世の中では手数料と思われるものが至る所に存在しています。
日本という国で生活するためには、地域に住民税を払ったり、国に所得税を払ったり、消費活動には消費税を払ったりということがあります。またiPhoneでアプリ内で課金するとアップルに手数料が入りますし、Paypayで支払いすればお店は手数料をプラットフォーマーへ支払います。クレジットカードなども同様です。
賃貸を探せば仲介手数料を支払い、転職をしても仲介手数料が会社から代理店へ支払われます。
このコミッション(手数料)は歴史を見る中で大きな役割を果たし、手数料があることによって反映した人たちもいました。本書は様々な仲介業をして手数料を儲けることにより反映した人たちを物流に紐づけて解説されていきます。歴史の中で物や人を動かすことが膨大なビジネスとなっていたのはアジアのスパイスや衣類、また奴隷貿易などからでも広く知られていることです。
教科書や歴史でフォーカスされていない仲介者の影が見えてきて面白い部分も多々ありました。
📒 Summary + Notes | まとめノート
出アフリカ
人類の起源は700万年前ほどにアフリカに生息していたヘラントロプス・チャデンシスとされ、現生のホモ・サピエンスへと進化してきたと言われています。この間に2足歩行へとなり手が使えることになったことから火が使えるようになり、狩猟を初めます。
発話による共同作業ができるようになると人類は移動を開始。世界中へ散らばりある種グローバリゼーションの始まりと言えます。ここで次の進化は農耕でした。農耕生活の当初は狩猟民よりも栄養状態は良くなかったとされているそうで、農耕によりでんぷんを多く取ることで虫歯など新しい病気が発生、また狩猟民が移動しながら持ち込む疫病にも悩まされていたとされています。
ここから定住する農民、漁民、移動する遊牧民がそれぞれに交わりながらの時代が始まりました。
文明が川の流域で開始されると灌漑の技術が生み出されます。生産性のよい穀物も育て始められ都市国家が誕生していきます。アッカド王国が反映し、代わる代わる王国が反映しては入れ替わる時代になると文明間を結ぶ交易関係が始まります。
地中海世界形成に関わったフェニキア人
本書ではギリシア人、ローマ人も歴史では有名ですが、フェニキア人に焦点を当ててヨーロッパ世界の形成を見ていきます。
フェニキア人は現在のレバノンあたりを根拠地として海洋民族であり、ウガリットと呼ばれる都市を形成していたと言われています。彼らは海での活動をすることで都市を結びつけ、西はチュニジアまでに及び地中海の範囲すべてで活動をして各地に植民地を作っていました。アルファベット文字の発展もフェニキア人の交易により発達したとも言われているそうです。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/フェニキア
後に反映するローマ帝国はフェニキア人が作成した航海ルートを活用したと言われており、また地中海で物資が運搬されたのはアフリカから穀物を供給したフェニキア人によるものとされています。
文字の発展や貿易の発展に関わったフェニキア人の痕跡を活用することによりヨーロッパの人たちは発展を遂げていきます。
イスラーム世界でのムスリム商人
地中海とアジアに間にあったのはイスラームの世界です。まさにプラットフォームの成り立ちの起源とも言われているのは貿易ルートで重要であったイスラームの世界と言われていそうです。イスラム商人がこの立地を活かしてどのように繁栄してきたのでしょうか。
ムハンマドはアラビア半島西岸に位置するメッカのクライシュ族の大商人ハーシム家に生まれます。40歳のころから神の声を効くようになり、最後の預言者と考えメッカの人々にアッラーを唯一神として崇拝することを教えてきました。ただし、メッカでは受け入れられなかったようで拠点をメディナに移し、イスラーム教を成立させます。
その後目まぐるしく情勢を変えながらもイスラームは範囲を拡大し、アッパース朝ではアフリカの北端までに及ぶ広範囲を領土にします。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/アッバース朝
アッパース朝では大きな商業ネットワークが形成され、ヨーロッパから中央アジアまで結ばれます。またインド洋も商業範囲とされまた、中国や東南アジアへと貿易の範囲を拡げていきます。
著者の視点ではイスラームの宗教観は統一されており一体性が高く、情勢が代わる中でも宗教的な影響はなかったと見ています。また税金を払えば異教徒でも受け入れるなど他の宗教と比べて受け入れに対する自由度も高かったことから、発展に繋がったとしています。
中国の台頭とヨーロッパの逆襲
ユーラシア大陸の東端では中国の文化圏が大きな影響を持っていました。稲作は中国から始まり、穀物よりも生産性が高く安定した食料が確保できたことは発展に大きな影響を与えたとされています。
また中国でも他の地域同様、政権が代わる代わる変化し、武帝の頃からプラットフォームビジネスが大きく機能し始め、税金が充実し始めます。塩と鉄の課税は国家財政へとなり、専売制が導入されました。
唐の頃から国際国家としての色合いが強くなり始め、シルクロードと呼ばれる道が確立されることにより西側の世界と繋がり初めます。このシルクロードの交易にはソグド人が大きな影響を持っていたと言います。
中国南側の海域ではイスラム商人たちが貿易をして、シルクロードではソグド人がヨーロッパとアジアを繋げていました。また中国の王朝は華南地域の経済発展や交通整備を行うことで経済成長や土台を作ってきていました。それも経済成長による税収の拡大を見込んでいたものです。
アジアがヨーロッパと比較して豊かになったところで東南アジアからの香辛料の貿易によりヨーロッパが勢力図を塗り替えていきます。
アフリカから金を持ってくるために、ポルトガル人は地中海に勢力を拡大していたムスリム商人の手を借りないルートを開拓します。仲介者の商人たちの手を借りないためにもシルクロードやイスラームの世界とは異なるルートを見つけるために大航海時代が始まります。
ポルトガルが開拓したアジアへの道に引き続き入ってきたのはオランダやイギリス。東インド会社は歴史の教科書でも出てくるようにとても大きな会社も生まれました。海運業の発展はヨーロッパの発展の大きなカギとなりました。
ヨーロッパで宗教戦争が盛んなころにアントウェルペンが市場の中心になります。そこには多くの商人が集い新しい経済が形成されます。その後アムステルダムが繁栄し始め、銀行、為替業務も誕生します。アムステルダムが繁栄した理由の一つに宗教的に寛容だったことが挙げられており、カトリックやユダヤ、様々な宗教の商人たちが集まりました。
オランダは当時驚くほど裕福な国であったようで、その国民たちは利子の低い自国での投資ではなく外国へ投資を開始。そこで投資対象となったのはイギリスとハンブルクであったと言い、オランダの資金により経済的発展が遂げられました。
この頃から活版技術が生まれ、商業情報が伝搬していきます。これにより情報の非対称性が縮小されていき、価格表や商業新聞が広く知れ渡り、ヨーロッパの商業情報がスタンダードとして世界へ広まりました。
アムステルダムでまかない切れなくなった貿易量を請け負ったのは先程出てきたロンドンとハンブルクでした。この頃から国家支出の大部分を戦費に賄われるようになり、財政が良い国が軍事国家として覇権を握ります。軍事国家として成功したイギリスが結果覇権を握るようになります。
金融システムの成長には国債のシステムがイギリスとフランスで始まり、フランス政府は不換紙幣により大きなインフレで経済が混乱し、イギリスは金本位制をしました。産業革命を経てますます力を手に入れたイギリスは19世紀のグローバリゼーションの波に乗り、様々な土地を治め始めます。
その後
中国の繁栄時に茶をヨーロッパへ、インドのアヘンを中国へと貿易を媒介していたイギリスやポルトガル。ここで起こったのがアヘン戦争であり、講和条約で香港、広州、厦門、福州、上海などの港の開港がされました。
中国の税制度で使用されていた銀はメキシコから運ばれたもので中国の経済システムが他地域に依存していきます。イギリスはさらに自国の産業革命で安価で生産できるようになった織物を世界中へ流通させます。世界へと閉ざした中国と一方で世界へ流通ルートを築いたイギリスで明暗が別れることになりました。
世界の流通を支えた人たちには、イエズス会、東インド会社、アルメニア商人などであり、また貿易収支がよくなかったイギリスを変えたのはコミッションビジネスで、保険や電信制度を整えた背景があります。電信制度は世界中で通信をする必要のあった当時にイギリスが使ったシステムを利用する必要があるために、世界中でこのシステムを活用し手数料としての資金がイギリスへと流れていきました。
トマ・ピケティの21世紀の資本でも紹介されたように金融の所得の方が成長が早いために、資金流通のシステムを作った者たちがその後も覇権を握るようになります。
感想
手数料と物流を世界史の話を通じて解説されている本であし、思ったより歴史の本という色合いが強いながらも各歴史・地域での媒介者たちの活躍を知ることができる面白い本でした。
読んでいてはっとしたのはこの欧米中心の感覚ができたのって結構最近なのだなということで、それまではそれこそ中国が繁栄しており、イスラム圏も多くの影響力を持っていたということでした。鎖国的に閉じる流れをした地域とその時の不均衡(ヨーロッパ側の貿易赤字)を打開できる自由さがあった地域とで結果異なる発展の仕方になってしまったという流れでしょうか。
そう考えると、時の流れに乗るってとても大事だなと感じますし、流れにさえ乗ってしまえば運の良さが低くても成功への道へつながるのではないかと感じもします。
イギリスが投資先として選ばれ潤ったところから金融も工業も発展したところを考えると、アムステルダムでの資金の逃げどころがイギリスとハンブルクであっただけではあると思いますが、その資金が血液となって経済が発展し、航海に関わる保険業や通信システムの発展へとつながる話はとても面白い部分でした。
歴史的に人が集まった街には多くの宗教に寛容であったりと多様な人が集まる地域で経済が拡大していくなど、自由度のファクターも発展へ関わっているのだということも感じました。
そう考えると、今後世界がどのように変わっていくのかは予想できないとは思いますが、アメリカのような自由度があり、優秀な人材が集まって、既存のプラットフォームも強固になり不動化してきており、さらにそのリターンを得られる仕組みができているという好循環が感じられます。
ちょっと寂しいのはアジアがまた覇権を握れるようタイミングが肌感で遠そうに感じることで、言語的にもプラットフォームとしての役割としても難しい気がするところでしょうか。
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