2世代で活用している例などもあり、上手く活用しているケースも紹介されています。
読んでいた中で向いている属性だなと思うのは、会社に頻繁に通う必要が無いまたは車でアクセスしやすいケースで比較的土地の縛りが無い家庭には良い選択になりそうです。また子どもが遊べるスペースや近所の分譲地も変えるようなケースも少なくなく、車を複数台持てばそこに止めたり、農地として活用できたりなど利点も多くあります。
感想
規模の大きな土地を活用した開発のビジネスの旨味と問題を垣間見れる本だったように思います。投機的なビジネスで問題をある程度推測できる中でも資本主義的にそこに旨味があることにより長期的視点が欠けたまま次々に開発が行われていた事が想像できます。
よく投資をしていると音楽が流れている間は踊り続けなければいけない、などと言いますが要はバブルの時が儲けられるチャンスでもあるという事になります。株などであれば短期的に利ざやが稼げればまだ長期的な深刻化は少ない側面もありますが、土地のような規模の大きな話であればまたちょっと話が違ってくるように思います。
まちづくりの観点で東京でも大規模開発と呼ばれるケースがあり大きな施設を建設しては街が大きく変化しますが、数十年単位で考えた時に大きな開発であればあるほど問題が起きた時の規模は大きくなり後戻りがしにくいため考えものですよね。土地の流動性は比較的低いですしそこに経済的な側面で縛られて身動きが取れない人たちも発生してしまうというのは悲しく感じます。
一方で実利用して快適に過ごしている人が居るのも事実であり、チャンスとなる人も多く居る気がします。少子高齢化もあり、教育施設の統廃合が進む中でどこまで生活インフラがしっかりできるのかという問題は残りますが問題があるところにはチャンスがあると思いたいですね。
人生フルーツで取り上げられる老夫婦はニュータウン開発するならば自分もそこに移り住むということで当事者意識を持ち開発をした少ない事例だったのではないでしょうか。
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