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捨て方をデザインする循環ビジネス: サーキュラービジネス実現へ三つの提言 | 中台 澄之 (著) | 2023年書評#24

変化のあるゴミ事情

資本主義に基づいた環境問題にはついてまわるゴミ問題。世の中がグローバル化したと同時に廃棄物もグローバル化しました。先進国の古着は途上国へ、古着のみならず廃棄物もコンテナに積まれて運ばれていました。

運ばれたゴミ達からは鉱山で鉱脈を探すかのように使えるものを探す一方でその他の併せて届けられたゴミ達は川へ流れ海へ運ばれて魚が食べる。どこか遠い国のペットボトルが浜辺に打ち上げられていました。

そんな中最大の輸入国であった中国が2017年からいよいよ廃プラスチック、古紙、金属といった「リサイクル材」の名のもとに輸入されていた廃棄物が輸入禁止されます。

そうなると各国は自国で廃棄物を処理しなければならなくなります。日本は島国であるために限られた土地の中でうまく対処できるのでしょうか。

www.nakadai.co.jp

ホーム | 株式会社ナカダイ

本書の著者中台さんは、株式会社ナカダイにて廃棄物処理からリユースなど、ゴミに関する幅広い事業を展開しております。品川にはショールームがありゴミからどのように活用するのかアイデアを巡らせるような展示になっています。

📒 Summary + Notes | まとめノート

循環ビジネスの背景

私達の生活では、様々な製品が生み出されては捨てられていく。発展の先には商品の入れ替えがあり、それは使われなくなるとゴミとして呼び名が変わっていきます。往々にして商品は廃棄する時のことまでは考えられておらず、最後は廃棄事業者任せ。ナカダイではゴミを回収しそれを分別することでまた使える形まで整えることも行います。

本書の問題提議に、紙ストローの話があります。プラスチックと紙は焼却の際にCO2の発生が違いプラスチックの方が多く発生し、さらに紙を燃やす時のCO2は大気のCO2を取り込んでいるとされるために発生するCO2をカウントしないケースがあります。焼却炉ではプラスチックは高いカロリーを持ち高温で燃えるために焼却炉を傷めるスピードも早いです。市町村によってはプラスチックを燃やしたくない(分別する)のはそのためです。

分別には他の理由もあります。プラスチックなどを素材として再利用(マテリアルリサイクル)する場合は不純物を取り除くために単一の素材にする必要があります。焼却して発電燃料として使われる場合はサーマルリサイクルと呼ばれます。リユースになると商品ベースで分ける必要があります。このようにリサイクルの仕方により、プラスチックのPETだけを集めるというような分別をするのか、プラスチックと金属といった分別をするのか、はたまた商品ごとというような分別をするのか必要性が変化します。

そもそも廃棄物の総量をへらすことはとても重要です。そのためにモノの延命として長く使われることはとても大切であります。そう考えるとレジ袋のように一度しか使われないものを減らすことは良い効果を生むように思います。

短命のモノのはそもそも紙など焼却の負荷が少ないものが適していることも分かるために、紙袋の活用などは意味があることです。

循環ビジネスの提案

本書の第4章にかかれている「循環ビジネスの提案」はとても良い内容で広く届いてほしいものでした。

ゴミのことを理解するためにはまず廃棄物処理法の理解からです。廃棄物処理法は「生活環境に支障のないような清潔な、衛生的な環境を維持し、市民生活を守るための法律」というものです。慣習や価値観の違いなどがあるために市町村ごとに細かな内容が異なることもあります。

廃棄物の中でも個人が出すものを一般廃棄物、企業が出すものを産業廃棄物を切り分けられ、市町村のゴミ処理場の能力によりルールが異なります。産業廃棄物一覧はこのようなものです。

https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/gomi/service/jigyou.files/sannpaiitirann.pdf

細かなルールがあり、それゆえごみ処理が難しいものとなっているのが現状です。上記のような細かいルールに基づくために処理業者は許可を取る必要があります。

回収された廃棄物は循環のために分別されます。分別にはコストがかかるために遵法とのバランスが廃棄物処理業者からすると大変になります。ゴミを出す排出業者は廃棄物がどのように取り扱われるかまでの責任があります。

最も面白かった点は植物由来の素材についてです。植物由来の素材を使うとなんとなく環境に良い印象がありますが、リサイクルのためには植物素材の部分とプラスチック材料の部分をきれいに分けられなければ回収率は高くなりません。また焼却するにあたっても植物素材部分はカロリーが低いために発電には向かないものとなります。また植物素材を活用しても、土の中ではプラスチックがマイクロチップになるだけでより悪影響とされたり、水の中では結局分解も進まないために海洋ごみになります。

植物由来の材料を使うものは焼却してしまう短命のものまたは、衛生面で口をつけるものなどが適しているといえるでしょう。

ゴミがもともと海外に運ばれていた理由には、海外で分別作業したほうが人件費が安いからという理由がありました。ナカダイにも中国に子会社がありリサイクル先に中国がありました。実態としては、その周辺企業もゴミ回収会社があり、野ざらしに山積みされたゴミが至る所にあり選別後のゴミも放置されていたと言います。

また、衛生的でないゴミをコンテナに積んで運ぶことも多くの問題があり、中国が廃棄物の輸入を禁止した背景も理解できます。このようにゴミを輸出してきた日本では今大きなつけを払う時になっています。

感想

廃棄物は生命活動を続ける上できっても切り離せないものになります。何故分別が必要なのか、市町村ごとにゴミの出し方が違うのか、廃棄物処理業者が居るのか、廃棄方法まで考えながらものづくりをする必要があるのかを教えてくれるとても良い本でした。

中々ゴミに関しての情報が整理されていないことや、複雑さゆえに目をそらしてしまいがちなトピックではあると思いますし、実際面倒なことが多いのがゴミを捨てるという作業です。そんな中でゴミのいろはを教えてくれる本書のようなものが広く読まれることを願います。