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ベトナムを知れば見えてくる日本の危機 ~「対中警戒感」を共有する新・同盟国~ | 梅田邦夫 (著) | 2023年書評100

今年は読書の時間を意識的につくり100冊読むことができました。本当はより読んでいるのですが書評に書けていないものが多くあり、数十冊多く読んでいるので年末にかけて記していけたらと思います。

さて、今回は旅行をしたこともありベトナムに関する本を読んでみました。なんとなくベトナムに対して魅力を感じていない部分もあったのですが、まだ行ったことがない国でありかつちょうどよく時間もあったので訪問してみました。

VinfastなどのEVメーカーがかなり広く見られ、ホイアンの歴史的な雰囲気からホーチミンの近代的な景色まで楽しみがとても多く魅力的な街でした。旅行記についてはまた別途纏めたいと思いますが、人も優しく日本人に顔立ちも似ている部分もありまた行きたい国になりました。

📒 Summary + Notes | まとめノート

日本軍の関わり

シンガポールリー・クアンユーの本を読み、東南アジア圏での日本軍の残虐な行為を知ったのですがベトナムも同様です。本書では日本軍の残留兵、つまりベトナムに居住して家族を持った人たちの話から始まります。動き出した時計という本に纏められているのですが、日本軍がポツダム宣言により無条件降伏をした後にベトナムにとどまった日本兵ベトナム人の間に生まれた子どもを追ったドキュメンタリーがあります。

戦争後ベトナムに滞在できていたのですが新政権下で突然日本人は帰国を命じられ家族を捨てる形で日本に戻った方の子どもが日本を訪問して父親の痕跡を追っていく話になります。

戦争は本当に残酷ですべてを狂わせたのですが、その一人ひとりに物語があり記録として本に纏められている事で後世に繋げられるというのは価値がありますね。

ベトナムを取り巻く環境

ベトナムは中国と国境を接しておりハノイは中国支配下であったこともあり中国文化が残る一方でその海域を中国が支配してきている状況にあります。九段線と呼ばれる中国が主張する海域があるのですが、国際仲裁裁判所ではその主張は根拠なしと判断された一方で実効支配をしておりベトナム側のみならずフィリピン側の漁船活動などの制限をしている状態です。

939年に中国から独立するもののフランスの植民地となる1887年までに10回以上中国からの侵略に抵抗していました。戦時中は日本が支配することになり、戦後においても中国から3回の侵略を経験しています。中国の影響もあり漢字と使用していたのですが、韓国と同様脱漢字をした国となりました。

本書で書いてある中国は力の空白が好きというのは言い得て妙であり、米軍がベトナムから撤退したころに侵略を試みたこと、カンボジアとの国境線線に乗じてベトナムに侵攻したことなど隙を見て侵略を試みました。

中国への関心は高いようで、チベットウイグル、香港での国家安全維持法などの様子も注目されているようです。ベトナムと中国間での人身売買も問題ししているようですが、中国は最大貿易国でもあるために無用な摩擦は生じないよう立ち振る舞うようにしています。

ベトナムの歴史上の人物で有名な将軍は対中国戦線で活躍した人たちであり、ホーチミンに立つチャンフンダオもその一人です。

アメリカとの関係は戦争があったこともあり複雑ではありましたが、対中関係のこともあり2015年ごろから本格的に交流が始まります。グエン・フー・チョン共産党書記長が訪米し、2016年にはオバマ大統領がベトナムを訪問。ハノイ市内のブンチャーを食べて「オバマ・ブンチャー」なる呼ばれ方をされているようです。米国空母がダナン港へ訪問するなど関係性が深くなってきているとのことでした。

留学先としても米国は人気であり、2018年は25,000人と世界で第6位、日本人留学生は19,000人であるため日本人より多く留学しています。

旅行していた時に印象的であったのは韓国人や中国人の多さです。本書を読んでみたところその答えが書いてあります。韓国はベトナムに工場を持つ企業が多く、ベトナムの若者で韓国文化が人気のようです。今回訪問時にコンカフェに訪問したのですがコンカフェは韓国に支店を多くだしています。韓国とベトナムの航空便は週618便あり、日本の157便と比較して約4倍だそうです。

韓国人のベトナム進出はベトナム戦争による兵隊もそうですがその後ヒュンダイ、デウ、サムスンなどの企業関係者も多くベトナム経済を支えました。

ベトナムの経営者層は東欧やロシアでの留学経験者が多く、ベトナムの大企業VINグループ、サングループの経営者層は東欧留学の後にウクライナでビジネスを成功させた資金を持ってベトナムに戻ってきた背景があります。

共産主義の背景があるため旧ソ連、ロシアとの関係もあり、また北朝鮮との関係もあるために、金正恩ベトナムを訪問しており、訪問の際には排泄物含めすべて持ち帰りDNAの接種を回避していたとあります。

現在の日本との関わり

日本の高齢化社会における労働者としてベトナム人が多く来日し重要なマンパワーとして働いております。外国人労働者として中国人の約42万人を抜き44万人ほどが居るといわれています。その一方で過酷な環境での労働もあり、技能実習生の失踪者数としてワースト1位となり、事故、病気、自殺などで200人ほど亡くなってしまっている事が問題視されています。

ベトナム人としても日本をネガティブな印象を持つことに繋がっており、監理団体による管理をすることで不幸な結末や多額の借金を追わせる仲介業者を阻止しようともしています。その反面、元実習生が企業した会社は70を超えてきているそうです。

感想

ベトナムの公務員による賄賂や横領などにも本書で触れられておりちょうどタイムリーな事件もありました。

www.nikkei.com

VINグループやサングループ、FLCグループ、BRG、ビナミルクなどのベトナム企業も発展をしており本書にも紹介されているため、ベトナムの企業についても知られる内容になっています。

平均年齢も30歳代であり、日本のバブルのころのような勢いがあるのかなと想像します。街をあるいていても若者が多く、近代的なビルも多くありビルの建設も至る所で見られますので今後が楽しみな国に思いました。

本書では日本との関わりやベトナムの歴史から、ベトナムが抱える難しさや戦争の歴史、現代での経済状況までとても分かりやすく知ることができる内容となっています。

できれば旅行前に読んでおけばとは思いましたが、旅行してから読んでもなぜ韓国人が多く居たのかなどその背景を知る事ができたのは面白かったです。

またどこか新しい国へ遊びに行くときにはせっかくなので本を読んでみてから行こうと思いました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/47FApTG 動きだした時計: ベトナム残留日本兵とその家族 単行本 – 2020/5/28 白石 昌也 古田 元夫 坪井 善明 栗木 誠一 小松 みゆき (著)