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建築のハノイ―ベトナムに誕生したパリ | 大田 省一 (著), 増田 彰久 (写真) | 2023年書評105

リー・クアンユーの本において気の毒な歴史として語られたベトナムの建築について纏められていた建築のハノイを読みました。

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これもベトナム旅行を期に興味を持ち読む事になったのですが、ベトナムはフランス植民地であったこともありフランスの建築家が多くの建築を立てました。植民地で比較的自由も効いたようで、象徴的な建物を建てようという機運やまちづくりも力を入れていたために東南アジアにパリを再現しようというような背景もあったようです。

今回初めてベトナムに行ってホイアン、ダナン、ホーチミンと旅行したのですが、建物もとても魅力的で、古い建物やホテルも多く街なかを歩いているだけでも楽しい時間でした。

かつて「ふらんすへ行きたしと思へどふらんすはあまりに通し」と過去の日本人はフランスの遠さに哀しみを感じて居たようですが、フランスの町並みや食文化など含めヨーロッパの雰囲気を味わえる身近な国としてベトナムはぴったりではないでしょうか。

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

下に纏めたのですが、多くの建築は1900年ごろから立て始められ30年内、40年代に多くが建てられました。モダニズム建築はフランスを含む西洋では1920年代ごろから建てられはじめ、インドシナに到着し1930年代に建てられたインドシナ銀行やインドシナ不動産銀行はジョルジュ・トローヴェにより先導されます。

またその後になるとベトナム現地の雰囲気を含むインドシナ洋式という本国の雰囲気を持ち込むだけならず、コラボレーションしたようなものになっていきます。

ヨーロッパの洋式を取り入れた建築はフランス統治後でしたが、それ以前はベトナムの王朝がありました。最期の王朝はベトナムの中央部のフエにあります。フエには王宮建築が残されており、北京まで出向きまちづくりを真似して建てられたそうで、日本でいう奈良や京都のような街作りになっています。

面白いのはフランスの影響を受けており、中国の王朝をそのまま真似するだけではなくフランス洋式との融合がされているようで美的感覚の豊かさに驚きます。

ダラットと呼ばれる避暑地として知られる土地はフランス人が熱すぎるベトナムの市街から逃れて休暇をす過ごす場所でした。ここではヴィラ(別荘)の建築が盛んで、お金持ちがこだわり抜いた建築物が多くあります。

ホーチミンは経済の都市として大きな川がある街で交易も盛んでした。資本家も多くいたために豪華な建築物も多くあり、川沿いのマジェステックホテルなどは中国人の資本家フイ・ボン・ホアが運営を行っており、その他にも市場や病院の建築も手掛けたそうです。

中国出身の人たちも多く、各出身地にまつわるお寺などを建てては交流の場になっていました。

本書で紹介される建築リスト

1 オペラ座 アルレイ 1901年着工 1911年完成 ハノイ
2 ハノイ大聖堂礼拝堂 ランデ神父 デュポミエール ハノイ
3 ハノイ大聖堂 ピガニエール司教 1884年竣工 1888年完了 ハノイ
4 給水塔 1880年 ハノイ
5 ポールベール公園(現リータイトー公園)の八角 ポールベール ハノイ
6 ホアロー刑務所 オーギュスト・アンリ・ヴィルデュ 1899年 ハノイ
7 裁判所 オーギュスト・アンリ・ヴィルデュ 1906年 ハノイ
8 インドシナ雲南鉄道本社 ホアン・ギア・サン(修築) 1910年代 ハノイ
9 ホテル・メトロポール 1901年 ハノイ
10 ドゥメール橋(現ロンビエン橋) デイデ&ピレ ポール・ドゥメール 1902年 ハノイ
11 総督官邸 シャルル・リシタンフルデール 1907年 ハノイ
12 トンキン理事長官官邸 アドルフ・ビシュー 1919年 ハノイ
13 聖マリア修道院 サン・ポール・ドゥ・シャルトル修道女会 1916年 ハノイ
14 リセ・アルベール・サロー ヴィルニュイユ&クラヴェロー 1919年 ハノイ
15 ヴィラ(ホータイ八角館など) 19世紀末 ハノイ
16 フランス極東学院博物館(現歴史博物館) エルネスト・エブラール シャルル・バトゥール 1932年 ハノイ
17 インドシナ大学(現ベトナム国家大学) エルネスト・エブラール 1927年 ハノイ
18 連邦政府財務省庁舎 エルネスト・エブラール 1927年 ハノイ
19 北門教会 エルネスト・エブラール 1931 ハノイ
20 パスツール研究所 ガストン・ロジェ 1930 ハノイ
21 インドシナ大学学生寄宿舎 1940年代 ハノイ
22 インドシナ銀行 ジョルジュ・トローヴェ 1930 ハノイ
23 バニエール・ガラージ ジョルジュ・トローヴェ 1927 ハノイ
24 ハノイ商業農業会議所 アンリ・セルッティ・マリオ 1942 ハノイ
25 アールデコの病院 1930年代 ハノイ
26 モダニズムのヴィラ(個人邸) フイン・タン・ファット 1930年代 ハノイ
27 軍事博物館の国旗塔 フランス軍工兵隊 1812 ハノイ
28 一柱寺(延祐寺) 1049 ハノイ
29 玉山祠 グエン・ヴァン・シエウ 1843 ハノイ
30 ディンバン村の祭祠ディン ハノイ
31 亀の塔 1736 ハノイ
32 フエ王宮太和殿 阮朝工部 1805 フエ
33 カイディン帝陵 ファム・テー・ナン阮朝工部 1931 フエ
34 ダラット教会 1938 ダラット
35 ダラット駅 ポール・モンセ、ルヴェロン 1938 ダラット
36 ダラットのパレス1 1929 ダラット
37 ダラットパレスホテル 1922 ダラット
38 バオダイ帝ヴィラ ポール・ヴェシール、グエン・ヴァン・ニン 1938 ダラット
39 ホーチミン市庁舎 フェルナン・ガデ 1907 ホーチミン
40 レホンフォン高校 エルネスト・エブラール 1933 ホーチミン
41 ホーチミン市中央郵便局 ルフレッド・フォーロー 1891 ホーチミン
42 サイゴン大聖堂 ジュール・ブラール 1880 ホーチミン
43 サイゴンの給水塔 ホーチミン
44 第2児童病院 フランス海軍工兵隊 1875 ホーチミン
45 ホーチミン市歴史博物館 オーギュスト・ドゥラヴァル 1929 ホーチミン
46 ホーチミン市市立劇場 F・オリヴィエ、E・ギシャール、E・フェレ 1900 ホーチミン
47 ビンタイ市場 コートネー 1930 ハノイ
48 チュア・ヴィンチャン 1849
49 ファットジェム大聖堂 チャン・ルック 1899
50 ファットジェムの村の屋根付きの橋 1902
51 ヤシ教の島

 

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感想

ベトナムは以前読んだ本であった技能実習生などのイメージが強くどちらかというと良いイメージが無かったのですが、行ってみたら美しさや懐かしさが目を引くとても魅力的な国でした。

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上海やシンガポールのようにアジア各地に西洋建築が残るのですが、ベトナムはフランス植民地ということもあり美的感覚も高いのかなと感じるものもあります。

建築家にとっては自由に気持ちの乗った仕事ができる土地として植民地はきっと力を入れたいものであったようで、有名建築家が数多く来てランドマークとなる建物を建てていきました。当時の様子は分からないですし帝国主義の根本思想には感銘を受けないですがこのように西洋文化がアジアに流入して本国に負けず劣らずの美しい建物を残したのはプラスの側面に思います。

思えば日本の都も中国の朝廷を模倣しており、どの時代にも海外の憧れや先端と見られる文化を取り入れていくというのはあるものだと感じます。模倣とその土地の文化が織り交ぜて新しい洋式や文化が誕生していくという特徴が生まれていくのも旅行する楽しみだと思いました。

本書の最期に宗教の変化も書いてあり、ベトナムはもともと中国支配だったこともありお寺もあればキリスト教も多くノートルダム大聖堂のような建築物もホーチミンにあり文化の合流地点である珍しい土地です。

また行きたいと思いベトナム語の本を買ったので勉強してみようと思いました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3GIcQxF 現代ベトナムを知るための60章【第2版】(エリアスタディーズ39) (エリア・スタディーズ) 単行本 – 2012/10/30 英語版 今井 昭夫 (著, 編集), 岩井 美佐紀 (著, 編集), 坂田 正三 (編集), 遠藤 聡 (編集)
  2. https://amzn.to/3RoEpRp もっと知りたいベトナム 単行本 – 1995/8/1 桜井 由躬雄 (編集)
  3. https://amzn.to/3NtgcZj ヴェトナム (暮らしがわかるアジア読本) 単行本 – 1995/11/1 坪井 善明 (編集)
  4. https://amzn.to/47Rc3X8 物語ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム 物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム (中公新書) Kindle版 小倉貞男 (著) 形式: Kindle
  5. https://amzn.to/41k0zZV ハノイの憂鬱 単行本 – 1989/12/1 桜井 由躬雄 (著)
  6. https://amzn.to/3GIwxW1 増補新装版 ベトナムの世界史: 中華世界から東南アジア世界へ (UPコレクション) 単行本 – 2015/9/12 古田 元夫 (著)
  7. https://amzn.to/3TnCRtA ベトナムの社会と文化〈第8号(2018)〉 単行本 – 2018/5/1 ベトナム社会文化研究会 (編集)
  8. https://amzn.to/3Nr7Dy4 アジアの都市住宅 (アジア遊学) 単行本 – 2005/10/21
  9. https://amzn.to/4amcRVO ベトナム町並み観光ガイド (岩波アクティブ新書) 単行本 – 2003/6/6 友田 博通 (著)
  10. https://amzn.to/3NweG8D アジア都市建築史 単行本 – 2003/6/1 布野 修司 (編集)
  11. https://amzn.to/46TYoND 東洋建築史図集 単行本 – 1995/7/10 日本建築学会 (編集)